夏の夜には
コバルト、セルリアン、アジュール
それと水縹(みはなだ)
散らばるさまざまな青
僕はアクリル絵の具がすきなんだと言う君に
ああやっぱりね、と少し安心した
それはひと夏の大傑作
おっきなキャンバスに
誰もがずっと切り取っておきたいと思う
ような
見事な夏空
積乱雲って言うと風情がない 入道雲の方が好き だなんて
そんなことで 他の人よりも分かったつもりになって
ああやっぱりね、を恥ずかしげもなく
積み重ねたんだ
やっぱり夏は青空、
塩素とアクリル絵の具
青が少しも見えなかった鈍色の日
美術室を後にする あなたと手をつなぐ
名も知らぬ後ろ姿に
ああ、やっぱりね、と強がりで
最後のひとピースを積み重ねてばらばらに
崩した
もうあの夏空を見る資格はないかしら、
安っぽいパウダーブルーをまぶたにのせて
家を後にする私は
田んぼをぬけてじめっとした熱帯夜の東京を
泳ぐ私は
ごめんなさいね
でも
透明少女を聞いてたら
私あの子になりたくなっちゃったの
日に焼けて
筋肉質な足出して
チープなフリルをゆらして
塩素とシーブリーズのにおいで
いかにもな田舎娘でも
手を引かれたらうそっぽく笑ってやろうって
夏は夜、まとわりつく青鈍(あおにび)だって
鉛のああ、やっぱりね。を
積み重ねようよ、ねえ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます