【幕間】 族[精霊] 科[ヒト] 名称[マリア] 注意事項[魔王殺し]

 ◇族[精霊] 科[ヒト] 名称[マリア]◇

  精霊族には、ヒト科、ドワーフ科、エルフ科、アニマル科があり、もっとも特徴がなく、もっとも平均的な能力を持つのがヒト科である。

  マリアはチャノ街の繁華街で一番の美人である。


 ◇注意事項◇

  魔王殺し・・・最強を表す称号。



 ◇ウロク談◇


 川辺で二人身を寄せ合いシャドウウルフの毛皮にくるまり仮眠をとり、日が昇り木の板のように固くなった肉にかみつき、チャノ街に向けて出発した。


 その頃は愛嬌のある連れがおり、装備は銅の剣、錆びた鉄兜、シャドウウルフの毛皮マントもどき、穴が広がった革の服だ。


 エルミナはもぐもぐと口の中で板のように固い肉を楽しんでいる。


 急げば、今日中にチャノ街につくため、速足で向かう。


 複数の街道が合わさり、旅人が見え始めると、徐々にエルミナのテンションは下がっていく。


 チャノ街の門番の顔がわかるくらいの距離になると、とうとうエルミナは俺の裾をつかんで止まってしまう。


 「どうした?」


 「――で」


 「ん?」


 「・・・一人にしないで」


 「は?」


 「・・・一人にしないででよー」


 「な、何いってんだ??」


 「ウロク言った・・・チャノ街までって・・・」


 「そりゃ街なら安全だろ?」


 「やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!一人にしないででよー!!!ぁおあぁぁおあわぁーーー!!!」


 俺たちの横を通り過ぎる周りの視線が痛い。


 (これって、俺とパーティーを組みたいってことだよな?まぁ、戦うときの連携も悪くなかったしなー)


 「し、しかたねーなー。わかったよ」


 「っぼんぉんと!!うれしぃ!!!」


 ガバッと鼻水だらけの顔面を俺に押し付けてくる。周りからは、よっご両人!とか二度と泣かせるんじゃないよ!とかおめでとう!とか言ってくる。


 「ご祝儀だ。先に入っていいよ」


 「はぁ?」


 よくわからないが、先に通してもらえるのはありがたい。


 門番が話しかけてくる。


 「ご祝儀でただにしてやりたいが、そうもいかん。紹介がないなら一人銅貨50枚。二人で銀貨1枚だ」


 (たかっ?!)


 速攻でパーティー解散を考えたが、どちらにしろ入らないとならないので、グッと飲み込み銀貨を払う。


 「で、チャノ街に何の様できた?」


 「オークの報告と冒険者ギルドの拠点の移動です」


 「「「はっ?!」」」


 「呑気にちちくりあってる場合じゃねーだろ!とっととギルドに報告しにいけ!!」


 周りの目が一気にかわるほど、オークとはやっかいな魔物なのだ。


 ギルドに入り、中央にある巨大なルビー色の球体であるギルドオーブに触れて拠点を移す。


 受付に移動して、オークの報告をするとオークの証拠はあるのかと聞かれたので、少し考えて、馬車の登録証を渡す。


 受付は少し真剣になり、携帯オーブを取り出しマップを表示させるので、街道を指をさし、ここら辺で5体のオークにあったと伝える。


 馬車の登録証を届けた代金に銅貨10枚を渡され明日の早朝に冒険者ギルドへ来る指示を出される。


 報告が終わったころには日は完全に落ち、ライトの魔法で照らされた街頭は夜のにぎわいを見せている。


 俺たちは街を歩いて飯を食う店を探していると、いい匂いがする一軒の食事処を見つけた。


 その店は、とてもいい匂いがするのに、街のにぎわいとは正反対に静かだ。


 厨房から出てきた女性は、ハッとするほどの美女だ。


 「いらっしゃい。二名さまね。好きな席にどうぞ」


 俺とエルミナは適当な席につき、大皿料理を3品注文する。


 エルミナには足りない量だが、値段のわからない初めての店で冒険はできない。腹が満たされなければ、屋台にいけばいい。


 しばらくして、焼いた麺、餡かけで絡めた肉と野菜、ジャガイモをベースにしたスープが並べられる。


 「ごゆっくり」


 俺とエルミナはにおいだけでは我慢できない!待ってましたと、料理を口に放り込む。そのとたん、エルミナは持っていたフォークをテーブルにそっと置くと死んだ目になった。


 今の俺は、そんなエルミナの気持ちを手に取るように理解できる。口に入れたその物体の触感は最悪で、しかも、香りはいいのに噛めば噛むほど生臭い味が口に広がっていくのだ。


 「ふふふ」


 エルミナは早々に戦線離脱したが、とびっきりの美女に微笑みを向けられた俺には逃げることはできない。時間をかけたら負けると判断し、ガツガツと次から次へと飲み込むように食べていく。


 完食してそうそうに席を立つ。


 「わたしはマリア。この店の主人よ。よかったらまた来てね」


 銅貨6枚とリーズなぶるな値段だったが、俺たちは2度とこの店にこないだろう。この夜、宿屋のベットで苦しんだ痛みは絶対に食いすぎからじゃない!

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