【ご挨拶及び注意】

 人が何かのファンになる時には、何かしらの『きっかけ』があるはずだ。ミステリに関して言えば、私達エアミス研のメンバーを(勝手に)参考にさせてもらうと、ルパン『813の謎』を手に取って、島田荘司を読んで本格ミステリの世界に魅了された、『十角館』や『翼ある闇』で新本格の虜になった、大学時代の京極がきっかけでこの道一辺倒に、『ハサミ男』との出会い、住職さんは俺の嫁(※1)……等々(一部嘘)。なるほど、きっかけとなった作家や作品は、世代や性別によって、実に様々である。

 お世辞にも、多くの本を読んでいるとは言い難く、その上、本格的にミステリを読み出したのもここ数年という、超が付くほどの初心者である私にも、当然、ミステリを追い始めるに当たって、そのきっかけとなった作家がいる。私の通っていた大学の本屋に平積みにされていた、一冊のハードカバーが、その後の私の読書生活を一変させた。その作品は、『堕天使拷問刑』。著者の名は、飛鳥部勝則あすかべかつのりとあった。

 前置きが長くなってしまったが、今回、私はその飛鳥部勝則の、二〇一一年四月現在における、発表済みの長編十三作、全てのレビューを行う。コンセプトとしては、作品を読んだことのない方、特に飛鳥部勝則の作品を一作も読んだことの無い方に紹介することを重視している。そのため、ネタバレの心配は無いのでご安心を。

 それでは早速、と行きたいところだが、それに当たって、注意点を述べたい。それは、タイトルの下の、【】についてだ。

 飛鳥部勝則の作風には様々な面が有り、一冊だけを読んで、どのような作風かを判断することは難しい。もちろん、十三作品全てがバラバラ、というわけではなく、当然そこには様々な共通するテーマや特徴が見受けられる。そこで、「どのような要素がその作品の中に詰まっているのか」を、私の個人的な判断でカテゴライズしたものを、各タイトルの下に付けておいた(例:【涅槃】)。以下に、その文字が意味する要素を、簡単に説明しよう。

 【涅槃】とあるものは、涅槃ミステリである。以上……と、いきたいが、流石にそうはいかないだろう。涅槃とは、仏教用語のそれではなく、主に飛鳥部勝則の(特に昨今の)作風を言い表すために、エアミス研内一部で、頻繁に用いられている用語だが、その意味を正しく把握している者はいない。というのも、この用語の意味するものが非常に曖昧で、観念的なものであるからだ。

 それでも、―私の個人的な解釈で―分かりやすく言葉にするなら、登場人物の狂気が跋扈する、異様な作品世界の中で、読者の予想を遙かに超える超展開が繰り広げられ、読了後、悟りの境地に達したかのような、独特の読後感を読者に与える、狂おしく、呪わしく、それでいて美しい物語である、と考えて欲しい。それでも伝わりづらいかと思うが、安心して欲しい。読めばわかる。

 次に、【非美】(※2)とあるもの。これは、『非美少女もの』を私が勝手に略したものだ。飛鳥部勝則の作品には、ライトノベルよろしく、かなりの高確率で、不思議系美少女が登場する。『非』という字からわかるように、このマークが付いている作品には、美少女キャラが登場しない、もしくは作中で、あまり目立っていないことを意味する。当然、それ自体が作品の善し悪しを左右する、というわけではないが、美少女目当てで飛鳥部作品に手を伸ばそうという方は、このマークの付いた作品はオススメしない。

 【百合】とあるものは百合、すなわち、女性同士の恋愛関係、恋愛感情が、作品内で描かれているものである。残念ながら、私自身は百合に明るくないため、百合の中での細かいジャンル(?)についてはコメント出来ないので、悪しからず。

 ところで、飛鳥部勝則は、高校の美術教師でもある。彼はその芸術の知識を、作品内に盛り込むことが多いが、彼の自作のタブローが作品に登場することすらある。と、いうわけで、【絵画】とマークされた作品は、飛鳥部勝則が描いた絵画が登場し、それが物語に関わっているものだ。彼の絵画ではなく、有名な芸術家の絵が登場することもあるが(両者が登場するものもある)、それにはマークしていない。ちなみに、特に初期の作品に多い傾向である。

 最後に、【幻想】、【純愛】とあるものは、読んで字の如く、それぞれ幻想小説的な要素が含まれるもの、純愛が描かれているものを意味している。

 こんなものだろうか。本当に長くなったが、本番はここからだ。これより、飛鳥部勝則全長編レビューの開幕である。


※1 似鳥航一によるライトノベル「はい、こちら探偵部です」(電撃文庫)に登場する萌えキャラ(死語)のこと。ヒロインがカーの「火刑法廷」を読んでいるシーンがあるなど、ラノベとミステリの融合を目指した作品だが、出来自体は……であり、2巻でシリーズ終了となってしまった。しかしながら、初期のエアミス研でネタ的に流行し、特に「うわっふー」などといった主人公の独特の口癖に、エアミス研同人誌の1,3,5,7号に掲載されたリレー小説のシリーズは影響を受けている。


※2 我ながら、もう少し上手いタグの付け方はなかったものか……(呆れ)

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