レオナルドの沈黙

『レオナルドの沈黙』 【非美】

 超能力者を名乗る波紋京介はもんきょうすけは、招かれた降霊会で、自身の超能力による遠隔殺人が可能だ、と主張。そして、その予告通りに一人の美術家が自殺する。さらに何故か、全ての家具を、家の外に出した上で、首を吊っていたのだ。当然、事件は自殺として処理されたが、波紋は更に、新たな殺人を予告する。この謎に挑むのは、美形の芸術家探偵、妹尾悠二せのおゆうじ。果たして、事件は本当に、超能力による遠隔殺人なのか?

 「人を選ぶ」、「万人には勧められないが~」という文句は、もうそろそろ見飽きた頃かもしれないが(苦笑)、その点では、本作は安心出来る。九作目の長編にして、飛鳥部氏が遂に『名探偵もの』に挑戦したのが本作である。何と、クイーンよろしく『読者への挑戦状』までもが挿入されており、現代を舞台に、古き良きガジェットを用いて、往年の探偵小説を再構築したい、という作者の思惑が伝わってくるようである。

 そんなクラシックな推理小説の雰囲気も、もちろん本作の魅力であるが、最も注目すべきは、ある仕掛け。非常に大胆で、少々『やり過ぎ』感はあるものの、やや地味で微妙に感じられる本作の欠点を、全てカバー出来るほどの衝撃がある。「やられた!」感を味わいたくて、ミステリを読む読者には是非、オススメしたい。

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