第6話 活動初日
キルエムオール 現スラッシュメタル界で頂点に君臨しているメ○リカにより1984年、生み出されたデビューアルバム。キルエムオール、それは”皆殺し”を意味する…
俺達4匹は病院のエントランスを通り抜け、外界へ繋がる自動ドアを跨いだ。目の前に広がる新緑が映える爽快な景色だ。本日はめでたい退院日、ネズミ院長とネズミナース達は俺達の新たな船出を出入り口まで見送りに来てくれた。
そして俺たちは感謝の意を示す為振り返る。
「一同!礼!クソお世話になりました!!」
「はい、もう二度と来ないでください」
最後にそれを言って、ネズミ様ご一行はすぐ様背を向け院内へと引き返して行った。その際ナース達が”最後の最後まで確認しないと何するか分からないでしょ。二度と見たくないわ”って言ってたのが悲しい…
病院を離れ街中を俺達は歩く。キルエムオールウイルスの脅威が過ぎ去った事で街中はすっかり活気を取り戻している。
「ハァ~、腹減ったな~。なんか食いにいこぜ!」
「そうだなぁ…○郎でも食いいくかぁ」
「僕!○郎ヲ食べタ事ナインデ行キタイデス!」
「悪くない」
俺達は最寄りのラーメン○郎へ向かう事にした。電車を乗り継ぎどんぶらこと乗り継ぎ、1時間後駅前に到着。店舗は駅より10秒ほど。開店直後だが幸いにも並びはなく、店内も4匹分の席も空いている。全員”小豚”の食券を購入し着席した。初心者のカワ島は手解きをし、店員の”ニンニク入れますか?”に対して4匹は元気に「全部で!」と答える。かくして目の前に置かれた丼に手をかけ無心で麺をすすり上げる!
全員20分もかからずに退店、俺はまるで何とも言えない達成感を味わっている。他の3匹を見てみると俺と全く同じ表情だ。
「いやー!勝ったな!」
「美味シカッタデス!」
「ゲプっ」
息がとても臭いなぁ。
「これからどうする?」
「マダ午前中デスカラネ」
「任せる」
「よし!打ち行くぞ!」
俺パチンコって指折るくらいしかやった事なかったけど、他に妙案も思い浮かびもしないのでカワ谷先導でパチ屋について行く事に。入店するや否や4匹はクモの子を散らすように分散して行った。俺は適当な台の前に座り回し始め画面で起こる演出をボケ〜っと見ていた。
…4時間後
「ちくしょう!」
「ナカナカ渋イデスネ」
「惨敗」
「いやはや!神は日頃の行いを見てるって事よ!」
ご覧の通り3匹は意気消沈のご様子。かたや私カワ鍋とは言いますとこのホクホクの表情!ビギナーズラックだが最後に勝った者が正義なのだ。
俺は先頭を切り街を我が物顔で練り歩く。未だ時刻は15時前後で飲みにいきたい気持ちもあるが空いている店が見当たらず当てもなく彷徨っている。映画館の横を通ったその時カワ島が声を轟かせた。
「アア!!皆サン!コレヲ見マショウ!!」
カワ島が興奮しながら指差す。”紫永遠庭園”という映画だった。上映時間は150分、飲み屋が開店するまでの時間潰しに良いだろう。丸い背中の4匹はゾロゾロと映画館に入って行った。
…150分後
「いやぁ…良かった、本当に良かった」
「ひっぐ、ひっぐ」
「涙ガ止マリマセン」
「感無量だ」
思いもよらない出会いはあるもので、俺はこの”紫永遠庭園”に完全に心を打たれてしまった。
カワ谷は顔からあらゆる液体が溢れ、カワ島は半身からオイルが止まらず。カワ木はサングラス越しにキラキラと光りものがある。
映画の内容は次の通り”主役は美しい少女のネコ。過去、戦時中に感情なく敵兵を殲滅する屈強な戦士だったが終戦後に自身の存在意義に見失ってしまう。そんな中、出会っていく動物達との触れ合いにより再び自己の存在意義を見つけていく”と言う内容だ。本当にいい作品だった。帰ったら漫画とブルーレイを買おう。
そんなこんなで17時を過ぎ街中の居酒屋の光が灯り始め、とある居酒屋へ俺たちは元気に入店した。
「いらしゃいませ!何名様ですか?」
「4匹で!」*一同
元気に着席、元気に生4つ!元気にタバコ!
「それでは、本日退院と言う事で乾杯!!」
「かんぱーーーい!!」
「カンパーーーイ!!」
「乾杯」
”カチン”とジョッキを合わせ宴会が始まった。数週間ぶりのアルコールを流し込み、1時間、2時間と時間は過ぎ、1軒、2軒と店をハシゴ、終電を逃し、コンビニで酒を買い、公園飲みをして時刻は早くも深夜3時。
「ふぅ〜…酔ったな」
「気持ちいぜ〜」
「モウ飲メマセン…」
「眠い…」
「…そうだな…帰るか!」
「帰ろう!」*3匹
「それじゃ!お休み!」
徒歩にて帰宅!メタルバンド”キルエムオール”活動初日終了!お疲れさん!
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