3. 見えない心

春から始めた半同棲生活も草木が散った秋ごろにはすっかり1人で暮らすようになりい、冬を迎えた頃にはようやく自分の夢に向かっていて、気づけば痛々しい傷も全く気にならなくなっていた。

自分はこれから自分がどんな未来を描くことができるだろうとゆうワクワクでいっぱいで、久しぶりに生きた心地がしていた。

次第に、いつ別れを切り出そうかと考える程に心は充実していたある日

「本気で歌手になりたいと思ってるの?言っとくけどそんな甘い世界じゃないから。笑」1通のLINEが来た。

内心ドキドキしながらも「なりたいと思ってるよ!だから今必死になって勉強してるんだ(^^)」と送ったのが間違いだったのか、以降毎日のように執拗にSNSで暴言を吐かれた。

1つ1つにストレスを抱えながらも以前のように感情が高ぶる事はなく、寧ろ心ここにあらずとゆう言葉がふさわしい。

しかし僕の心は徐々に欠けていき、この頃から段々眠れなくなり、勤務中に突然身体が強張り涙が出てくることがあり精神科に行くと「うつ病」と診断され抗うつ剤を服用する日々を送り始めていた。


次第にエスカレートし始めた彼女の行動は次第に直接的ではなく間接的に人を巻き込むようになっていた。

ある日、友人から突然電話が来て「最近どう?元気してるの?」と聞かれた。

彼は僕と彼女と同じ専門学校に通っていた宏とゆう年上の同級生だ。

僕は迷わず「それなりにって感じかな?」と返事をすると

「そっか。最近さ、優里と仲良くやってるの?」と聞かれた。

今まで彼女には周りに一切の愚痴を吐くな、2人の事を話すなと言われてきた。

どこで何があるか分からないと思ってずっと口を堅く閉じていたが2人の事を知っている親しい友人だった事もあり、思わず口を滑らせた。

「実はもう別れたいんだけど、どうすれば円満に別れられるのかな」と相談をした。


宏は親身に話を来てくれて、「今度飲みに行こう」と言ってくれた。

やはり、自分は周りの友達にも恵まれている。そう思ったのもつかの間だった。

その日の夜、彼女は家に来た。

「あのさ、私に謝らなきゃいけない事あるんじゃないの?」家に入っての第一声だった。

「え?別に何もないけど?」まるで認識のない僕に対して彼女は言った。


「あのさー聞いてんだ。瑠衣から。別れたいんでしょ?言うなって言ったよね?」

瑠衣は彼女の大親友でこの子もまた同じ学校だった。でも僕自身は瑠衣に話は一切していない。ましてや宏は誰かに簡単に口を滑らせるタイプではなく、どちらかとゆうと1人で何でも解決しようとするタイプだ。

返答をしない僕に対して勝ち誇ったかのような顔でこう続けた。


「なんで知ってるのって思ってるんでしょ?教えてあげるよ。瑠衣に聞いてもらうように頼んだんだよね~瑠衣は君の連絡先を知らないから君の友達を利用した。」


宏は聞いてくれと頼まれたらしい。友達を利用された。

「そうなんだ。最低だね。」と僕は言うが、完全に彼女のペースは変わらず

「そうだね最低だね。」と笑っていた。


「訴える事にしたから。DV。」と続けて言われた。

「DV?」僕は何のことか理解ができなかった。

「殴られた事も髪引っ張られた事も全部訴えるからね。」と言われた。


そう。僕は夜中に泣き叫びながら僕の携帯を壁に投げつけ大破させた彼女の髪を引っ張り口を押えた事があった。

腕を切る前、生活費入れてくれないなら生活ができないから夜も働くと僕が告げた時に彼女から「じゃあ一緒に住んでる理由ないね。勝手にすれば?」と言われ腕を切った。その時彼女がまた奇声を上げ、僕は彼女を殴った。

「そっか。それはごめんね。でも全て俺が悪いとは思えないけど。大体訴えるお金なんかあるの?」そう言うと彼女は殺気立った顔で僕に近づき

「気に入らないんだよ!!!!」と僕の顔や身体を血が出るほどに引っ掻いた。

「親に借金してでも訴えてやるから」と言い残し彼女は家から出ていった。


それから数日、僕は自分が「うつ病」とゆう事を自覚せず、時間が過ぎるのをただ待っていた。自分の家なのに帰宅する事が嫌で時間潰しにパチンコをする。

それがまたタイミング良く勝ち続ける事ができて、そのお金で1人お酒を飲みに行く事が日常になった。

「あんなこと言ってたけど、時間が解決するだろう」そう言い聞かせて、兎に角引っ越す資金を貯める為に働いて、歌の勉強も着々とこなしていたが

その時は来た。


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