第29話「勇者パーティVS史上最強の四天王」
☆☆☆
「あっ! すっごく広い部屋に出たよ!」
階段を上がっていき、ルーファったちは十階に辿りついた。
「うむ。ここは魔王城の広間であるな……慣例としてここには魔族や魔物は配置されないはずだが……」
「ああ、俺たちのときもここは敵とエンカウントしなかったぜ!」
「ですが~、今回はそうはいかない気がしますね~……」
広間をしばらく進んで行くと――四体が仁王立ちしていた。
「この四体が四天王?」
「うむ……我の代よりも、よほど鍛えたと見える。歴戦の戦士の顔つきだ」
「前回の冒険のときも苦戦した四天王と四人まとめて戦うたぁ、つらいぜ……」
「でも~、ルーファとリイナならだいじょうぶですよ~」
四人が残り十歩ぐらいまでいったところで、それまで微動だにしなかった四天王たちが一斉に動き出した。
「待っていたぞ勇者どもよ!」
「ここを通るには我らを倒していくがいい!」
「魔王様が相手するまでもない。ここでおまえたちの冒険は終わりだ!」
「史上最強の四天王の力見せてくれるぞ!」
鍛えに鍛えた四天王たちからは自信と覇気が感じられる。
これはよほどの鍛錬を経てきたのだろう。
「これは、油断できないね!」
「うむ……これまでの相手とは訳が違う。気を引き締めていくぞ」
「よ、よしっ、覚悟は決めたぜぇ!」
「支援魔法をいっぱいかけるので、焦らず地道に戦いましょう~♪」
ついに――歴史上初めて、勇者パーティ対四天王全員の戦いが始まった。
「キシャアアアア!」
ふだんは言語を口にする魔竜族も、戦闘時には竜そのものと言っていいほどの凶暴さと闘争本能を露わにしてくる。
しかも、ふだんは協調することのない魔竜族が連携しているのだ。
ゲルガンが無数の超炎熱球を無数に飛ばすとともに、三体は散開。
ガルガンが同じく剣を持つルーファに、ギルガンが同じく素手のリイナに、そして、グルガンがこちらの支援と回復を一手に担う白魔法使いルナリイを狙ってくる。
「おとーさん、おかーさんを守って!」
「任せとけぇ! ルナリイは絶対に俺が守るぜぇ!」
「あんっ、頼もしいです、あなた~♪」
「むう、四天王が連携プレイをするとはっ……!」
全体攻撃の超炎熱球をどうにか全員が避け、間髪入れずに襲ってくる敵と交戦する。
「ええいっ、やぁっ、とぉっ!」
「ぐふっ……くっはは、ぬるいぬるい! 魔王様の情け容赦ない攻撃と比べればなんのこれしき! くらえいっ!」
「きゃあっ!? いたたっ、久しぶりにダメージくらっちゃったっ!」
こちらの攻撃をものともせずに殴りつけてくるグルガンによってリイナは腕にダメージをくらう。
「ふはははは! 魔王様によって極限まで鍛えられた我が剣技、とくと味わうがいい!」
「くぬぅっ!」
勇者仕込みのガルガンの剣技に、ルーファは押される。
まるでリュータとと戦っているかと思うぐらいに、すさまじい斬撃。
この境地には一朝一夕で至るものではない。
それこそ血の滲むような鍛錬の末、身についたものだろう。
「ぐっ……」
相手の剣を受けそこなったルーファは、わずかに左腕の皮を薄く切られる。
ルーファがダメージを負ったのも、久しぶりのことであった。
こちらがいくらチート級の強さでも、四天王の熟練度も極限まで上がっている。
「ちょ、ちょっと待て、なんだこいつの速さはっ、うぉっ!? 以前戦ったときよりも強ぇぞぉおっ!?」
ルーファやルナリイですらダメージを受ける相手なので、おっさんのアーグルはかなり苦戦している。アーグルの攻撃はあたらず、一方的にグルガンの攻撃を受け続ける状態だ。
敏捷性特化型なので攻撃力はそんなに高くないが、ルナリイをかばい続けているのでダメージは蓄積する一方だ。
「あなた、今、回復しますから~。あと敏捷性アップの魔法もかけますね~」
ルナリイもアーグルを回復したり支援するので手一杯になる。
「おとーさんとおかーさんはふたりで協力して凌(しの)いで! ここはあたしとルーファでなんとかするから!」
「うむ。父上と母上を危険な目には遭わせられぬ! ふたりで協力して四天王を撃破するぞ!」
これまでの冒険で培った連携プレイで、ルーファとリイナは反撃の体勢を整えていく。
確かに、相手は強い。
だが、ひとつのステータスが突出しているだけに弱点はある。特に、アーグルとルナリイに敏捷性特化のグルガンがついているということは――敵の側は敏捷性が弱い。
「おとーさんとおかーさんががんばっているうちに、三人倒しちゃおう!」
だが、相手もそういう戦闘を想定した訓練を受けていたのだろう。ゲルガンが的確に火・水・雷の魔法を代わるがわる使いながら、ルーファとリイナの連携を妨害してくる。
「ぬう、こちらの動きを予見して的確に魔法を撃って牽制してくるとは……!」
これまでの四天王は己の力で相手をねじふせることばかり考えていた。
だが、いまの四天王たちは戦略も戦術も頭に入っている。
心技体が鍛えられただけではない。
戦闘知能ともいうべきものが第九十九代四天王たちに備わっていた。
それぞれの役目を果たし、こちらの意図を読んで的確に対応してくる。
つまり、強い。だからこそ――。
「あはっ! やっぱり強いんだね、四天王って!」
「ああ、さすがは四天王であるな!」
リイナとルーファは笑みを浮かべていた。ここのところレベルが上がりすぎた上にパーティで戦っていたので苦戦することがなかったが――久しぶりの強敵に出会えてワクワクしてくる。
ふたりは冒険を通して立派な戦士になっていた――。
★★★
「笑っていやがる」
「ん……すごく、楽しそう……」
勇者パーティと四天王の戦いを水晶で眺めていたリュータとクルミは、ルーファとリイナの表情を見てゾクゾクしていた。
これでこそ、勇者パーティ。
バトルを一番楽しんだ人間が、最も強くなれるのだ。
自分たちの鍛えた四天王は強い。
だが、あのふたりはさらに上をいく――。
それが、嬉しい。
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