第28話 傘
誰も歩いていない夜道。雨が静かに降っている。
泊まる予定の安いビジネスホテルはこの先のはずだ。初めて来る町で、それも地方で人通りも少ないのに、こんな時間になってしまうのは失敗だった。
本当に暗い道だ。
前に真っ赤な傘が見える。こちらに進んでくる。
こんな道を歩いている自分が言うのも変な話だが、こんな時間になぜ外に出ているのだろう。赤い傘だから女性だと思う。静かな暗い道に似合わない赤色。
傘をさしている人の顔が良く見えない。髪の長い女性。なんだか不気味だ。このまま歩いていけばすれ違う。でも仕方がない。しばらく曲がる道はない。
迫ってくる。一人でなにやら緊張する。
近づいてみれば、普通の女性だ。顔は下を向いて表情はよくわからないが、いたって普通。むしろ女性をガン見していたこちらの方が怖い人だと思われていたかもしれない。
すれ違う瞬間、ばさりと大きな音がした。
驚いて横を見ると、そこにいるはずの女性がいない。
赤い傘が不自然に一つだけ落ちていた。
怖くなって一気に走ってホテルまで行った。
夢でも見ていただけかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます