20.失われた時間

 どれくらい時間が経ったのだろうか。息が切れて、走ることにも限界が近づいてきた。景色は相変わらず狂ったままだ。


 この世界のどこにりずがいるのか、また見つけられたとしてこの空間に出口などあるのか、何も分からなかった。


 呼吸を整えようと足を止める。膝に手を当て、下を向く形になる。自分の息の音だけがうるさく聞こえた。


 どうしようかと思い悩んで、ふと、しらたまの存在を思い出した。もう一度電話をかけようとスマートフォンの画面を開いた。日付を見て、自分の目を疑った。


 大学を出た時からすでに、一ヶ月が経過していた。


 どういうことだ?感覚的には、まだ数時間ほどしか経過していないというのに。俺が「今日」だと思っていた日にちが、そもそも間違っていたのか?いやそんなはずはない。


だとしたら…


 頭の中をぐるぐると思考が巡る。そうしているうちに、画面上の日付の数字がまたひとつ繰り上がった。


一日経過。


 俺は諦めて、スマートフォンをズボンのポケットへとしまった。

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