山村聡太郎

仮説が証明された。


実証は今の見え方の中での解でしかない、新たな見え方が加われば解は破綻してしまう。

だから判明する度に右往左往することはない。


水希は、僕や日下とは違う見え方ができる。

彼女がチームに加われば、彼女の見え方が加わる。

そしてまた新しく解が導き出されるはずだ。


実証の結果を踏まえて、チームのみんなは夜通しで今後の対策を話し合っているのだろう。

勧誘後の水希の処遇、勧誘失敗した場合は水希の処分、彼女の父親の資料調査と管理。

滝弁天の影響範囲と効果の検証、僕の過去の洗い出しそのための聴取、山村年男やアリスの再調査、ショゴス出現の再検証。


僕がこの家に住めなくなる可能性もあるし、また日本から出ていく可能性もある。


まあ直ぐに結論が出る話しではないし、もし水希が入会すれば、今後は彼女の能力が不確定要素になり、チームが振り回されるのは必至だ。

今日の会議で決まることは殆どが実行されないまま事態は悪化していくだろう。


----


僕は会議に参加できずに寝室で休んでいる、僕の警護のため日下もリビングで待機している。


日下も僕と同じで何時も会議には参加できない、僕とは理由が違うけど。

会議はきっと夜明け頃まで続く、日下は会議の終了報告を待って眠れない夜を過ごすのだろう。


僕は昨日遅かったからか、睡魔に抗えそうにない。珈琲を飲んでも効き目ない。

日下も一緒に珈琲を飲んだが何時も通りの無表情だ。そして何時も通り会話もない、彼女が家政婦になってそこそこ一緒にいるが僕のことは未だ苦手なようだ。

お祖父さんへの心酔を僕に投影している節があって、どうも打ち解けてはくれない。

まあ僕も近視で目つきが悪くて口数も少ない、親しみ易いとはいえないから仕方ないか。


水希には明日、土曜日に話すに当たっての条件を提示する予定だ。今会議ではそのことも話し合われている。

なので寝ずに報告を待とうと思っていたが、諦めて寝よう。


全ては明日になってからの話しだ、今は何も決まっていないし、何も始まらない。

僕は睡魔に身を委ね、夢の中の門を開く。(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

プラネテス・レポート【適合者シリーズ3】 東江とーゆ @toyutoe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ