12.彼女の運命と傷痕


 なるほど。だから昨日、前世がどうとかいうメッセージを送ってきたのか、と俺は一人納得した。


「ざんねんながら くわしいことを おはなしすることは できません。 ヨーゼフさん ごほんにんが いつか 『ゆめ』で ごらんになる ひが くると おもいます。」


 首を横に振りながら、しらたまはそう打ち込んだ。


「ですが」


と彼は続けた。


「あなたが かのじょと 今世 であえれば かのじょの 因果を かえられる かもしれません。」


 因果?どういうことだ?

俺は画面の文字を見つめて首をひねる。


そして


「どうか かのじょを みつけて ください。 きっと あまり とおくない ばしょに いるはずです。」


 ぺこり、と頭を下げる。

いや、そう言われても。


 あまりにも情報がざっくりとしすぎている。これではどういうことなのか、さっぱりわからないではないか。


「なあしらたま、もう少し詳しく教えてくれないか。これじゃ、何がなんだか分からない。」


交渉してみる。すると、


「かのじょの からだのきずを ごらんに なりましたか?」


とメッセージが返ってきた。

驚いた。しらたまもその事を知っていたのだ。


「ああ、見た。」


 初めて彼女を見た時の「夢」を思い出す。正直、シチュエーションに混乱して細かいところまで見られていた自信はないが。


 だが、彼女の傷は、ただの擦り傷といったものではなかった。手術跡のような、鋭利な刃物で切断されたような傷痕。


 ひょっとして、あれは。


 俺が見つめていると、しらたまはこくりとうなづいた。


「おねがいします。できるだけ はやく かのじょを みつけてください。ぼくが つたえられるのは ここまでです。」


 もうこれ以上は情報をくれそうにはなかった。彼のひげも心なしか下を向いて、申し訳なさそうな表情を浮かべている。


「分かったよ。ありがとう。」


俺は、しらたまの頭を撫でて微笑んだ。

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