第1話
オムライス……
オムライスが食べたい。
私は、机の上の携帯に手を伸ばす。
今日は、定休日らしい。
タイミング悪いなー
とか思いつつ、今日の人生最大の行事に備えている。
いや、大袈裟すぎたか。
近くにあった手鏡で、自分の顔を見る。
今日は、顔むくんでないな。よし!
細かく自分の顔をチェックした所で、ドライヤーで髪の毛をセットしに行った。
新しい制服に身を包んだその姿は、今まで見た私の中で1番輝いていたように見えた。
爽やかなショートカットに、パッツンではなく、綺麗に横流しした前髪なしヘアーを
綺麗に整えた。
美容師さんにおだてられて3日前、
パッツンにしたのだが、
本当に似合わなかった。
やっぱり、そうだよねー
まるで、座敷わらしのようだった。
その短くなった前髪は、横から持ってきた髪の毛と一緒にピンで止めて何事も無かったかのようになっている。
あぁ、よかった。
ほんとに
もしこれでも髪の毛がとまらなかったら
私は絶望的だった。
【準備できたー?】
【待ってよーあと15分もあるじゃん】
ほんとに、お姉ちゃんはすぐ急かす。
起きてくるのは私より30分以上遅いくせに、準備のスピードが半端ない。
さすが大学生
そんなことを頭で考えつつ、
私も仕上げのリップを口にのせる。
日焼けもなおって、血色のいい唇は自分でも自慢だ。
【いってきまーす!】
。。。
高校に到着した。
【おはようございます!】
第一印象を気にして、私は大きい声で先生たちに挨拶していった。
入学式も無事終わり、
10分くらい休憩時間があった。
【りえさん、ちょっと来て】
私の新しい担任 金田 先生から呼び出された。
【あなた、色つきリップしてるわね?】
この質問は、人生で何回されたら気が済むのか?
もう慣れてきた...。
私は、違いますと
口を手の甲で擦って見せた。
私の手の甲が無色なのを確認すると、
ごめんねと言ってきた。
まだこの先生はいい。
中学校の時など、急に口に白い紙をあてられて色を確認された。
ほんとに、
なんなんだか。
私は、先生に証明するとそのまま女子トイレを探した。
階段のすぐ隣にある、そのトイレはなんだか貧乏くさくて
学校の今の現状がまるわかりだ。
でもなんでだろうか、ここの学校の雰囲気は好きだ。
進学校と違い、みんながせかせかしていない。
トイレには女子が数名いた。
初日は、大体同じ学校の友達とみんないる。
やっぱり知っていると言うことは、なんだかんだ安心なのかもしれない。
ここの学校は、専門学科を取り扱っている学校で
私のいるクラスは女子しかいない。
なので、恋愛のゴタゴタなどめんどくさいものはとくにおこらなさそうだ。
トイレの待ち時間に、前後の他校の女子の会話を聞いていると
みんな他校の彼氏の話をしている。
…
急に孤独を感じた。
みんなすごいなぁ
私は、好きな人すらできなくて悩んでいるというのに…。
みんな青春してるんだなぁ。
私が、一人孤独感に浸っていると
気づくとトイレが開いていた。
私は中に入り、用を足し終えトイレットペーパーの方をみる。
…嘘だと言ってくれ。
白い私が今一番欲しているそれは
私の前の人によって使い果たされたいたようだ。
あっ、ちょっとまって
私は、制服のポケットを手で弄る。
あっ、さすが私。
そこには、今朝入れたばかりの高級ティッシュが入っていた。
私はそれを使いトイレから出た。
トイレ内を見渡しても積んでいるようなトイレットペーパーがない。
私は、並んでいる女子たちに
「ここのトイレトイレットペーパーきれてるからねー」
といって、その場を立ち去った。
女子だけってなんだかんだ安心する。
なんだか、堂々としていられる。
それはきっと、中学校時代のトラウマがあるからだろう。
無垢な君を奪いたい 透明なりんご @ringoboo0424
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