族[―] 科[―] 名称[UNKNOWN] 推奨[A~] 出現[――――――――――――] 注意事項[―]

 ◇族[―] 科[―] 名称[UNKNOWN]◇

  分類は不明。

  姿かたちは精霊族に近いが、ゴーレムやグールの複合体のようだと報告された。


 ◇推奨[A~]◇

  Cランク冒険者を圧倒したと報告された。


 ◇出現[――――――――――――]◇

  霧の谷のダンジョンでの遭遇情報があり、それ以降に遭遇したという情報はない。

  霧の谷のダンジョンは、厄介なだけの魔物が多く、ドロップする魔石も小さいため、ダンジョンとしての価値はまったくない・・と報告された。


 ◇注意事項◇

  不明。



 ◇ウロク談◇


 マリオネットフラワーゾーンを抜けて、俺に少し平穏が戻ってきた頃の話だ。


 その頃の装備は錆びた鉄兜、解体用のナイフ、シャドウウルフの毛皮マントもどき、穴が広がった革の服だ。


 ゾクリとする寒気を感じ、3人は立ち止まる。


 気づけば、5メートル先の真正面に一人の女性が立っていた。


 エルミナの毛は一瞬でバリバリと逆立ち、俺は息をするのも忘れて立ち尽くす。


 目の前の女は、買い出しに街に出てきた貴族のメイドの服装をしているのだが、見えている顔や肌に生気がなく、ゴーレムのようでもあった。


 ゆっくりと、こちらに向かって礼をとる。スカートの裾を持ち上げて、屈むような姿勢だ。


 「〇▼×□凸▽」

 ――DPを消費し、私が留守になるKOMIKEの時期に、お嬢様のダンジョンを襲うとは、許し難い蛮行ですね。


 「けみけ?」


 シュッ!!


 俺がつぶやくと同時に巨大な背嚢を投げ捨てディトナが放った矢は、メイド姿の魔物の顔面をとらえるが、顔を少し横に向けただけで、矢を口で受け止めてバキッとかみ砕かれる。


 「▲×□凸▽〇」

 ――どうやら、礼儀もなっていないようですね。


 「魔物が人真似して、ギャッギャッ言ってんじゃないよ!!」


 シュッ!!シュッ!!シュッ!!


 三連の矢がメイド姿の魔物にあたる瞬間、その場から立ち消え、真横に現れたメイド姿の魔物がディトナを蹴り飛ばしている。


 ドカーン!


 ディトナが馬にでも蹴飛ばされたように吹き飛んでいく。


 『ウォーターボール!!』


 メイド姿の魔物が指一本こちらに向けただけで、ウォーターボールは空中で止まってしまう。


 『チャッカ』『ウィンド』


 チャッカで燃え上がったウォーターボールを、風魔法でメイド姿の魔物に吹き付ける。


 ボワッ!!


 火と風が収まる。


 無傷。


 「×□凹▽〇▲」

 ――ちょっと、砂って・・・ぺっぺっ。


 俺のウィンドには、どういうわけか砂が混じる。いや、いまはそれどこ・・・グホッ!


 「おにぃちゃん!!」


 次の瞬間に、俺はビンタ一発で吹き飛ばされる。


 「やぁぁ!!」


 エルミナが鉈で立ち向かう。


 「□凸▽〇▲×」

 ――女の子がはしたない。


 メイド姿の魔物がキッと威圧しただけで、エルミナは意識を刈り取られて地面に倒れる。


 風が集まる1点に1点へ1点に1点へと。


 「化け物!滅びろぉ!!」


 ディトナが、全身全霊の風魔法を込めて矢を放つ。


 すべての音が放たれた矢に吸い込まれ、メイド姿の魔物の胸に突き刺さ・・・。


 ぺしっ


 ズダァァァッン!!!!


 「「?!」」


 ドラゴンすら仕留めそうな一撃を、羽虫を払う程度のしぐさであしらった。現に、はじかれた矢は地面にぶつかると地面を砕き大穴が開いている。


 メイド姿の魔物は、スカートの中からフライパンを取り出すと、瞬間でディトナの前に移動して、フライパンをフルスイングする。


 スパーン!!


 ディトナは10メートル先の岩壁に激突し、意識を失う。


 (どうする?どうする?どうする?!)


 瞬きした瞬間にはもう、メイド姿の魔物は俺の前で腰を折るように顔を覗き込んでいた。


 「☆△〇▲×□」

 ――あなた。私の言葉わかってますよね?


 「凸〇▼×□△」

 ――黙っているなら、お仕置きしちゃいますよ?


 「わ、わかる」


 俺は、必死に首を縦にふるう。

 

 「☆▲×□△〇」

 ――やっぱり、わかってましたか。でも、そちらの言葉はわかりませんねー。だから一つだけ。


 「ひ、ひとつ?」


 「☆×□▽〇▲」

 ――霧の谷のダンジョンに冒険者が来ないようにしてください。方法は任せます。いいですね?


 「わ、わかった」


 俺は、必死に首を縦にふるう。


 次の瞬間、つむじ風が起こり、メイド姿の魔物は忽然と消える。そして、かすかに声が聞こえる。


 ――嘘をついても、お嬢様があなたにつけた霧の谷のダンジョンの加護でわかりますからね?


 「・・・」


 俺は息をしてないことを思い出し、ゆっくりと息を飲む。


 (加・護・・・?呪いだろ)

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