第31話「魔王城で休息!?」
★★★
「かーっ! 見せつけてきやがるなぁ、ちくしょう!」
「……リア充、爆滅すべし……」
水晶を眺めていたリュータとミカゲは、これ以上ないぐらい闇のオーラを強めていた。
魔王の間はすっかり負のオーラに満ち満ちている。
げに恐ろしきは嫉妬である。
「それにしても、四天王までやられちまうとはな……まぁ、よくやったと思うがな」
「ん……奴らの強さは本物……勇者パーティ時代の私たちなら、絶対に勝てなかった……でも……」
「ああ。魔王とその側近として転生して、なおかつ日々鍛錬に明け暮れた俺たちなら勝機はあらぁな。闘うのが本当に楽しみだぜ! 四天王の仇、討ってやるか!」
「ん……戦闘に明け暮れた日々を、わたしは忘れない……」
ちなみに魔王城の十一階と十二階には魔族も魔物も出現しない。
十一階は宝物庫になっていて宝箱がいっぱいある。ここで回復アイテムや装備を手に入れられる。 もし四天王戦で武具や防具が壊れたときのためにわざわざ最強装備の新品を用意して置いた。
そして、十二階にはベッドを完備。全回復することができる。もちろん、これまでの魔王城の歴史においてそんな親切な設計はされていなかった。
「ま、これぐらいサービスしてやらないとな。こっちは魔王城の最上階でふんぞり返って待ってられたんだしよ」
「ん……十一階に宝箱、そして、十二階にベッドを用意すると命令したときの部下たちの顔は傑作だった……」
☆ ☆ ☆
「うーん、やっぱり横になると疲れが取れるね~! これで準備はバッチリ!」
「魔力も完全回復しました~♪」
十一階で宝箱を開けた勇者パーティは十二階のベッドでゆっくり休んでいた。
最初は罠かと思ったが、どうやら本当にただのベッドだとわかると、二人一組になり代わりばんこに休むことにしたのだ。
ベッドは四つ用意されていたが、さすがに寝ている間に襲撃されたらまずいので一応は警戒して休みをとった。
「まさか魔王城の、しかも魔王の間の手前でベッドで休めるたぁ、驚いたぜ!」
状態異常からどうにか回復したアーグルも休んで四天王戦で受けた傷を癒した。
元魔王勇者ルーファもかすり傷程度だが、横になった。
戦闘は神経を使うので、横になって一旦、心身を休められることは大きい。回復アイテムで回復するのとは気分が違う。
ついでにベッドの傍(かたわ)らには椅子とテーブル、食料の入った魔力冷蔵庫や魔導キッチンもあったが、さすがにそれの使用はやめておいた。
一応、魔王城に来る前に食料(サンドイッチ)は持ってきていたので、休憩をとっている間に食べた。やはりルナリイの料理スキルは卓越していて美味だ。そして、なによりも家庭の味で胃袋を満たすことができて、心身共にリラックスできた。
「それにしても、十二階に勇者パーティのための休憩スペースを設置するとは……前代未聞であるな……あくまでも最高のコンディションで我らと戦おうということか……」
ここまで心遣いをしてくるのは逆に不気味ですらある。
「でも、こうして休めたからよかったよねっ。それじゃあ、いよいよ魔王と対面だね! 話し合い、通じるかなぁ?」
「なんとか平和的な解決ができればいいのですが~」
「ああ、リュータたちとは戦いたくねぇがなぁ……。というか、本当にあいつが今回の魔王なのかぁ?」
四人はそれぞれの戦闘準備を整えると、魔王城の最上階である十三階に向かうことにした。
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