ラミア虐殺

『ラミア虐殺』 【涅槃】【非美】

 で、出た! 涅槃マーク!! ……失礼、少々興奮してしまったが、気を取り直して始めたい(※8)。

 探偵業を営みだした、杉崎廉すぎさきれんの事務所に現れた女、北條美夜ほうじょうみや。「私を守って欲しい」という頼みを引き受けてしまった彼は、彼女の実家について行くはめに。そこは、雪上車を使わなければ辿り着けない、雪の山荘だった……。

 このあらすじを読めば、「よくあるCCか」(※9)という印象を受けるかもしれないが、裏表紙に書かれた、登場人物の台詞の引用、「犯人を突き止められないなら自分以外のすべてを殺せばいい」の物騒さからもわかるように、いわゆる普通の、「雪の山荘もの」ではない。

 この作品を一言で言い表すとするならば、正にやりたい放題。作者の趣味が、自重無しでぶち込まれた、非常に「濃い」一作だ。

 作者の趣味は爆発するも、ぎりぎりのところで暴発せず(?)、物語は破綻することなく、ミステリの枠に収まった本作は正に、異色のミステリという言葉が相応しいように思う。しかし、そのあまりにも”歪んだ“構成は、またしても人を選ぶ作品である、という評価は否めないだろう。だが、飛鳥部勝則の昨今の作風、すなわち“涅槃”を語るに当たって、絶対に外すことの出来ない作品であることは、間違いない。

 また、後の作品、『黒と愛』は、この作品の姉妹作品である。どちらを先に読んでも、特に問題は無い。が、どちらかを読んで、もしそれを気に入れば、もう片方も読むことを強く勧める。

 尚、【非美】マークをつけているが、作中では北條美夜が、美少女キャラ的な役割を果たしているものの、設定年齢上、『少女』と呼ぶのに抵抗があったので、このマークが付いているのだ、ということを、補足しておく。


※8 一応、これには元ネタがある(「風雲拳入門」で検索されたし)。


※9 クローズドサークル。当時の私は何故アルファベットで書いたのだろう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る