【最後に】
今回、初めての同人誌寄稿に、短編小説ではなく、書評を選んだのは―単に短編のアイディアが思い浮かばなかったということもあるのだが―やはりミステリを読むきっかけを私に与えてくれた、飛鳥部氏への感謝の意を込めて、全長編レビューを執筆しようと決意した次第である。意気込んでみたものの、最近読んだ作品であるならいざ知らず、昔読んだ作品のレビュー執筆には、相当苦労したし、クオリティも作品によってマチマチになってしまったことが心残りであるが、読者の皆様にとっては、如何だっただろうか。ともあれ、一作品でも「読んでみたい」と思っていただけば、私も書いた甲斐があるというものである。
こうやって著作を振り返れば、飛鳥部勝則は、様々な作風を使いこなす作家である、ということが、改めて分かる。今後はどのような作品を、私達に届けてくれるのか、ファンの一人として非常に気になるところだ。ちなみに、『黒と愛』レビューで触れた、ゴシック復興三部作は、もしかすると、今後四部作になるかもしれない、と、氏は仄めかしていた。大いに期待したいところである。
また、シリーズ物こそ刊行されていないものの、レビュー内でも触れたように、作品間にリンクがあるものや、数作品に渡って登場している人物も、何人かいる。そういったキャラを見つけて、一人ニヤニヤする、という楽しみ方もある。それがどの人物なのかは、実際に本を手に取って確認してみて欲しい。
ところで、せっかく―ありがたいことに―この記事を読んで頂き、飛鳥部勝則の作品に興味を抱いてくれた方には、大変申し訳がないのだが、氏の著作は、現状でそのほとんどが絶版で入手困難。現状、新品で手に入るのが『堕天使拷問刑』と『黒と愛』のみである。氏の作品を読むならば、図書館を利用する、それに抵抗があるならば、Amazon等、インターネット通販を利用し、中古品を手に入れる、という方法が確実だ。どちらも嫌なら、BOOK OFFなどの新古書店、中古書店を気長に巡って探し出すより他はない。ちなみに、私は『堕天使拷問刑』『黒と愛』を新品で購入、『N・Aの扉』はネット通販、その他は図書館だった。ここ数年、新古書店に寄る度に、氏の作品を探してはいるものの、未だ『バラバの方を』一冊しか見つけることが出来ていないことも追記しておこう(※13)。
飛鳥部勝則は非常に癖が強く、人を選ぶ作家だが、一作家一ジャンルを地で行くその作風に、虜になる人も、決して少なくはない。「近頃、普通のミステリにも、飽きてきたかなあ」なんて考えている、そこのあなたも、“涅槃”の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。
独自の路線を突っ走る、本格推理作家、飛鳥部勝則に栄光あれ―。
※13 その後、根気よく古書店、新古書店を回ることで、それなりに見付けることが出来たが、2020年現在において、より一層入手難度が高まっていることは残念でならない。
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