族[蟲] 科[多] 名称[オーム] 推奨[F~] 出現[野山森砂――土――――闇] 注意事項[土魔法、狂乱、毒、死体漁り]

 ◇族[蟲] 科[多] 名称[オーム]◇

  多脚蟲種とも呼ばれる。

  100センチ前後の体長がある。体を覆うキャタピラのような甲皮は鉄より硬く、体を丸めた際は槍すら通さない。


 ◇推奨[F~]◇

  武器による攻撃は甲皮によって損耗が激しく、魔法による攻撃、特に火魔法を推奨する。


 ◇出現[野山森砂――土――――闇]◇

  じめじめした場所によく発生する。

  移動速度は低く攻撃的ではないため、無理に討伐する必要はない。


 ◇注意事項◇

  土魔法・・・背中から石礫いしつぶてを放出する。

  狂乱・・・同族の血の匂いを嗅ぐと狂乱して一斉に襲い掛かる。

  毒・・・肉をゆっくり腐らせる。

  死体あさり・・・腐った肉を好み集まる習性がある。



 ◇ウロク談◇


 崖を落下しているさなか、ウロクの頭に声が響く。声はギルドオーブに触れたときと同じ声質だ。


 ――霧の谷ダンジョンへの侵入を確認。


 ――管理対象外の魔物の放り込みを確認。


 ――放り込まれた魔物はあなたの魔物でしょうか?


 (こっちは死ぬか生きるかってっときに、ごちゃごちゃうるせぇ!オークジェネラルなんてスキにしろ!)


 ――魔物はダンジョンマスターへ譲渡されました。100000DPへ返還されます。


 ――ダンジョンマスターから感謝のしるしに侵入者の落下ポイントに10DPの強力クッションが設置されます。


 ぽよよ~ん


 よ~ん


 ~


 その頃の装備は錆びた鉄兜、シャドウウルフの毛皮マントもどき、穴が広がった革の服だ。


 あまりの衝撃の柔らかさにびっくりして、辺りを見回す。崖の岩肌にはうっすらと光るヒカリゴケが緩やかに点滅している。


 「エルミナ?!」


 「ほぇ?」


 抱きしめているエルミナに声をかけると、間抜けな声が返ってくる。無事だ。


 「ふー」


 安堵し、ため息が溢れる。


 俺はゆっくりと立ち上がり、体に怪我がないか確認する。エルミナも立ち上がり周りをキョロキョロ確認する。


 「ここは?」


 「どうやら霧の谷のダンジョンってとこに落ちたらしい」


 「のぼるの?」


 「無理だろ~?どんだけ落ちたんだか・・・」 


 見上げるが、霧で先まで見通せない。


 「――?!な、なにかいるよ」


 俺とエルミナに緊張が走る。


 ヒカリゴケの明かりを頼りに、わずかにカリカリと音のする方向へ視線を集中する。


 オームがなにか動物の死骸を喰らっている。


 「大丈夫だ。オームは近づかなければ襲ってこない」


 ぎゅるるるるぅぅぅ~~~~


 「えへへ」


 「ズタ袋に板のように固い肉ならあるぞ。食うか?」


 「うん」


 「食いながら移動しよう。ここにいても仕方がないからな。ん?それ持ってくのか?」


 「うん。柔らかくて気持ちいよ」


 エルミナはとても愛らしく、生意気そうなヒヨコの形をしたクッションを抱きしめる。エルミナが抱きしめて、しわが寄ると、さらに生意気そうな表情だ。


 「ま、いっか。ほんじゃ、いくぞー」


 あちこちにいるオームをよけながら、適当に進んでいく。


 数が多く、油断していると足元にいるオームを蹴飛ばしかねない。


 「お、ここにもいる。注意しろよー」


 なるべく気の抜けた声色でエルミナに話しかける。俺もエルミナも武器も無しにダンジョンの奥にいるのだ。不安を感じるのは俺一人で十分だ。

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