会議3

上杉の説明を元に、監視警護に必要な情報を共有化する質問や意見交換が始まった。


意外にも最初に発言したのは比留間だった、彼は寡黙で本来淡々と仕事を熟すタイプ。

ミーティングやディスカッションでも発言することは少ない。

この実直な中背細身の男は自分を落ち着かせるように短髪をさすってから話し出した。

「自分の認識ではショゴスは、太古の地球を支配した上古の種族が創りし奴隷だと聞いております、創造主のコントロールに抗い反乱した挙句、上古の種族を滅ぼしたとも伺っています」

「そのショゴスが出現したという滝弁天なる霊場は上古の種族の遺跡か何かなのでしょうか?」

慣れない言葉を選びながら話しているのが、痛いほど伝わってくる。


上杉と目配せをして、上杉の了承を得た中島が答える。

中島は中肉中背の美丈夫で弁も立つ、自他共に認める上杉チームの参謀格だ。

「外側の神の内『彼方のもの』に従い、取り巻きとして無数に屯する怪物がショゴスだ、ショゴスは様々な形態をとって外側の世界から地球に召喚される、地球で人間が支配できる『彼方のものに奉仕する種族』の中では、最も恐ろしい存在だ」

「何故なら、ショゴスは特徴や形状は違えど共通して、物理的な破壊や殺傷ができないからだ、ショゴスは特徴や形状が千差万別で、ショゴスを召喚した者でも目の前の怪物がショゴスか判別ができない」

「年男がナイアーラトテップの神託に従い、適合者である聡太郎様を触媒に呼び出したショゴスはこの怪物のことを示している」


「一方、比留間が知っているショゴスは上古の種族が自ら創り出した『卓越した労働力を有す理想的な奴隷』に対して、外側の神『彼方のもの』に付き従う半神的な取り巻きを示すショゴスという表現を当てたものだ」

「自らが創りし奴隷にショゴスと名づけた上古の種族の意図に『神が如く振る舞うべしといった傲慢の発芽』がなかったとは言い切れないが、それを確認できる者はいないだろうね」

「なので今回話題に上がっているショゴスは上古の種族とは関係がないクリーチャーで、霊場は上古の種族の遺跡ではない」


続いて、セミロングをアップにまとめた女性が発言する。

「つまりその滝弁天?とかいう霊場に聡太郎様が立ち入らないように監視する必要があると考えていいの?」

舎人は態とらしく顔をしかめて切れ長の目を細める「そんな怪物が出てきたら、わたしたちでは太刀打ちできないじゃない?」

彼女はフレームのない眼鏡越しに、周囲の反応を伺う。


肩幅の広い中背で『頭のいいゴリラ』と影で呼ばれている北条チーフが舎人に答える。

「そもそも監視対象の聡太郎様を危険に晒す訳にはいかない、確かに彼は現段階では協会にとって未知の脅威であるが同時に総裁の御孫であらせられる、総裁が私情を挟むことはあり得ないが、だからといってそれが礼を欠いてよいという理由にはならない」


「絶対に聡太郎様を滝弁天に近づけてはならない」北条が厳命を発す。

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