族[獣] 科[穴] 名称[ストームモォール] 推奨[F~] 出現[野山――――土――――闇] 注意事項[土魔法、ひっかき]

 ◇族[獣] 科[穴] 名称[ストームモォール]◇

  別名、畑あらしストームフィールドと呼ばれる。

  全長150センチ。巨大な爪のある手を持つ。


 ◇推奨[F~]◇

  畑の被害を最小にするため、討伐報酬が常に設定された魔獣である。討伐部位は右手である。穴を掘り隠れているので注意が必要である。


 ◇出現[野山――――土――――闇]◇

  土壌が良い場所で発生しやすい。


 ◇武器防具◇

  発生して数日たったストームモォールは、瘴気によりつるはし、黄色の兜、黒い眼鏡、鉄の棒、布鎧を作り出す。


 ◇注意事項◇

  土魔法・・・落とし穴を多用する。

  ひっかき・・・間抜けな顔に似合わず、鉄の剣なみに強力な爪である。



 ◇ウロク談◇


 川で何回も何回も、体も装備も荷物も洗った翌日の話だ。


 その頃の装備は錆びた鉄兜、バスター2号(木の棒)、シャドウウルフの毛皮マントもどきだ。


 「お魚もいいけど、お肉も食べたいね」


 そんな会話をしながら、ハマナ町に向かっているときに、飛んで火にいるなんとやらだ。


 地面から顔を出してストームモォールがこちらを見つめる。


 見つめると言っても、黒い眼鏡をかけているので実際にそうだかはわからない。


 ストームモォールは魔獣でありながら、瘴気で武器防具を作り出す変わった魔獣だ。


 わかりやすく変わった点をあげるなら、頭にかぶった黄色の兜。中央に緑の+マークがある。


 「あんなのかぶってなきゃ、不意打ちできたのに・・・」


 シュッ


 ディトナが弓を放つが、つるはしではじかれ穴に潜ってしまう。


 俺は、地面から魔力のゆがみを感じようとするが、ストームモォールは、地下にいくつもの魔力だまりを作るため判別がつかない。


 くるくるくる


 背後から迫る鉄の棒を、バスター2号で弾き飛ばす。


 この鉄の棒も、ストームモォールの変わっている点だ。ナイフならダメージも大きいのに、わざわざ、両端がC型になった鉄の棒を投げるのだ。


 ゴボッ


 エルミナの足元に大きな穴があくが、穴があく瞬間にジャンプで避ける。


 『ウォーターボール!!』『チャッカ』


 俺はダメもとで、落とし穴の底に感じる魔力のゆがみへと、炎を投げ入れる。


 「ぴぎゃぁぁっ?!」


 炎が燃え移ったストームモォールが、コミカルな動作で飛び出す。


 シュッ


 ディトナが放った矢が、ストームモォールの首に巻かれた真っ白な布鎧を貫通すると、瘴気でできた武器防具から瘴気が立ち昇り消滅する。


 防御力の極端に低い首に巻かれた布鎧も変わった点である。


 ぎゅるるるるぅぅぅ~~~~

 ぎゅるるるるぅぅぅ~~~~


 「うーん。オーブによるとあまりうまくないってなってたぞ。それでもいいか?」


 「うん!」


 「ああ!」


 だいぶ早いが野営の準備をする。その間、俺が調理担当だ。


 臭みの強い内臓を捨て、60キロくらいの肉を切り分ける。


 ディトナに鍋へウォーターを入れてもらい30キロくらいの肉を煮込む。ことことと灰汁を取りながら夕暮れまで煮込む。


 ディトナのウォーターは塩味が強く、飲むのには適していない。


 ざばぁっ


 「あー?!おにぃちゃん!何てことするの!」


 「だいじょうぶだ。この肉は本当に癖が強いんだ。だから、一回目の煮汁を捨てるんだ」


 「ほ、ほんとぉー?」


 「ついでに鍋にウォーターを入れてくれ。半分くらいな。ディトナも半分くらい入れてくれ」


 煮立ったところで、食える雑草をちぎって入れていく。


 「これは?」


 (見たことのない雑草だ)


 「ニンニク草だよ。エルフでは臭みを取るのにつかうんだ」


 「そうか、ありがとう」


 ディトナは多くの種を持っている。そして、必要な時に土に植えて魔力を与えグングン育てる。弓に使う矢の木も、矢の木の種という種から100本もの矢を作り出していた。


 ディトナが木を削って作った即席のおたまで、軽くかき混ぜて味を見る。


 (うまっ)


 「おにぃちゃん。ずるいよー」


 「わるいわるい。んんじゃ夕食だ」


 即席の木製のお椀へ、よそっていく。


 みんなにいきわたったところで、一斉にくちをつける。


 「「うまっ!!」」


 「ニンニク草すごいな。臭みがいい具合に、うまみに変わってる」


 「ウロクの腕がいいんだよ」


 (まともに料理を作り始めたのって、エルミナにあってからなんだよなー)


 それもキロ単位の料理を毎日だ。そして、今晩も朝食用の肉を一晩かけて煮込まなければならない。だが、そんな生活もウロクは悪くないと感じているのであった。

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