第19話 新世紀カヴァンゲリオン
”ジャジャーン!”
「はぁはぁ…どうよ!?」
「ドラムのテンポはバラバラ、ギターは歪みすぎだし、ボーカルは…まぁ頑張れ」
俺達はカワ木さん監督の下、ノンストップで5曲1セットの3周目を終わらせ、1時間が経過。自分でも感じている様にバンドに纏まりが無く各々が力を開放してただ暴走しているとしか思えない。その中でカワ木さんは確実なプレイと冷静に分析を行っていた。
「か、カワ木さん、ちょ、ちょっと休憩しませんか」
「ちっ、グズどもが」
そう言ってカワ木さんは部屋を出て行った。残った俺達は力が抜けヘナヘナとその場に倒れ込む。
「カ、カワ鍋、カワ木ってナニモンなんだよ?」
「鬼教官デス!」
「わ、分からん、正に”脳あるカワウソ牙隠す”だ」
普段から掴み所の無い奴だとは思っていた。最初に出会った時は本当にリムジンに乗ってくるし、”俺達フェス”では何故か無傷、毎日家に来るけど時間来たら帰るし、ゲーム強いし、バイトの時のターレすごい速いし、ベース上手いし、レンタルだし。
「はぁはぁ、…なんかあいつムカつくな」
「めっちゃ分かるわ」
「ブン殴リタイデス」
”ガチャ”
「休憩終了だ。立て」
「はい!」*3匹
そうしてカワ木さん監督の下、再びスパルタ指導が始まった…
時間が経つ度に集中力が切れていき、ミスも多く目立つ様に。カワ木さんの目も気にしなくてはならないので空気は次第に重くなるのを感じる。
そして導火線に火は付いた。
「お、おい!カワ島、テンポどうにかしろよ、急に走ったり、もたったりしてやり辛いんだよ」
「ナ!?…カワ鍋サンコソ、音ガ汚サスギナンデス。何弾イテルカ分カンナイデスヨ」
「はぁ!?俺の音はな、汚くないんだよ。”邪悪”なんだよ。お前、このバンドが欲している音がまだ何か分かってねんじゃね?」
「ナンカ嫌ダナァ!ソノ言イ方!自分ノ世界感ナンテ土台シッカリシテカラ出セッテ話デス!第一、カワ鍋サンノ曲ッテ色々ト穴ボコダラケナンデスヨネ!」
「ぐっ!俺が曲作らんと何にも出来ないのに文句ばっか言ってんじゃないよ!」
「まぁまぁ、お前らまだ初回練習なんだから熱くなんなよ」
「お前は黙ってろよ!作詞も歌もクソなんだよ!」*2匹
「きええええええええええええええ!!!!!!!!」
こうして三つ巴の喧嘩が勃発。危険を察したのか、カワ木が部屋を出て行くのを横目で確認したが、そんな事はもうお構いなしだ。
”ガシャーン!ガス!ボコ!バリーン!!バキッ!!”
物が飛び、倒れ、壊れ、割れる。Sサイズの狭い空間はまさに戦場と化した。
「おるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!たたむぞ!コラァ!!!」
「きええええええええええええええ!!!!!!!!」
「デストロイモード起動!デストロイモード起動!」
我を忘れ、俺は2匹の顔を目掛けてパンチを叩き込む!俺もボコボコにされる!騒ぎを聞きつけて部屋の前には動物だかりが出来ており、小窓からこちらを伺っていた。
「死にさらせぇぇぇぇ!!!!」
”…我は爆炎を司るギターなり!…”
俺はバケモノを頭上に掲げ奴らの方へ放り投げた!
「あっぶねぇえぇぇ!」
カワ谷は間一髪の所で躱したが、後ろにいたカワ島は反応が間に合わなく、バケモノは機械化された左頭部に”バキーン!と音を立てて衝突した。
「活動限界、活動停止…」
カワ島はそう言うと動かなくなった。それを見た俺達は冷静を取り戻しカワ島の元に近寄った。俺はカワ島に話しかけてもさすっても反応はない。静かになったのに気が付いたカワ木も戻って来た。
「動け!動け!動け!動いてよー!今動かなきゃ!今やらなきゃ!皆バンド出来ないんだ!もうそんなの嫌なんだよ!だから!…動いてよー!」
強く揺すった時、俺はカワ島から”ドクンッ”と鼓動を感じた…そしてカワ島が立ち上がった!
「ブ、ブオオ…」
「カ、カワ島、再起動」
「凄い…」
「まさか…信じられません。カワ島のBPMが400を超えています!」
「やはり…目覚めた…彼女が」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ ホッホッホッホ」
カワ島は雄叫びと共に部屋を飛び出し、野次馬になっていた動物達はその狂気の姿に恐怖し逃げ惑う。そしてレストスペースに現れ、机に置いてあった誰が食ってたカップラーメンを見つけるとカワ島はそれを掴み喉に流し込んだ!
「汁を…飲んでる…」
「カップラーメンの汁を自ら取り込んでいると言うの?カワ島…」
「ゴクゴク」
「っう!」
その時、呼吸を荒げるカワ島の機械化している部分が”バァン!”と突然弾け飛んだ。
「拘束具が!」
「拘束具?」
「そうだ、あれは装甲板ではない。本来の力を俺達が抑え込んでいる拘束具だ。その呪縛が今、自らの力で解かれた。俺達にはもうカワ島を止める事は出来ない」
「カワ島の覚醒と解放、ネズミ総合病院が黙っちゃいませんよ。これもシナリオのうちですか?ネズミ院長?」
ネズミ総合病院にて
「始まったな」
「ああ、全てはこれからだ」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
器物破損の損害賠償も始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます