黒と愛
『黒と愛』 【涅槃】【純愛】
現時点での飛鳥部勝則最新作にして、やりたい放題ミステリ第三弾。「呪わしくも美しい、純愛(変愛)本格ミステリ」という素晴らしいキャッチコピーに違わぬ怪作である。尚、飛鳥部勝則は『このミステリーがすごい!2011版』(宝島社)において、『鏡陥穽』、『堕天使拷問刑』、『黒と愛』は、ゴシック復興三部作である、とし、本作のテーマは、『城と幽霊』であると発言している(残り二つのテーマは、各レビューで触れた通り)。
ミステリとしての仕掛けは、大胆で強烈。『レオナルドの沈黙』と同じく、「やり過ぎ感」がしなくもないが、手がかりと伏線は、十分すぎるほど読者に与えられている。
そして、物語後半の超展開はまたしても衝撃的。「訓練された飛鳥部読者」ならばいざ知らず、氏の作品に触れたことの無い人が本作を読むと、一体どういった感想を抱くのだろうか、個人的には非常に興味深い。
そして、その怒濤のクライマックスを終えれば、待っているのは美しいラスト。どれだけハチャメチャな展開になっても、きちんと収拾をつけてみせ、その後には美しい幕引きが用意されている。『堕天使』など、他作品にも通じることだが、飛鳥部勝則は、物語の締めくくり方をよく心得た作家である(※11)。これも、飛鳥部作品の大きな魅力の一つであると言えよう。
また、本書はエアミステリ研究会で恒例の「読書会」にて、第五回課題本として選出された。そして、その読書会では、「『黒と愛』は、仮面ライダー小説である」という、傍から見れば、わけがわからない結論が出ることになった。読書会の様子は、togetterや、エアミス研wikiで閲覧することが可能だが、こちらはネタバレ有り。気になる方は是非、読了後にアクセスしてほしい(※12)。
また、本作は『ラミア虐殺』の姉妹作品である。どちらから先に読んでも問題は無いが、もし本作を気に入ったのなら、『ラミア』は必読である。
(※11) 触れ忘れていたが、「鏡陥穽」もラスト一文の美しさが際立っている。
(※12) https://togetter.com/li/92239
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