また会った…


「沙耶っ~!!」

「わっ!!」


学校に着くと私は、直ぐ様抱きつかれた。

その反動で少しよろけてしまう。


夏海ナツミどうしたの?」


わんわん泣く様に首をふる夏海。


彼女は私の友達で、いつも一緒にいる。

少し気が弱いけど優しい子。

まだ幼い顔で泣き、横に結った2つの髪を揺らした。


「都会に行ったって聞いたからっ…」


その事かぁ…。と私は納得した。

「大丈夫よ!!ほら、このとーりっ!!」


力こぶを出すように言うと夏海は満面の笑顔になった。


私は夏海のこの笑顔が大好き!!





席に着くとクラスの皆が私に近づいてきた。


皆、「大丈夫?」とか「怪我ない?」とか心配してくれる。

私はこんなクラスメイトが大好きだ。

「うん、大丈夫だよっ」

と返事をすると、興味本位で「都会はどうだった?」と聞かれた。


私が都会に行ったのは1つはスリルが欲しかったからだが、皆んなのためでもあった。


私は、出来事を隠さず、全てを語った。

勿論、彼、悠のことも。





話終わると皆が青ざめていた。


「そんな事あったなんて…大丈夫?沙耶ぁ…」


そう。怖かった。

恐ろしいかった。

体から変な汗が出てしまいそうだった。


もし彼がいなかったら、連れてかれて、バラバラなんかにされて、死んでいたかもしれない。


本当に彼のお陰。


私の命の恩人…。


そう心の中に刻み込んで話をそらした。



「私は平気よ?だってここにいるんだもん。それより、ホラ!!HR始まるよ!!」


少し、納得いかないクラスメートだったが、沙耶の言葉と共にチャイムが鳴ったので、皆が席に座った。


これで都会に行きたいと言う人はいないだろう。…私を除いては。



**********


時間はとび、ただ今お昼の時間。


いつも私達は学校の売店のパン屋か学校の近くのコンビニでお昼を買う。



「沙ー耶っ!!今日どっちにする?」


「うーん…どっちでもいいかな?みんなは?」


「うち昨日パン食べたからなぁ」

「あ、あたしも~」


沙耶の質問に遠回しに答えた友達2人。


「それってコンビニがいいってことじゃん!!」


と笑う夏海。

あははと笑い合っていた。


「何、コンビニ行くのか?」

「じゃあ俺らの買ってきてよー」


その中に混じる男子。


「えーパシリー?」

「ちげェよ!!ついでに、だよ」

「頼み方は~?」

「「お願いします」」

「うむ。よろしい」

「なにその言い方~」



いつも元気な夏海が笑いをとる。

クラスの中心的存在だ。


「あはは、それで…何を買ってこればいいの?」


私が、そう聞くと男子達は勢いよくこっちを見て、


「沙耶だけだ…優しいのは…」

「おにぎりを2つ…お願いします。沙耶様…」


「黙らっしゃいっ!!!!」


夏海の鉄拳が2つを襲った。


「あはは、了解…。ホラ行くよ夏海」



いつも場を治めるのは私の役目。


たまに、夏海の保護者と言われる時もある程に。



「沙耶、夏海!!あと30分しかないよ!!」


「やばっ!!急げぇ!!」

「「いってらっしゃーい」」


夏海は、お気楽な男子に最後まで腹をたてていた。


夏海の怒り声は校内に響く程、大きかった。



**********


「いらっしゃいませー」



ダッシュでコンビニに来て…


私たちは、はぁはぁと息を整えていた。


しかし、そんな暇はない。

と、すぐに悟るとすぐにお目当ての品を探しにとりかかる。



沙耶もそうするつもりだった。




だけど…



パンの並んでいる棚の前…




「…っ!!」





息をする事すら忘れた。



声もでなくて、私はこれでもかと目を見開いた。



【彼】も、私に気づいたようで、一瞬止まる。




そこだけ、妙な空間だったと思う。


そこだけ別世界だった。



私は異様すぎて一瞬の出来事が数秒のように思えた。



【彼】が、まずいという表情をしたとたん、


私は元の世界にもどってこれた。




「悠…」



わたしは【彼】の名前を呟いた。





悠は、私を見てどうしようか迷っていたが、諦めたかの様に一つため息をつき、手をあげた。



「昨日ぶりだな。あの後大丈夫だった?」



「…き、昨日はありがとうございました」


沙耶は、彼にあえたことに驚きを隠せないでいた。


ゆっくりと頭をさげる。


まるで、今の沙耶の心情を表情から読み取られなくするかのように。



「そんな改まるなよ。たまたま通りかかっただけなんだから」



「え?」



たまたま通りかかった?


彼は山の人?都会の人?

私を助けた理由は?



彼のことが気になる、疑問がおこる。

気になることを全部聞いてしまおうと口をあけた。


「あの、「沙耶~。時間だよ~」」


夏海の呼ぶ声にわたしの声は消されてしまった。



「友達、呼んでるよ」



「あ、はい…」


でも、そこで諦めたくなかった。


おにぎり2個とお昼で食べる予定のお弁当を掴み、レジに持っていく。


お金を払い、買い物が終わったあと、彼にふりかえる。



「16時にまたここで…!」



それだけ伝えて。



彼がどんな反応をしていたか見ることができず、わたしはその場をあとにした。



...NEXT——

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笑ってたいんだ 雪うさる @snowrain2

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