第2話

(2)



 翌日、翔太は事務所に来た背丈の違う二人組の刑事からある事故の話を聞いた時、自分が仕掛けたものが予想以外の効果を生んだことを聞いて、思わず身震いした。

 自分のちっぽけな小さな正義が犯罪者を捕まえたのである。

 刑事はこのガソリンスタンドを事情聴取にやって来た。


 それは何故か?


 実はその時は分からなかったが詳細が新聞に出るに及び翔太は思わず唸った。


 ――T町の交差点からNへ向かう林道の急カーブで白塗りのセダンが曲がり切れず峠を落ちた。

 乗っていた二名は事故死したが、その内女一名は事故死以前にどこかで絞殺された模様。

 また転落した車のトランクからは覚せい剤が見つかり警察は入手先の洗い出しを行っている。


 それがアルバイト帰りに自宅で開いた新聞に書いてあった。

 事務所に来た時は転落事故があったのでその車がここに立ち寄らなかったか?という質問だった。事務所のビデオには該当車両が映っており、翔太が車のガソリン給油やら作業やらが映っていた。それで刑事はその時の様子を翔太に聞いたのである。

 翔太はその時の様子を隠すことなく、背の低い刑事に言った。

「はい、確かにあの時…僕が給油や簡単な清掃などしました。そうです…その時確かに後部座席に何か赤い毛布で寝ている女性がいるのがフロントガラス越しに見えました…、でもその人が生きてるか死んでいるかはわかりませんでした。それでタイヤの空気圧を図ったんです。ええ、そうです。刑事さんが言う通り、後部の左タイヤが少しパンクぎみで…、えっ車の事故検証をしたら釘がささっていたですって!!そ、それは…気が付きませんでした。もし気が付いていたら二人とも死ぬこともなかったでしょうし…。すいませんでした。確かに僕が見落とさなければ、犯罪者が明るみにならなかったことは確かですが、命を亡くされたことには心が痛みます」

 そこで刑事は翔太に聞いた。

「ところで君はアルバイトのT君について何かしらないかい?その金縁のサングラスの男と知り合いかどうか?ビデオに君が困っている様子が映り、彼が男をどこかに連れて行くのが見えたんだけど」

 翔太は首を振った。

「いや、彼とは或るバンドの共通のファン以外は特に何も、それにここのバイトだけの繋がりだけですから」

 その答えに別の背の低い刑事が聞く。

「あのさ…、車が出て行った後に彼から何か貰わなかった?」

 翔太は一瞬ぎくりとしたが、下を向くと少し黙り、小さく言った。

「…はい、彼に貸していたいたそのバンドのコンサートのチケット代があって、それを返してもらいました。これがその一万円…」

 言ってからズボンの奥深から四角く折られた一万円を出す。

「どうしましょう?」

 困る様に翔太が刑事に聞く。刑事は二人顔を見合わせ、背の高い刑事が言った。

「まぁ君のものやからいいんちゃう。それよりも、もしT君から連絡が有ったら教えて。あの子なぁ、覚醒剤シャブの繋ぎや連絡係なんかしてたらしいから」

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