冬のスフィンクス
『冬のスフィンクス』 【絵画】【純愛】【幻想】
芸術家一家の娘、
前作『砂漠の薔薇』は、幻想風味と紹介したが、こちらは完全に幻想ミステリ。何せ、事件そのものが夢の中の世界で起こってしまっている。
本作で興味深いのはやはり設定の妙。夢の世界、絵画の中の世界であるにも関わらず、そこは現実の世界にも実在する、主人公、盾の知り合いの実家。そこは果たして夢の中なのか、はたまた現実世界なのか、という展開になるのはお約束。
事件は、ミステリとして合理的な解決―経緯はひねくれてはいるが―が行われるものの、本作の主題はやはり、切ないロマンだろう。夢の中の事件、ということで、メタ・ミステリを想像する方もおられるかもしれないが、後書きの筆者のコメントを引用すると、「単なるロマンを書いたつもりだ」とのこと。もっとも、「私にとっては本格推理小説以外の何物でもないが、まったくそう見えない、やっかいな作品だ」と続けているのはご愛敬。読者も、ロマンとして読むが正解なのかもしれない。
また、本作は『砂漠の薔薇』との関連がある。それぞれ独立した物語であるので、どちらから読んでも、全く問題は無いが、本作を読めば、『砂漠の薔薇』で不明瞭であった箇所がはっきりとするはずだ。
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