第18話 ゴー トゥー スタジオ

「ぶあああああああああああ!!!!!!ぼおおおおおおおおおおおお!!!!ゔぇあ!!!!!きえええええええええええええええええええええ!!!!」


 うむ、スランプから脱したカワ谷は今日も絶好調だ。マタタビの摂取から覚醒し、作詞を捗らせ、その絶叫を毎日我がアパートで轟かせている。俺達の道筋がはっきりしてきた事で生活にメリハリも出来てきた。そんな生活の中で毎日の様に窓に生卵が投げつけられたり、買ってもいないのに送られて来る代引き製品や、投函されるカミソリ入りの死の手紙が届くのは一体何故だろう?まぁ小さい事は気にしなくて良いか!


 そんなこんなの中、俺達は5曲をほぼ完成させたのだ。


  1曲目 : キルエムオール

  2曲目 : the tuna

  3曲目 : ヘルババア

  4曲目 : 死皇帝

  5曲目 : ワーキングデッド


「つ、遂にここまで来たな!」

「きええええええええええ!!」

「スゴイ!変ナ曲バッカデス!」

「傑作」


 5曲ぽっちだが早くCD化したいな。それで火がついてインディーズで1stアルバム出して爆売れしてモ○ゴル800の様に俺もメルセデス乗りたい。なんて妄想していると、カワ島がある事に気が付いた。


「ソウ言エバ、マダ一回モ合ワセテイナイデス」


 その通りだ。曲を3匹を聴いてもらい、それぞれの感性でフレーズを完成させたが、バンドの演奏で合わなきゃ話にならん。そうして俺達は楽器を背負ってスタジオに行くとした。


 そうして辿り着いたのはスタジオ”ペンギン”ここは学生時代によく来た所だ。しかしながら久しぶりに訪れたものだなぁ。ドアを開けると同時にベルが鳴って受付にいたゴス風のリスのお姉ちゃんがこちらに気が付いた。


「お疲れ様でーす」

「こんちゃー。すんません、今日予約とかしないで来ちゃったんすけど空いてます?」

「えーとーちょっと待ってくださいねぇー…Sサイズの部屋なら15時から2時間大丈夫ですよー」

「お、じゃあそれでお願いしますー」

「了解でーす。なんかレンタルするものとかありますかー?」

「ギターアンプをマー○ャルのJVM400に変更で」

「僕ハ、ツインペダルオ願イシマス」


 レンタルはこんなもんか。15時まではあと20分程あるからレストスペースにあるスマ○ラでもやって時間を潰そう。席の方へ行こうしたらカワ木が口を開いた。


「俺、ベース借りるぞ」


 …今、気が付いたんだけど、カワ木は手ぶらだ。というかこいつベース弾いているのこれまで一回も見た事ないんだよな・・・実は何も出来ないズブの素人って事はありえんか?そう思いつつもコントローラーを手に取りスマ○ラ始めた。


 20分後…


”カタカタカタっ、カタ!カチャカチャカチャ!”


「クッソが!!」


 結局、俺はスマ○ラで一勝もあげる事は出来なかった。この3匹強すぎるんだよ。どっかのゲーム大会でも出ろ。

 

 時間を見ると15時を指していたので再び受付に行って部屋番号を聞きに行く。


「3番スタジオでお願いしまーす」

「おいっす〜」


 カワ木はベースのレンタルがある為、俺達は先に行く事に。3番スタジオに入るとちょっとした懐かしさに心が沸く。俺はせっせとセッティングを始めた。ギターアンプマー○ャルのJVM400のスタンバイスイッチをオン、真空管が温まる間に足下のエフェクターを繋ぎ合わせる。とは言っても俺のペダルはシンプルで、ブースター用の歪み系とチューナーくらいだ。

 

 早々にセッティングが終わりバケモノを生音でシャンシャン鳴らしているとカワ木が入ってきた。また奴が持っている物を見て驚いた。なんと6弦ベースを借りてきている。6弦なんて必要ないだろ…ヤツは何も言わずにセッティングを始める。シールドをベースとベースアンプに繋ぎ足元には何も挟まない。所謂”直アン”って奴だ。アンプはトランジスタ式なのでスタンバイはなく温める必要はない。”水激を司るクリップチューナー”をヘッドに挟みチューニング。


”我は水激を司るクリップチューナーなり!カワ木様に従える物なり!”


 す、すごい、完全にクリップチューナーを従えている。


 そしてパワースイッチを入れカワ木はベースを弾き始めた。


”ダーーーーーン!!!ブーーーン!ドゥルルドゥルルドゥルルドゥルルドゥルルドゥーーー!!ドゥ、ドゥルドゥル、ドゥ、ドゥルドゥル!ポーーーーン!”


「やはり、レンタルはこんな物か…どうしたお前ら?」

「いえ、なんでもありません」*3匹


 カワ木さんは凄い。

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