第27話 日記
部屋を整理していると、小学校低学年の頃の字だと思われる汚い字で名前が書かれたノートが出てきた。日記帳。
私はこの家に来る前の記憶がない。小学校三年生のときに引っ越してきたのだが、どうしてもその前のことが思い出せないのだ。まあ幼い頃のことだし、とは思うが、本当にきれいさっぱり覚えていない。
小学校三年生で転校して、そのまま卒業した。最初の頃は転校したばかりで不安だったのをよく覚えている。そのときの先生が本当に優しくて、友達も本当に助けてくれた。小学校の頃は本当に楽しかった。中学校も地域の公立の中学校に行ったので、その友達とほとんど変わらず仲良く過ごした。
その前が全く思い出せないのだ。友達に聞いても、私の転校前の話は聞いたことがないと言う。
それを紐解くカギになるかもしれない日記帳を発見したというわけだ。私は飽きっぽい性格だが、ちゃんと続いていただろうか。
日記帳だが、絵日記となっていた。とりあえず開いたページに驚いた。
絵が赤いクレヨンで真っ赤になっている。日記の本文には汚い字で何か書いてある。
「みんなもえてる」
怖くなって一つ次のページを見てみると、絵は黒ばかりで描かれている。葬式だろうか。
「みんなしんだ。くろいふく」
その後のページは何か精神を病んだ人の絵のようなものが続いた。一瞬かりんとうかと思うような真っ黒なばけものの絵。目が赤く塗られた人が描いてあるページ。三回見ると死んでしまう絵とかネットで検索すると出てくるようなイメージだ。私は頭がおかしかったのだろうか。
「みんなもえてる」の前のページを開いてみた。そこには、どうやら自分自身を描いたらしい子供がいた。本文には「死ね死ね死ね死ね死ね…」。
この日記帳のことは両親には伝えなかった。でも、捨てられなくて、机の下にしまっている。
私は今、幸せに暮らしている。どんな過去があったのだとしてもそれは変わらない。
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