N・Aの扉
『N・Aの扉』 【絵画】【幻想】
三作目の長編にして、早くも感想が難しい作品が登場する。飛鳥部作品は、基本的に癖が強く、人によって評価が分かれる作品がほとんどだが、その中でも最も癖が強いのが本作だ。
推理作家としてデビューした石塚は、その受賞パーティーで、大学時代の後輩、田村と再会する。彼は、石塚よりも前に、ホラー作家として活動を続けていた。そして田村は、『本格推理の幽霊』に出会った話を始めるのだが……。
一応、あらすじは紹介したが、その後の展開は、何とも説明し難い。主人公の石塚は、どうも飛鳥部氏自身の投影であるように思うので、これはミステリではなく、私小説か、と思えば、幻想小説のようでもあり、と何が何やらハッキリしないまま物語は続く。私は、エッセイや論評を、小説の形を借りて書いた、という印象を受けた。氏の昨今の作風とは違った意味で、人を選ぶ作品であることは間違いが無い。個人的には、作者の私小説として愉しむのが良いのではないか、と思う。
作中には、恐らく飛鳥部氏自身の小説の趣味(※3)、その後に発表される作品を思わせる様々な要素が見え隠れしており、ある程度飛鳥部作品を読み込んだ方には、ニヤリと出来る要素がいくつか含まれているため、他の作品を読んだ後に読むことをオススメしたい。
だが、それは逆に言えば、氏に思い入れがないと厳しい、という言い方も出来る。最初の一冊目には、絶対に勧めることは出来ない上に、更に人を選ぶ作品ではあるが、飛鳥部勝則にある程度思い入れがある読者には、勧めたい一冊。
※3 クイーンやカーのお気に入り作品など。インタビューなどを読む限り、この辺りは飛鳥部先生本人の好みで、ほぼ間違いないであろうと思われる。
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