第21話  オークキングは何処に

俺は急いで体育館へと向かった。息を切らしながら走る。身体強化をかけていたお陰なのかそれともレベルが大幅に上がっていたせいか、予想より早く着いた。俺が張った結界は壊されても破られてもいなかった。とりあえずこちらの避難民は安全のようだ。俺は安堵の溜息をつきながら体育館へと入っていく。すると俺に気づいた涼宮さん達生徒会メンバーが俺を迎え入れる。


「お帰りなさい、私達が体育館に着いた時にアナウンスが入ってレベルが上がったのですが、寮の方に避難していた皆さんは大丈夫でしたか?」と質問して来た。

俺は寮であったことを掻い摘んで先生方や生徒会メンバー達に伝える。そうするとやはりみんな下を向き悲しそうな顔をする。俺は生徒会メンバー達に女神と俺の関係を話すことにした。これから一緒にオークキングを探してもらい出来るならば戦って討伐を手伝って欲しいと思ったからだ。それには何故オークキングがここにいるのを知ってるのかいろいろ話さなければいけない事が出てくる。それに過激派の連中のこともある。注意を促す必要もある。俺は先生方に寮であった事を避難民の皆さんに説明してもらえるか頼んで生徒会メンバーだけを集めて体育館の隅の方に移動する。


「これから話すことは俺とみんなの秘密にしておいて欲しい」

俺は女神アルファ様に転生させてもらったこと、頼まれて地球を救いに来たこと、過激派が動き出していること、クエストを受けオークキングを倒しに来たこと、今まであった事全てを正直に伝えた。みんな信じられないと言うような顔をしていたが最終的には信じてくれた。茜ちゃんが「逢坂さんは神様の使徒だからそんなに強いんですね~」と緩い口調で話す為、俺の精神はだいぶ癒される。茜ちゃんは俺の隠れ癒しキャラに決定だな。俺がどうでもいい事を考えていると涼宮さんがオークキングの話に戻す。


「問題はそのクエストにもあるオークキングの討伐ですね。逢坂さんは体育館か男子寮・女子寮にオーガキングがいると予想されましたが、オーク達モンスターを指示しているなら高い場所から全体を見て指示しているとも考えられませんか?」


「そうですね、まずオークキングにそんな知恵があるのかどうかはわかりませんが、あのハイ・オークなど進化したモンスター達はある程度の指示をする知恵はあったので、オークキングが高い場所から何らかの指示を出している可能性は十分にあるかもしれませんね」と五十嵐君が涼宮さんの意見に賛同する。


「なら私が偵察に行ってみましょうか?私の職業は忍者なので無音移動やスニークっていう追跡スキルも使えるのでまずモンスター達には気づかれないと思うので」と茜ちゃんが提案してくれた。俺は危険だと思ったらすぐに戻って来て欲しいと伝えてお願いしようと思った時に、避難民の中から誰か叫びながら扉の方に向かって騒いでいるのが聞こえて来た。


「速水さん、お気持ちは察しますが一旦落ち着いてください。外は危険です」

「うるさい!あんた達に何がわかる!いきなり現れた何処の誰かわからない奴が寮まで行って調べて来たなんて誰が信じられる!俺は自分の目で確かめる!」と男性職員が止めるのを聞かずに体育館の扉に向かっていた。そしてその男性は俺を見つけるなり胸ぐらを掴んで仇のような目で俺を見ながら話しかけてくる。


「おい、あんた!何で大勢いるモンスターを瞬殺出来るようなあんたがいて何故助けられなかったんだ!うちの息子を返せ!」と罵声を浴びせながら泣いていた。

しかし、俺は男子職員がこの男性の名前を呼んだことに気になっていた。今泣いて膝をついている男性を「速水さん」と呼んだのだ。


「すいません、速水さん。心中お察ししますが、息子さんの名前を教えていただいてもよろしいでしょうか?」


「ああ、うちの息子の名前は「健介」だよ。速水健介だ」

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