第28話「魔王城攻略開始!」

★★★


「……リュータ、いよいよ、勇者パーティが魔王城に来たみたい……」

「へへっ、ついに来たか!」


 ルーファたちが四つ目の鍵を入手してから一週間後。十分な休息と最後のレベリングをした勇者パーティ一行は、魔王城の扉の前までやってきた。


 四人はそれぞれの職種の最強装備を身に着け、道具袋にも十分な回復アイテムを持ってきているようだ。


「俺が魔王城の倉庫から調達した武器や防具、ステータスアップアイテムはしっかり使ってるみたいだな」

「ん……もう魔王城の倉庫にはガラクタしかない……ステータスアップアイテムも0……でも、よかったの? 全部、四人に使わせちゃって……」


「ああ、それぐらいハンデやらねぇとな。俺たちが鍛えに鍛えた四天王たちと戦ってもらうわけだからな

「ん……わたしとリュータが鍛えた四天王たちは最高の仕上がり……疲れも魔王城内にある闇の力……魔王温泉『闇の湯』で治癒したからバッチリ……


「ちょ、そんな温泉あったのかよっ!?」


「ん……実は地下に温泉が湧いている……でも、リュータは魔王城最上階にある展望風呂『野望』があるからいいでしょ……?」

「いや、あれ温泉じゃないし……なんだよ、温泉あるんなら入っておくんだった」


「……なら……勇者たちとの戦闘が終わったら、入る……?」

「……『この戦闘が終わったら~する』フラグはやめとこうぜ。縁起でもねぇ」

「ん……確かに……」


 冒険者や武芸者にとって、『この戦いが終わったら~する』は最も不吉なフラグとして有名だ。


「まぁ、ともかく……勇者パーティの戦いっぷり、とくと見せてもらうかな」

「ん……魔王城内の魔物や魔族にも鍛錬を奨励していた……しかも、もともと強いやつらばかり。どうなるか、楽しみ……」


 ルーファとリイナは、魔王城の扉を開いた勇者一行の姿を水晶をとおして眺める。

 いよいよ、魔王城攻略が始まった――。


☆☆☆


「ええい!」


 リイナの回し蹴りが炸裂し、魔王城の甲冑騎士が後方へ吹っ飛ぶ。

 さすが魔王城の魔族だけあって、一撃で霧消することはない。だが、練度を増した四人の個人技と連携プレイは甲冑騎士が反撃する隙を与えない。


「それでは~、敏捷性を奪わせていただきますね~♪」


 ルミリアが杖を振るって、甲冑騎士の素早さを極端に落とす。魔法を無効化する鎧を装着している騎士も、レベル99の白魔法使いの魔法は無効化できなかった。

 そこをすかさず、


「俺もたまには子どもたちの前でいいとこ見せねぇとなぁ!」


 甲冑騎士の顔面にアーグルの右ストレートが炸裂する。

 強靭な防御力を誇るフルフェイス兜もレベル99の格闘家の拳にノーダメージとはいかない。


 甲冑騎士もこれまでの歴史の中で最も強いのだが――第九十九代勇者パーティはさらにその上をいく。


「魔王城の守り、大義であった……せめて我の剣で眠るがいい」


 元魔王勇者ルーファの神速のエクスカリバーが甲冑騎士を両断。

 左右真っ二つに別れて、本来なら苦戦必至の甲冑騎士は霧消していった。


 レベル170、熟練度70、武器は最強の聖剣――。


 魔王城に入ってからもレベル上昇が止まらないレベルアップ加速&カンスト破壊状態のルーファとリイナに抗しきれる魔族は、もはや魔王と四天王しかいない。


★★★


「やりやがるな! さすがチートスキルの持ち主だ。それにアーグルもルナリイも若い頃と遜色ねぇじゃねぇか」

「ん……むしろ、私たちと一緒に戦ってた頃より、連携がすごいと思う……」


 さすが家族といったところだろうか。


 そもそも、第九十八代勇者パーティ時代は、基本的にリュータとミカゲが闘争本能のままに突っ込んでいき、それをアーグルとルナリイがフォローするという形だった。


 それはそれでうまくいっていたが、四人ほど細かい連携はできていなかったので前衛のリュータとミカゲはダメージをくらうこともあった。


 しかし、家族ならではの連携プレイを見せる第九十九代勇者パーティはほとんどダメージをくらうことなく魔王城を攻略していっている。


 チートスキルに、最強の装備に、最上の熟練度に、家族ならではの最高の連携――。まさに、向かうところ敵なし状態だった。


「……リュータ、これじゃあ、最上階に達するのも時間の問題……」

「俺たちがそれなりに苦労した魔王城をこうも簡単に来られるとはなぁ! しかも、前回より魔族も魔物も鍛えてあるんだぞ? ……ははっ、おもしれーじゃねぇかっ!俄然、燃えてきたぜ! よっし、そろそろ四天王の出番だ!」

「……ん……四天王なら、そう簡単にやられない、はず……」


※※※


 魔王城は十三階建てである。一階から九階までが魔族と魔物の出現箇所で、十階に広間がある。


 これまでの魔王城の歴史上ここには魔族も魔物も出てこないのだが(ふだんは魔王様の部下たちとの謁見や魔族の集会などに使われる)――今回はこの十階に四天王が配置されていた。


 四天王は全員が魔竜族である。

 顔は竜で、体は人間のように胴体と四肢がある。


 それぞれ、攻撃・防御・敏捷性・魔法に特化している。

 色はそれぞれ、赤・青・緑・黄色だ。


 名前は、ガルガン・ギルガン・グルガン・ゲルガン。

 それぞれ自分の肌の色にあわせて鎧をつけており、両手はそれぞれ、ソード、ファング、ナイフ、ステッキを装備している。


 顔も名前も似ているが、彼らは兄弟というわけではない。


 これまでの歴史においては、お互いをライバル視して反目しあっていた彼らであったが――連日、魔王と魔王の側近にしごかれる日々を送っていたことで、奇妙な連帯感が芽生えていた。


「ついにあの地獄の日々から解放されて、勇者どもと闘う日が来たな」

「ああ、この日をどれだけ待ったことか……」

「我らの力、勇者どもに見せつけてくれようぞ」

「地獄の鍛錬の成果、見せてやろうではないか!」


 四天王の歴史始まって以来の地獄の鍛錬を経た彼らは、名実ともに史上最強の四天王になっていた――。


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