族[蟲] 科[多] 名称[ジャイアントスパイダー] 推奨[D~] 出現[野山森――――――――闇] 注意事項[毒、糸、闇魔法]

 ◇族[蟲] 科[多] 名称[ジャイアントスパイダー]◇

  胴体は50センチくらいだが、長い足の端から端まで合わせれば300センチ前後になる。


 ◇推奨[D~]◇

  認識しづらい糸で作られた巣を掻い潜り攻撃することは現実的ではなく、討伐は推奨されていない。

  また、遠距離攻撃をした際には、闇魔法が発動するので注意が必要である。


 ◇出現[野山森――――――――闇]◇

  日の届かない薄暗い場所で発生する。


 ◇注意事項◇

  毒・・・牙から出る毒によって獲物の神経を壊し、呼吸以外を止めてしまう。

  糸・・・獲物を捕らえる粘性の糸で巣を作る。また、巣にかかった獲物に糸を吹きかけて行動を阻害する。

  闇魔法・・・遠距離攻撃をしかけたものに呪いがかかり、近づかなければならないという強迫観念を作り出す。



 ◇ウロク談◇


 ヒカリゴケが緩やかな光で点滅し、鬱蒼とする霧の中、どこまでもつづく谷の底を歩いていた。


 その頃の装備は錆びた鉄兜、解体用のナイフ、シャドウウルフの毛皮マントもどき、穴が広がった革の服だ。


 「おにぃちゃん。なんか糸あるよ?」


 「糸?どこだ」


 「おにぃちゃんの目のまえ」


 「ん?ん??んん?!」


 「「!」」


 よくよく見ると目の前に糸があり、糸をたどって目線を上げると微動だにしないジャイアントスパイダーが糸で作られた巣に張り付いていた。


 その場で辺りを見渡すと、霧の中あちこちにジャイアントスパイダーの赤い複眼が光っている。


 「エ、エルミナは糸が見えるのか?」


 「うん。よく見えるよ」


 「そう・・・か、悪いが先を歩いて教えてくれ。あ、その前にクッションはこっちで持つ」


 「おにぃちゃん、だいじょうぶ?」


 「心配するな。こうやってズタ袋の奥に入れると・・・」


 パッとクッションがたちどころに消える。


 「すごいすごい!どうやったの?!」


 「秘密だ。それより案内よろしくな」


 「けちー。後で教えてね」


 「ちょっと待て」


 俺は壁際にある光るヒカリゴケを解体用のナイフでゴリゴリと削り、エルミナに渡す。


 「わかりずらい糸は、一つまみくらいの少量ふりかけてくれ」


 「うん」


 先行するエルミナの後につき、エルミナが注意を促す所に気をつけながら、ゆっくりとゆっくりと進む。


 エルミナがかがんで歩くので、俺もかがんで歩くが下にも糸があり、ヒカリゴケがふりかかっている。


 時々、ドキリとしながらも、腹ばいになり、横ばいになり、進み続ける。


 ギシッ


 ジャイアントスパイダーが動く。


 (糸に触れたか?!)


 ギシッ


 ギシッ


 ゆっくりと俺たちとは反対方向に移動していった。


 動いているジャイアントスパイダーを回避するように、左や右に進路を変えて、ゆっくりと糸を掻い潜りながら、先へ先へと進んでいく。


 「ここからは、だいじょうぶだよ」


 「ふー」


 安堵の息が漏れる。ほとんど見えない糸を掻い潜り、触ったら一巻の終わりの緊張感は半端ない。


 「クッションちょーだい」


 クッションを渡し、エルミナのウォーターで喉を潤して先へ進む。


 ダンジョンの中という強迫観念から、仮眠すらとらずに先へ先へと進んでいく。


 しばらくすると古びたテントが立っており、エルミナに目線を送り、俺がゆっくりとテントへ近づいていく。


 ガッ


 突然、首の後ろから万力に挟まれたように締め付けられ、足がつかない高さに吊るしあげられた。

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