ヴェロニカの鍵
『ヴェロニカの鍵』 【非美】【絵画】
友人の画家、
本作のテーマは『失われた青春』。デビュー作『殉教カテリナ車輪』にも通じる、中年画家の哀愁漂う、全体的に暗い雰囲気が漂う物語だ。
本作のミステリとしてのジャンルは、『密室』なのだが、その出来映えはとても地味。これまでのように、『昨今の作風に比べると』という言葉を用いるまでもなく、地味である。地味なことをけなしているわけではないが、地味である。
本作で印象深いのは、やはり久我と郷寺の対比である。学生時代には、共に絵画への情熱を燃やしたはずの二人。その情熱を持ち続け、画家として大成した郷寺と、それが叶わなかった久我。そんな二人の友情や、芸術家の作品にかける、狂気を伴った情熱は、なかなか印象深い。
極めて地味な作風ではあるが、芸術家の暗い情熱、男の友情と中年画家の悲哀など、飛鳥部勝則ならではの要素は満載。デビュー作『殉教カテリナ車輪』の雰囲気が気に入っている読者なら、本作も楽しめるのではないかと思う。個人的には、後十歳ほど歳をとった時に、再読してみたい一作(※6)。
※6 10歳ほど歳をとってしまったんですよ、これが。
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