第17話 悪魔のLyric
先日の勢いそのままに、内に憤怒の豪炎を纏ったバケモノと俺は共に日々作曲を重ねる。カワ島も曲からインスピレーションを受け、パワフルかつ繊細なドラミングとフィルを試行錯誤している。カワ木は一回もベースを触っている所を見た時はないがイメージトレーニングの結果、スピリチュアルでブリブリなフレーズを構築したとの事。
全ては順調に進んでいる。と思われたが、ここに悩める男1匹。
「…ぐぬぬぬ…」
「あれあれー?おっかしいな〜、僕はもうデモ曲出来ちゃってるんですけどねぇ〜」*ハナホジ
「モウカレコレ3日悩ンデイマスネ」
「スランプ」
カワ谷は作詞と歌メロ(存在するのか?)作りという重圧に今にもペシャンコになろう状態だ。今までの恨みからか、俺はカワ谷を煽るだけ煽っているのである。楽しい。
「君、”豪雷を司るマイク”持っているんですよねぇ〜。マイクちゃんは何も力貸してくれないんですかぁ〜?僕はバケモノちゃんとこんなにも仲良しなのにねぇ〜。チュッチュッ!あちぃ!」
”…我、憤怒の爆炎を司るギターなり!ヘビのアベック許すまじ!…”
「カワ鍋サン、止メマショウヨ。カワ谷サンガヨリ惨メニ見エテシマイマス」
「ゲスの極み」
こんな風に、30分くらい虐めていたらカワ谷がブチ切れた。
「おいゴルァ!!お前らに!お前らに詞を生み出す苦しみ分かんのかぁ!!ああぁ!?!?!?何でもうちょっと!…もうちょっと優しくしようとか思えんのかねぇ!!!!!おるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
カワ谷は突如、勢いよくベランダへ向かいジャンプ、身体を丸くし ”バリーん!!”と音と共に以前補強した窓ガラスをブチ破って何処かへ走っていってしまった。
「チョット、可哀想デス。大丈夫デショウカ?」
「悩める若者」
「カラスが鳴きゃ、帰ってくんだろ」
それから数時間、俺達はどんちゃん遊んでいると西日が眩しいお時間に・・・
”カーー、カーー”
「カワ谷サン、帰ッテキマセンネェ」
「神隠し」
「だ〜いじょうぶだって、ヤケ酒でもしてんだろ〜よ」
しかしながら、カワ谷が帰ってくる事は無かった…
1日、2日と日々は過ぎていくが未だにカワ谷は帰って来ない。マグロ爺にも事情を話し、カワ谷は無期限のお休みをもらう事に。
それからも数日が経ち、そろそろ、頭も冷えた頃で寂しくなって帰ってくると踏んでいたが一向にそんな様子も無い。流石の俺達もほんのチョットだけ心配するようになっていた。日中流れるニュースにて殺獣事件、強盗事件が流れてくるとドキッとしてしまう。一体どこで何してるんだか…
そして、カワ谷失走後から1週間が経った。
「おい!カワウソ共!カワ谷はどうなんだ!?」
「知らねぇよー、爺こそなんか連絡とか来ないの?」
「オ腹減ヘラシテイナイデショウカ」
「絶食」
本日もバイトが終了し、原チャリに跨がり帰路を辿る。その最中、俺はそろそろ犬の交番でも行って捜索願でも出そうかと考えていた。そんなこんなで早くも家の前に到着した。
「今日モ疲レマシタネー」
「本日は鮭の切り身を薫製にしてみるか」
「腹減ったなぁー」
たわいない会話の中、玄関のノブに俺は手を掛けたその時、俺はある気配に気が付いた。
ガチャ…
”開いとる…!”
まさかと思い、ドタバタと部屋の中へ入った!すると”ヤツ”が倒れていた!
「カワ谷ー!世話掛けさせやがって!一体今の今までどこほっつき歩いてやがったー!」
うつ伏せ状態のカワ谷をひっくり返すと、身体は泥だらけでボロボロ、目は焦点を得ていないし、よだれもダラダラだ。そんな姿にドン引きしているとカワ谷の右前足からコロンと一つの瓶が転がった。それを拾い上げ見てみると驚愕した。
「お前ー!これマタタビじゃねぇか!やったのか!?やったんだな!お母さんに”マタタビ辞めるか!動物辞めるか!って教わんなかったんかーー!?」
胸ぐらを掴み激昂している俺に対し、カワ谷は薄ら笑いを浮かべクシャクシャの紙を渡して来た。俺達はシワを広げ見てみると何とそこに歌詞が書かれている事に気がついた。
曲名:キルエムオール
とうとう来たなこの時が!殺す!八つ裂きにする!念仏でも唱えてろ!もうどこにも逃げ場はない!諦めろ!KILL!KILL!KILL!KILL!
*何で殺すかって?あれ?何でだっけ?それよりどうして俺は俺なのか?分からない、分からない、きっと答えは雲の上
何で殺すかって?あれ?何でだっけ?それよりどうして俺は俺なのか?分からない、分からない、きっと答えは風の中
理由なんて求めるな!とにかく俺がブチのめす!とにかく俺がブチのめす!とにかく俺がブチのめす!とにかく俺がブチのめす!DIE!DIE!DIE!DIE!
*(繰り返し)
(フリースタイル)
おっぱい揉みながらラーメン食べたい
〜Fin〜
マジで何も思い付かなかったようだ
(*のちのアンセム)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます