族[蟲] 科[無] 名称[ミニワーム] 推奨[F~] 出現[野山森砂――土――――闇] 注意事項[土魔法、大喰らい]

 ◇族[蟲] 科[無] 名称[ミニワーム]◇

  脚無し蟲種とも呼ばれる。

  ミニワームとミニがついているが、200センチ前後の体長がある。ワームに進化すると10倍以上のサイズになり町を襲うため、町では見つかった段階で討伐対象になる。

  目はなく口から胃にかけて無数の歯が生えており、内側に向いた歯が脱出を阻むため、飲み込まれるとまず助からない。


 ◇推奨[F~]◇

  Fランク冒険者から討伐可能となっているが、地中から襲ってくるため、ソロで討伐するのは難しい。


 ◇出現[野山森砂――土――――闇]◇

  土や砂のある場所ならどこでも発生する。また、土属性に強く影響をうけるため、土属性のつよい地域では注意が必要である。


 ◇注意事項◇

  土魔法・・・土の中を移動したり、口から石礫いしつぶてを放出する。

  大喰らい・・・丸のみにできるものなら何でも口に入れ、大抵のものはバキバキに砕きどろどろに溶かしてしまう。



 ◇ウロク談◇


 俺が寝泊まりしているコロニーのボスであるバーバラが冒険者としての指導をしてくれることになった。


 その日だけ・・はペアで、装備は銅の剣、壊れた木の兜、革の服だ。


 バーバラは俺より2つ年上の14歳で、Dランクの女冒険者だ。俺と同じ精霊族ヒト科で俺より少し背が高く、筋骨隆々としている。


 「いいか。今日は特別にお前の指導をしてやる。森沿いを歩き出てきた魔物との戦いを指導してやる」


 「ありがとうございます」


 ここのところ、ろくなことがない俺にとって、願ってもない話だ。


 先輩冒険者のためになる話を聞きながら森沿いを歩き続けていると、それは急に飛び出してきた。


 違和感のある魔力のゆがみを地面に感じ、思わず飛び退いたところミニワームが飛び出したのだ。ミニワームは空中で反転すると再び土の中へと潜っていく。


 「ミニワームだと?!」


 バーバラが思わず叫んで俺を見るのも理解できる。ミニワームにソロで出会って五体満足で討伐できる可能性は低い。俺にはDランク冒険者がついているが、バーバラにしたら駆け出し冒険者がついてるだけでソロと変わらない。


 俺もバーバラも一歩も動かずに意識を集中する。


 こちらも魔力を感じることができるように、ミニワームにも魔力を感じることができるが、移動して音を地面に伝えるよりは動かず集中したほうが回避できる可能性が高い。


 「おい。動け」


 「はぁ?」


 「このままじっとしているわけにはいかねーだろ?」


 「いやいや。俺、死んじゃいますって・・・」


 「大丈夫だ。飛び出したところをあたいが仕留める」


 飛び出した時点で、俺の足はミニワームに持っていかれてるんだが。口答えできる立場でもないし、解決策があるわけでもないので、覚悟を決めてゆっくりと踏み出す。


 ゆっくりと1歩、1歩と進んでいく。


 魔力のゆがみを感じて飛び退く。


 『スラッシュ!!』


 バーバラの斬撃が飛びミニワームの腹に傷を負わせる。


 「スラッシュは剣と体を一体にして斬撃を行う。やってみろ」


 そんなことは言われなくてもわかっている。俺のスラッシュ成功率は50%程度。再びミニワームは土に潜ったが、傷を負っているおかげで魔力のゆがみを感じやすい。


 ミニワームを釣るために、1歩、1歩と進んでいく。気配を感じミニワームが飛び出すと同時に攻撃をしかける。


 「スラッシュ!!」


 ポコンと銅の剣がミニワームの腹を叩くと、ミニワームの口から胃液がほとばしり、バーバラの革の服にふりかかる。


 ジュウッと革の服を溶かし、アチチ、アチチとウォーターでミニワームの胃液を流すが、革の服には乳がこぼれそうなほどの穴があいていた。


 バーバラはゆっくりと表情の消えた顔を上げて俺をにらむ。


 俺は空気を変えるために、再度、ミニワームを釣り攻撃をしかける。


 『スラッシュ!!』


 今度の斬撃はきれいにミニワームに決まり、濃い瘴気を吐いて、銅貨10枚分はありそうな魔石を残して消滅する。


 ほっとする間もなく、すぐにバーバラからびんたが飛んでくる。どうやら、空気は変えられなかったようだ。


 「おい。脱げ」


 「へ?」


 「てめーのせいで、服に穴があいたんだろうが?交換だ」


 俺の革の服は、まだ1年くらいしか使っていない。バーバラの革の服はどうみても3年は使っている。割に合わない。こう見えても俺はきれい好きで、ゴブリンにくそをつけられた木の盾だって、夕暮れまで川で洗った。バーバラの着ている革の服を着たいとはこれっぽちも思わないが、しぶしぶと革の服を交換した。


 バーバラは落ちていたミニワームの魔石を拾い町の方に歩いていく。俺は思わず声がでる。


 「あっ・・・」


 「これは指導料だ」


 ソロだったら死んでいた。だからと言って納得できない気持ちがあり、バーバラが見えなくなるまで、その場を動くことはできなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る