コーヒーの美味しさ

松風 陽氷

コーヒーの美味しさ

 松風陽氷  「コーヒーの美味しさ」


 一等寒い夜、僕は決まって電子レンジからお呼びがかかる。深夜らしからぬ軽快なそのリズムは眠りを切に求む僕の心をまるで土弄りでもするかの様にぐしゃぐしゃにする。ふざけるな、やかましい。夜の空気とのコントラストのせいだろうか、その音は昼間に聞くよりもずっと馬鹿馬鹿しく聴こえて、僕は扉を少々強引に開けた。するとその黒い箱は大袈裟な程左右にぐらついて、その厚かましさが尚の事僕を苛立たせた。中から熱くなったマグカップを取り出すと、熱々になった牛乳が右手にちょっとばかし引っ掛かって大変痛かった。ついでに言うと、そのホットミルクの一口目、僕は舌全体を火傷してこれまた大いに痛かった。お陰で余計に目が覚めた。明日は朝からバイトで早いと言うのに。嫌な事とは続くものだ。そう言えば僕は都合が悪くなると決まって「嫌な事とは続くものだ」と言っている様な気がする。あぁ、止そう、夜に自分の事を考えて良かった事など今までこの人生一度でもあっただろうか。どうせ自分が生きているのが嫌になって、死にたいだの消えたいだの生まれて来なけりゃよかっただのと、神様仏様お星様に両手合わせてお祈りするんだろう。あーあ、馬鹿馬鹿しい、馬鹿馬鹿しくって仕方がない。真夜中の電子レンジより余程馬鹿馬鹿しいじゃあないか。そんな事、裸で蜂蜜を採りに行く方がまだ意味があると思えるぐらい不毛極まりない。下らない、行動は勿論、思考回路も駄目になってきたみたいだ。熱いものはふうふうして落ち着いてゆっくり飲む事、ってね。色々と強引過ぎたのかもしれない。やはり人間、夜は眠るものなのだ。

 袖の余ったぶかぶかのパジャマで丁度良かった。僕は両の袖をクッと伸ばして布越しにマグカップを持って自分の部屋に行こうとした。すると電話台の横を通ったその時、何かにフッと当たった気がした。物凄くか弱い何かだ。おかしい、いつもこんな所に障害物なんて無い筈なのに。余りにも弱々しい衝突だったもので、思わずボケェっと白痴みたいに振り返った。するとそこには我が家で極々稀に見る陶器の花瓶が置いてあって、一輪大きな蕾が挿さっていた。これは百合の花だろう。流石にその位は僕だって分かるさ。そうだ、そういや昨日、母が祖母の家を訪ねた帰りに庭で育てた百合の花を持たされたらしい。今、自宅の電話台の上に一輪だけ、今夜の月の様に鮮やかな黄色をした百合の蕾が静かにこうべを垂れてさせている。それは殊に大きな蕾で、今にも弾けんばかりであった。重たそうだ。僕は花に訊ねてみた。

「君はいつ頃咲くのかい?」

花は喋りにくそうなくぐもった声でモゴモゴと答えた

「もうじきよ、そんなに急かさないで頂戴。……そうねぇ……明日よ、明日あなたが目を覚ましたら私、とびっきりの笑顔でおはようって言ってみせるんだからね、あぁ、勿論こんな姿じゃなくってよ、だから楽しみにして今夜はもうお眠りなさい」

「そうか、そりゃあ素敵な朝になりそうだな」

僕がおやすみと言うと、我が家に降り立った小さな月は満足気な様子でフワリと揺れた。表階段から二階へ上がり、自室の扉を閉じた僕は少し温くなった牛乳を半分程一気に飲んでほんのりと暖まった胃を左手でスルスルと摩りながら勉強机に向かった。無論、勉強なんかはしない。暗い部屋の中、机電気の薄灯りの下で小説を読み、この身体が眠くなるのをじっと待つだけだ。数ページ読んだところで赤い栞がやけに赤すぎて見えて何だか苦しくなったから、本を閉じて残った牛乳を全てぐいっと飲み干してベッドに入った。飲んですぐ横になったからだろう、胃の牛乳が迫り上がって来た。体勢を変え、壁に凭れながらベッドに座って暫くぼんやりと壁のポスターを眺めていた。大好きなサルバドール・ダリの絵画。時計がドロドロしている。どこまで落ちるか分からない奈落。今ならこれを現実だと言われても何ら笑えない様な気がした。夜は薄ら気味が悪い。いやはや、嫌な事とは続くものだ。……これより先の回路はとおせんぼ。はい、じゃあ十数えたらおやすみなさいだ。昔祖母が教えてくれたおまじない。ゆっくりと数える事が大切なんだ。深呼吸をして布団に入り、胸の上に右手を添えて脈を感じながら。一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、大丈夫、おやすみなさい。


 少し寝坊をしたみたいだ。やけに鳥が喧しく鳴き喚いていて、それが眠り過ぎのこの体と相乗効果を成し、結果鋭い頭痛を引き起こした。頭が痛くて痛くて、それで起きた。最悪な目覚めだ。身体も怠い。起き上がりたくない。でも一丁前にお腹は空くんだから、朝ってのはどうも嫌いだ。さて、台所へ行こう、今日はハニートーストの気分なのだ。僕は裏階段を無気力げに負のオーラを連れてでろりでろりと降りた。

 食パンは狐色の一歩手前で取り出して、マーガリンをたっぷりと。おっと、コーヒーを忘れていた、いけないいけない。インスタントコーヒーが入ったマグカップをレンジに入れ、温まる前にスマホでタスクを確認する。……ふむ、今日のすべき事は何も無いらしい。突然軽快に流れたリズムの中で、僕は大きく伸びをしながら蜂蜜を探した。朝に聞くこの音は嫌いじゃない。朝だ、という感じがする。何となく習慣からくる感覚的なものだけど。まぁどうでも良いやそんな事。トーストとコーヒーが冷めてしまったら、僕は何の為に布団から吸血鬼ばりのおどろおどろしさで這い出て来たというのだろう。吸血鬼は日光に当たると死んでしまうのだ、それでもやはり、どうしても熱々サクサクのハニートーストが食べたくなったのだ。あぁ、何で君はこんなにも蠱惑的なのだ、ハニートーストよ。いただきます。


 朝はコーヒを飲まないと、何もする気になれなくっていけない。食後のコーヒーは両手の間で気だるげに湯気を纏っており、その微かな白は幽霊になって、こちらへおいでと手招きしているみたいだった。コーヒーを飲んでいる時、僕は度々考える事がある。果たして人は本当に美味しいと思ってコーヒーを飲んでいるのだろうか、と。こんな黒くて苦い液体、誰が飲もうと言い出したのだろうか。きっとそいつは随分と好奇心旺盛で尚且つ酔狂な人間だったに違いない。僕はそいつと是非仲良くなりたいと思うだろうな。奇人変人個性の塊、これ以上に面白いものがこの世に存在するだろうか。どこかで酒でも引っ掛け周って夜通し語り合いたいものだ、探究心と挑戦と馬鹿の関係性について。楽しそうなことこの上ない。

マグカップの底で、透き通った黒一色が三日月を創り終えたところで、さて、何かを忘れている気がする。はてな、何だったか。下唇を指先で撫でながら腕を組んでうむと考える。あぁ! 百合の花だ! 僕はトーストのボロボロとした屑をその場ではたき落として表階段のすぐ横にある電話台へ小さく駆け出した。何だか小学生の頃に戻った気がした。そう、夏休み直前の朝顔だ。


 小学校一年生の時、学校のベランダで皆一緒に朝顔の種を植えた。同じ鉢植え、同じお水の量、同じ数の同じ種。それなのに僕の朝顔は全然芽を出さなくて、僕だけ一人、観察日記に土を描き続ける日々を送っていた。周りには「茶色の線を引くだけだから楽で良いよ」と言ってはいたが、その実遣る瀬無い気持ちで一杯だった。一人だけ二本足でギッタンバッコンして時間を潰す観察の時間も、「皆さん葉っぱをよおく見てください」の先生の優しい声も、「葉っぱに掛からないようにそうっと優しくね」と言われた水やりも、全部が全部、体がペシャンコになりそうな位、情けなくて惨めだった。一度、僕はヤケクソみたいになって、一つ一つ丁寧に雑草全てを描いて提出した。先生は心配そうな、でも、何と言って良いのか分からない風な顔をして、それでも微笑みながら僕の頭を撫でてくれた。その次から僕は茶色の色鉛筆しか使わなくなった。僕は先生が好きだったのだ。夏休みを目前にして、もうそろそろお道具箱の中身をちょっとづつでも持って帰りなさいと言われた日。その頃にはちらほらと支柱を立て始める人も出てきていたが、僕は依然茶色ばかりが減っていった。と思ったら、何と、一つぴょんと、可愛らしい双葉が出て来ているじゃありませんか。僕は真っ先に先生に報告しに行って、先生が安心したように頭を撫でてくれたのを覚えている。その日を皮切りに、何があったのだろうか一日一つのペースで芽が生え、それらは驚異的なスピードと生命力でもっていくつもの芽を出した。幼かったあの頃の僕は純粋にも奇跡だと思った。ジャックと豆の木の様に思ったのだ。きっと、毎日毎日放課後に一人残って声を掛け続けたからだ、まっさらな土に優しく水を掛け続けたからだ、と。その後母から、先生が「あんまりにも芽が生えなくって可哀想だから」と言ってこっそり種を追加してくれていたのだ、という事を教えられた。どうりで植えた本数よりも倍近くの双葉が出て来たわけだ。何だか怖い様な悲しい様な、周りよりも劣っているという自覚なんぞより、余程惨めだった。そんな淀み切った感情をも緑は癒してくれた。僕は自分の鉢植えに芽吹いたこの小さな命達が愛おしくて愛おしくてたまらなかった。夏休みに入っても、自宅のベランダの日当たりの良いところに鉢植えを置いて、毎朝欠かさずに水をやった。起きてすぐに朝顔に駆け寄ってアブラムシみたいにくっ付いてきょろきょろと小一時間眺めたりする日もあった。僕は存外花が好きらしい、自分で思っているよりもはるかに。


 五メートルほど先にある電話台の上に大きな大きな黄色が見え、僕は駆け寄りながら「おはよう」と声を投げ掛けた。すると百合はこれでもかという程の自信ありげに張った声色で「おはよう、ご機嫌麗しゅう!」と言ってこちらを向いた。

「ほうら、言った通りだったでしょう、咲いたわよ! あぁ、呼吸がしやすくなって、何より貴方とお喋りしやすいわ!」

「そうみたいだね、良かったよ。綺麗だ」

僕は少しドキドキしていた。赤面させられる程に、花は美しかった。活力に溢れた瑞々しい葉脈、がくの辺りが凝りそうに見える程大きく重量感一杯の花冠、艶っぽくぬらりと光る柱頭。そのどれもが息を呑む程だった。水が半分程まで無くなっていた為右手で花をそっと支えながら花瓶をしっかりと持って行き、台所の流し台で水を取り替えた。明日もおはようと言って欲しい。花瓶に付いた水滴を丹念に拭き取って電話台の上にコトリと置くと花は蝋細工の様にこっくりとした花弁で僕に触れて「ありがとう」と嬉しそうに無邪気に笑った。しっとりと潤いがあって、でもベタつかずさらりとしていてふわふわの質感だった。天女の羽衣というのはきっとこんな感じなのだろうなぁ、と思わず想像した。

 次の日もその次の日も、花は元気良く笑っていて、僕は水を取り替え花瓶を拭きながら談笑した。それは毎日平凡で変化の無い日々を送る僕にとって、とても幸せな日々だった。四日経ったくらいが潮時だったのだろうか、五日目の朝、水が三分の一程度しか減っていなかった。僕が昨日あった面白い話なんかを一通り終えた時、花は気まずそうに頭を垂れて言った。

「あのね、もう良いわよ、明日から。その、話し掛けに来なくても」

僕は花瓶の水を拭き取りながら突然の事態に驚きを隠せず目を皿の様にした。手を止めて優しく黄の花弁を撫でる。そうしてみて、初めて気が付いた、花弁の端の方が乾燥してほんの少しだけ赤茶けていたのである。

「……そんなこと言わないでおくれよ、寂しいじゃないか。明日も来るからね、明日も笑っておくれ」

僕は笑顔を作ってそう言ってみた。しかし、眼前電話台上、壁掛けの鏡に映った自分の顔は酷く今にも泣きそうで、とても笑顔とは言えなかった。眉は下がり、目の下は少々赤みを帯びて、口元はピクピクと片上がりに痙攣していた。無様だった。

「じゃあ、また明日ね、また来るからね」

逃げる様に背を向けた。その日のタスクにホームセンターへ行くことが追加された。


 次の日、花は実に機嫌が悪かった。顔が合うなり開口一番「私昨日来なくて良いって言ったわよね」と責める様な口調。

「まぁまぁ、今日は良い物を持ってきたんだよ、これ、じゃじゃーん!」

おどけた明るい効果音と共に僕は液体肥料と霧吹きをビニール袋から取り出し、花に堂々と見せ付けた。

「これさえ有れば君もきっと元気になるだろうさ!さて、水を替えるよ」

そう言って花瓶の水を見るも、昨日から全然減っていない。花は何も言わなかった。一生懸命頭を支えようとしているのが伝わってきて小さな不安が芽生えた。僕は水位の変化に気付いていない振りをして昨日と同じ様に水を替えた。花瓶の水に液体肥料を混ぜて仕上げに花弁や茎、花全体に霧吹きを掛ける。花瓶を拭いている時が一番花と対面する時間らしい、昨日変色が見られた花弁が全体的に萎れてきていた。恐ろしさを感じた。早すぎるじゃないか、なんで、まだ、数日しか一緒じゃない。……僕は知っていた筈なんだ。切り花の寿命はせいぜい一週間、どう頑張ったって二週間は持たない。そして今日はもう六日目である、壊れて行くのは当然なのかもしれない。言動と思考の乖離が酷くて少し頭痛がした。花はベラベラと与太話をする僕の、花瓶に触れたままになった右手にすっと葉の影を落として今日二言目の口を開いた。悲しくなる程弱々しい触れ方だった。花は衰弱すると早いのだ。

「明日から、本当に、お願いだわ、会いに来ないで。私、もう貴方の顔なんか見たくもないのよ!」

自意識過剰かもしれないけれど、僕は花が嘘を吐いていると思った。葉を優しく撫でながら笑顔を作って

「肥料だって入れたんだ、明日はきっと元気になってるって」

逃げる様に背を向けた。じわじわと端の方から死んで行く花を毎日見ていることは、とても苦しい。でも、僕には今以上の策が分からない。


 花を延命させる方法を祖母に訊いてみた。祖母は

「枯れた花びらと葉っぱを毟って切り口をまた新しく斜めに切り込むと良いわ、長持ちすると良いわねぇ、頑張ってね」

と教えてくれた。

 七日目。花は眠った振りをして僕を無視した。僕は口ばかり動かしながら水を替え、液体肥料を流し込み、花瓶を拭きながら花に祖母の延命治療を提案してみた。すると今までで無反応だった花は戦慄いて声を震わせた。

「嫌よ、嫌……そんな……!」

「そんな事言わないでおくれ、君を生かす為なんだから」

 僕は半分以上乾燥して死んだ様な花弁と葉を丁寧に毟り取り、茎の切り口をチョンと斜に切った。その間花はヒステリックに「嫌」と叫び続けていた。それが余りにも喧しかったものだから、勢い余って雄蕊と雌蕊も全て刈り取ってしまった。すると途端、声を失った様に静かになった。全ての処置を終え、「また明日ね」と言って手を振った。僕の顔面には満足な笑みが勝手に零れて溢れた。


 八日目、毟っていない花弁が一枚落ちていた。それを見て、僕はありったけの液体肥料をぶち込み、花弁の美しい一枚以外を全て毟ってばら撒き落とし、茎を大きく斜めにぶった斬った。処置をしている最中、全く何も思わなかった。昨日は満足感があったのに。花の原形を失った彼女は最後にこう言った。

「枯れていく姿なんて、見られたくなかったの。貴方に見られるのが一番苦しいわ。貴方には美しい私だけ見ていて欲しかったの、だから、貴方はこんな事すべきじゃなかったのよ。私は長く生きる事なんか一度だって望んだことないのに。どうして貴方は私が悲しくなることをしたのよ、貴方は私のことが嫌いだったの?」

「そんな訳ないだろう、君を心から愛している、だから僕はこんなにも手を尽くすんじゃないか」

「じゃあ、本当に私を愛してるって、そう、言うなら」

花は最後の一枚になった花弁をわざとパタリと落として、縋る様に

「今、殺して」

と吐き出した。


 どれ程の時間電話台の前に立っていただろうか。唐突に聞こえたすれ違いざまの母の声でふと我に返った。

「あれ、何で? 花びらとか葉っぱ無いじゃん、全部落ちちゃったの汚いねぇ、何これ?」

「……知らない。枯れて勝手に落ちたんじゃないの。今丁度片付けようと思ってて」

隣で覗き込みながら訊ねる母の目を見ずにつっけんどんな応えをした。勝手に落ちただって? 確かに最後の一枚は花が自分で落としたかもしれないけれど、その他は僕がこの手で引き千切ったじゃないか。つい咄嗟に嘘を吐いたのはどうしてだろう。罪の意識というものか? でも僕は自分のとった行動に後悔などしていない。していないはずである。

「知らないって、あんなに大事にしてたじゃない……この花びらなんかまだ凄く綺麗なのにねぇどうしてかしら。……まぁ、良いか」

母の手によりヒラリと箱に投げられた花弁は、悪臭を放つゴミの上で美しく鮮やか過ぎた。その姿は宛ら揺らぐ湖面の月光だった。ゴミの臭いの中でその鮮やかさが朧げに曇っていく様に感じた。ゴミ箱の曇天。漠然とした思考回路の中、五日目位で押し花にでもすれば良かったかと思った。そうすれば花は半永久的に美しくいられただろうか。いや、半永久的な美しさは果たして本当に美しいと言えるのだろうか。分からない。でも、僕は花のことを本当に愛していた。だから心から望む事をしてやった。手を大きく開いて強く強く茎を握り潰した。生きた細胞から滲み出た水分が掌にぐちゃりと付着して、僕はそれを鼻先へと乱暴に押し付けた。鼻腔から気管を走って肺を満たしたその香りは青く、身体の内側から僕を蘇らせたみたいだった。いや、もしかすると内側から僕を侵食したのかもしれない。花の空気に触れた内なる外の部分、気管や肺の粘膜からじわじわと末端まで巡っていく「何か」を漠然と感じることしか出来なかった。満足する程の不安感。静かなる激情。高熱の虚無感。その「何か」は、いくら考えても分からなかった。きっと今日起きてからまだコーヒーを一滴も飲んでいないせいだろう。普段の三倍程のインスタントコーヒーをカップに入れ、濃く深く濁ったそれを一気に呷った。これが、生まれて初めて僕がコーヒーを美味いと思った瞬間。















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