第26話 選抜の決定

1.5km走も半分に差し掛かった頃俺は京姉に言われた通り一位を保っている。というか京姉が怖すぎて少し飛ばしすぎた、良く考えればギリギリで一位でも良かったんじゃないかと。


俺の予想だと二位は多分恒星だと思うが後ろを振り返っても見えやしない。後ろを振り返っても見えないと言うならもうガチで走ってもいい。いつついたなんかは京姉にしか分からないはずだしね。


「早く終わらせたいし少し頑張りますか」


そんな独り言をこぼし徐々に俺はスピードを上げて行った。



「……なんで白石のクラスが出ているんですかね」


俺が学校の校門をくぐって京姉の所まで後少しというところで思わぬアクシデントだ。他のクラスも今日の一、二限目が練習なんて聞いてもいないんですけど。


バレないように少しスピードを緩めようとしたその矢先、京姉がこちらをギロりと見た。


あっ、これ緩めたら瞬殺の合図じゃんちゃんと走ろ。


京姉にもバレたことで俺は誰だかだけバレないように俯きながら走る事しか出来なかった。


一瞬白石と目が合った気がしたが気の所為だろう。


「予想以上に速かったな。まさかここまで真剣にやってくれるとは思ってもいなかった」


京姉は満足気な表情で俺の頭を撫でていた。なんで今そんなことをするかと言うと、白石のクラスも校舎周りを走りに行って、今は俺と京姉しかグラウンドに人がいないからだ。


「京姉、俺も一応高校生だから頭を撫でるのは控えてくれると助かるんだけど」


「んなの気にするな」


ニコニコしながら撫でていた手をパッと離していつものクールの表情に戻った。京姉が見ている方を見ると思ったよりも早く二位の恒星が校門をくぐっていた。


「あいつもなかなか速いな」


「当然と言えば当然だろう」


京姉は俺の方には目を向けず口だけを動かす。


「一条の身体能力は少し見ただけでもわかるが化け物だ。多分小さい頃から負け無しだっただろう。だが今は違う、歩がいるからな」


京姉の言う通り恒星の身体能力は化け物じみている。中学の時も体力テストでは学年一位だったし負けなしだった。


それが今、身体能力がいいなんて思いもしていなかった俺に完敗なのだ。不満に思うところは山のようにあるはずだ。


そんな事を思いながら立っていると恒星が京姉の所まで着いた。


「おつかれ恒星」


俺はそう言ってさりげなく水を渡した。


「おう、サンキュー……ってちげーよそうじゃねー!」


上手くいくと思ったがそんなに甘くはなかった。あえて普通の対応をしていつも通りの時を送る作戦が……。


「歩めっちゃ速いんだな!驚きを隠せないぜ!」


の割にはめっちゃ笑顔だけどな恒星。そんな事を思いながら俺もつい口元がニヤついてしまう。こいつはどんなやつでも良い成績を残したら自分の事のように喜ぶことの出来る本当に良い奴だ。しかもそこにイケメンと。なるほどなるほど、これはあれですねパーフェクトヒューマンってやってかねハハ。


「まあ足には自身はあったんだが、俺目立つのは好きじゃないからな」


「なるほどなぁ。でももったいねぇ!もっともっと一緒に頑張って次の体育祭頑張ろうぜ!」


「お、おうそうだな」


あまりの熱さに少し驚きながらも一応返事だけはしておく。


そのあとは3位、4位とどんどん到着していき最後尾の人が来て1.5㎞走は終わった。女子の方も少しずつ顔が見えてきて一番前に二人が見えた。何となく想定はしていたが同着1位は晴と晶だ。本当に女子なのか?!と目を見張る男子もいるがアイツらも恒星と同じ化け物なのだ。


「ねえ私の方が速かったよ」


「うちの方が速かった!どうどう先生!」


銀髪の綺麗な髪を揺らしながら京姉に詰め寄る。京姉は見るからにだるそうにしながら2人の肩に手を置いた。


「どっちも同じだ。よくやったな」


この手の事は慣れているのかダルそうにしながらも楽になるように話をつけてクラスメイト全員の前に京姉はたった。


水を飲んでいるものもいれば膝に手を着いて息を切らしている奴もいる。京姉の手を抜くなっていう言葉がきいたのか誰一人手を抜いてはなさそうだ。


前に立った京姉は少し声を大きくして話し始めた。


「まずは1.5㎞走おつかれ。最初に言ったように男女別で上位二人が1.5㎞走を走ってもらう」


クラスメイトは全員静かに聞いている。


「男子は神崎と一条、女子は鈴宮姉妹に決定だ。次の選抜も頑張ってくれ」


京姉はそういって次の選抜の準備をしに体育器具庫にいった。そして俺と恒星、晴と晶と上位の男子グループ以外は今のメンバーについてのざわめきが出ている。


それはもちろん俺が選ばれたからだろう。クラスで全く目立っていなかったやつが実はめっちゃ速かったと。ゆういつの救いはまだ入学してそれほど日が経っていないことだげだ。


「お前足速かったんだな」


「すごいね神崎くん!」


男子、女子と次々に聞きに来るやつや褒めてくるやつとかがいっぱい来た。同学年のやつに褒められるのなんて久しぶりすぎてあまり実感がない。


そんな事が少し続いていると白石が校庭の中まで走ってくる。白石達のクラスもちょうど今1.5㎞走をやっているらしい。どのクラスも体育祭はガチのようで選抜のやつはみんな張り切っている。


それより白石は速すぎる。まだ後ろに誰も着いてきていないのだ。運動神経抜群とは聞いていたがまさかこれ程とは思わなかったかな。


「なんだ歩白石さんに見とれてんのか?」


「違うはアホ。あいつやっぱり凄いんだな」


茶化してきた恒星に対して率直な感想をいった。


「だなぁー俺もあそこまで速いとは思わなかったわ」


恒星も分からなかったとすると逆に疑問だ。恒星程の顔が広いやつだと嫌でもそーゆー情報は入ってくる。確かに白石の運動神経は抜群とは聞いていたとは思うがあれほど速いならもっと話題になっている。手を抜いていた?いやあいつに関してはありえない。そんな疑問を抱きながら京姉にクラスメイト全員が呼ばれ残りの選抜を終わらせた。


俺が出る種目は4×100m、100m走、1.5㎞走だ。他の種目も本気でやる予定だったが京姉が言っていたのはたんなる脅しでそれぐらいしないとお前は1個も出ないから、らしい。なんともビビらしてくれる。恒星は俺とほぼ同じで200m走が俺とは違う種目で走る。


晴と晶は1.5㎞走以外はやる気がなかったのかそれ以外は選ばれていない。


今は教室に戻る途中で俺は白石と話していた。















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高校からの青春は思ったよりも甘々だった 七山 @itooushyra

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