第2章ディトナ

族[豚] 科[親] 名称[オークジェネラル] 推奨[C~] 出現[野山森砂―――――――闇] 注意事項[指揮、絶倫、(武術)]

 ◇族[豚] 科[親] 名称[オークジェネラル]◇

  オークより知能も腕力も高い。身長230センチ前後。

  オークの軍団を率いて街へと進軍する。


 ◇出現[野山森砂―――――――闇]◇

  憎しみを大爆発させたオークが上位種のオークに進化する。


 ◇武器防具◇

  発生して数日たったオークジェネラルは、瘴気によりバスターソード、鉄の大槍、鉄の大斧、大弓、鉄の大盾、鉄の鎧を作り出す。


 ◇注意事項◇

  指揮・・・オークの集団を自由自在に操る。

  絶倫・・・女性への筋力が3分の1になるが、かわりに女性からの筋力も3分の1にする。



 ◇ウロク談◇


 前日にあまりにもヒドイ物を胃に入れたので、宿屋で出された素っ気ない朝食がとてもおいしかった。


 その頃の装備は銅の剣、錆びた鉄兜、シャドウウルフの毛皮マントもどき、穴が広がった革の服だ。


 その日、冒険者ギルドで初めて正式なパーティー申請をする。


 パーティーを組んだ仲間の名はエルミナ。冒険者ギルドへの登録もパーティー申請と同時にしたくらいの駆け出しである。


 冒険者ギルドの受付からすぐに、“オークとの遭遇場所へ案内すること”の指名依頼を受けた。


 オーク討伐に向かう人々は騎士20名、Dランク冒険者15名だ。


 俺は馬に乗ったこともなかったが、エルミナが乗馬できたので二人で1頭にまたがっている。


 討伐隊はいろいろな道具を馬に乗せているが、俺とエルミナが跨った馬の荷物はほぼ食料だ。


 朝早くから出発したとはいえ、昼前には昨日徒歩で1日かかった橋に到着した。


 騎士が先頭で冒険者が続き俺たちが最後に橋を渡り始めたとき、次々に矢が放たれ、橋に火がかけられた。


 騎士は光属性の盾魔法で矢をはじき、冒険者は風魔法や剣で矢をはじく。


 橋に火がついているが、それで慌てているのは俺くらいだ。


 すでに橋を渡っている騎士たちを取り囲むように次々とオークが現れる。その数は討伐隊より多い。


 「突撃!!!」


 「「「おー!!!」」」


 騎士たちが一体となって突撃し、次々とオークを跳ね飛ばしていく。その突撃に巻き込まれないように冒険者も展開していく。


 橋を渡り切ってないのが俺たちだけになったとき、後ろから咆哮が聞こえる。


 「ヴヒイィィ!!」


 振り返ると渡ってきた橋の手前にオークジェネラルが鉄の大斧を肩に担いで悠々と構えている。


 討伐隊に助けを求めに行ってもいいが、それでは挟み撃ちになって被害が大きい。これでも冒険者のはしくれ。


 エルミナにオークジェネラルに向かうように促す。初めて乗った馬の上で戦闘ができるわけでもないので、手前で馬から降りて銅の剣を抜く。


 エルミナも馬から降りると、馬は手綱が外れた途端に火のついた橋から走り去っていく。


 「ごはーん?!!」


 エルミナが馬に積んだ食料に向かって叫んでいるが、それどころではない。


 オークジェネラルが鉄の大斧を構えて少し近づいてくるが、なにやら脚を引きずっている。


 よく見ると足には斬撃のあとがあり、ふと3日前に脚を切りつけたオークを思い出す。


 「まさか、俺に復讐とか考えてないよな・・・」


 ニヤァとねちっこい笑みが向けられる。


 「ヴヒイイイィ!!」


 間合いの外から大振りした鉄の大斧だったが、俺がとっさに伏せなければ胴体は切断されていた。


 背筋にゾッと悪寒が走る。


 「えい!」


 オークジェネラルにエルミナが突きを繰り出すが、回避もせずに、にやにや笑っている。むしろ嬉しそうにしているのが、死ぬほど気持ち悪い。


 大上段に構えて突撃する。


 オークジェネラルは、先ほどと同じように適当な大振りをするので、転げるように回避して後ろに回り込む。


 「やってられるかぁ!!!!」


 最初の攻撃で気づいていた。格が違う。


 せめてエルミナを逃がすために、オーバーなリアクションで逃げ回ってやる。片足が不自由なやつに捕まるほどエルミナの足は遅くない。


 森に向かって走るが、俺と同じ、いや、それ以上の速さで背後からせまる。


 (嘘だろ?!脚を引きずってたのは、俺へ思い出さすためだけのジェスチャーかよ?!)


 ズガッ!!!


 鉄の大斧が足元を吹き飛ばす!前方に転げるように回避し、ただただ、森の中、森の奥へと逃走する。


 バキッ!!!


 鉄の大斧が木を吹き飛ばす!吹き飛ばされ転げるも、森の奥へ、森の奥へと逃走する。


 次第に辺りの霧が濃くなっていく。


 ズガッ!!!


 わずかな気配を頼りに転げるように回避する。走って走って走り続ける。どうやら、先ほどの斬撃で鉄の大斧が何かにひっかかったようだ。


 走っていくと足元から風が吹いてくるのを感じ立ち止まる。


 「ねぇ!!」


 「うぉぉっ?!エ、エルミナ!」


 「おいてかないで!」


 「それよりアイデアがある。手伝ってくれ」


 それから数分後、俺は大声で叫ぶ。


 「腐れ豚野郎!!!俺はここだぞ!!」ぞぉ、ぞぉ、ぞぉ・・・


 すぐにガサッと音がし、霧の向こうからオークジェネラルが現れる。


 「かかってこい!腐れ豚野郎!!!」


 オークジェネラルは、のしのしと歩き徐々に走り出す。


 『スラッシュ!!』


 鉄の大斧で斬撃をはじき、俺へと詰め寄ったとき、オークジェネラルの足元の砂がオークジェネラルを飲み込む。


 命を懸けた罠。


 俺が今立っているのは崖の上。足元から風が吹いていたのは、崖下から吹き上げる風だ。逃げてる最中に気づかずに落ちていたら、笑い話にもならなかった。


 そこで、俺の生活魔法のブロックで崖のそばの土を砂に変え、エルミナの生活魔法のブロックで俺の足元だけ凍らせ補強した。


 本来、ブロックはレンガを作る生活魔法だが、俺のブロックは土を砂に変え、エルミナのブロックは土をカチンカチンに凍結させる。


 オークジェネラルの体重を支えられなかった崖べりの砂は、オークジェネラルを巻き込みながら落下していく。


 「どうだ!!!」


 「ヴヒイィ!」


 オークジェネラルが砂にまみれ落下しながらも鉄の大斧をなげ、俺の足場を砕いた。


 「?!」


 世界はスローモーションのように動き、俺は何もできずにオークジェネラルの後を追うように落下していく。


 「おにぃちゃ~~ん!!」


 近くの木に隠れていたエルミナが、崖を走り空中の俺へとダイブする。


 俺はエルミナに手を伸ばし、エルミナは俺に手を伸ばす。


 手がふれあい、エルミナを引き寄せる。


 せめてエルミナだけでもと、俺はエルミナの頭を抱きかかえる。


 俺たちは霧に包まれた深い崖の底へ底へと飲み込まれていく・・・。

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