第25話 体育祭の選抜

今日は体育祭の種目決めの日で二時間体育の時間が設けられている。いつもの体育なら担当教師がつくが今日はクラスの人達をどの種目をやるかきめるらしいので京姉が担当だ。


定期テストの前だがこの学校は色んな行事に力を入れるらしい。だから今回の体育祭もどのクラスもガチでやるらしい。


そして今の俺、晴、晶は京姉の前に棒立ちしている。口も動かさず毒の刃をグサグサと突き刺されている。その毒の刃がほぼ全て俺に向かっているのは気のせいだろうか。気のせいであってくれたのむ。


「で、わざと忘れたんじゃないんだよな三人」


さっきのかっこよさとは別にこれは怖すぎませんかね。一回でも反論してみろ、抹殺されんぞ。


まあこれを乗り越えれば俺は体育祭の目立つ種目に立たなくても良くなる。なんたって体操服を忘れたんだからね、運動が出来るわけないじゃないか。


心の中で怖さと嬉しさが交わっているこの複雑な気持ちをどうにか腹の中に沈めながら俺は京姉の話を聞いていた。


「「違う違う、わざとじゃないよー」」


晴と晶は普段通りの口調で京姉に言った。この威圧を前に良く普段通りでいられるな尊敬しますよまじで。


「俺もわざとじゃないです」


できる限り真剣な顔と口調で俺も京姉に言った。京姉も俺らの顔をじっと見て本当だと判断したのかさっきよりも少し表情が和らいだ。といっても怖いのは怖いんだけどね。


「まあ忘れたのを怒っても仕方がない。今日は制服のままでやってくれ」


「「はーい!」」


晴と晶は笑顔で元気な返事をしてグラウンドの真ん中まで走っていった。制服のままでやってくれなんて言われるとは思ってなかったけど、手を抜けばなんてことない。


そんな事を思いながら俺も晴と晶に続いて歩きだそうとした。そう、歩きだそうとしたんだ。


「ちょっとまて神崎」


がしりと肩を掴まれて呼ばれた。


「な、なんでしょうか?」


「まさかとは思うが手を抜いてやろうとか思ってないだろうな?」


口には出ていないが今の俺は漫画で「ギクッ?!」って感じのやつがバリバリ心の中で出ている。なんでこの人すぐに心の中呼んじゃいますかね。てか俺の周りにいる人心読むのうますぎませんか?


「この学校の体育祭はクラス対抗なんだ。わかってるよな?私は完璧主義者なんだ、もちろん体育祭でも総合優勝を目指している。これが何を指しているかわかるよな?」


言葉のガトリングを浴びさせられた俺はもうボロボロだ。京姉に反論するという事は今の俺の辞書には乗っていない。


「全て一位取ってきます」


「よろしい」


そう言って京姉はクラスの連中が集まっている場所に足を運んで行った。


「はぁ、なんでこんな事になってしまうんだ」


そんな独り言を呟きながら俺も京姉の後に続いた。


クラスの連中が集まっているところに俺も着くと京姉が朝礼台に立って視線をあつめる。


「みんなも知っていると思うがこの体育祭はクラス対抗だ。もちろん総合優勝を狙っている」


「「「「「うぉぉおおおお!!!!!!!!!!!」」」」」


クラスの体育会系の男子連中が雄叫びをあげた。どんだけ優勝したいんですかねあんた達。


「そしてその総合優勝を最も簡単に取る方法はただ一つ」


そう言って京姉は人差し指を立てて少し時間を置いてからまた口を開いた。


「全ての競技に置いて一位を取る事だ」


「「「「「うぉぉおおおお!!!!!!!!!!!」」」」」


ちょっともううるさいやめて、わかったから嬉しいのわかったからね。


「そして今日はその種目選びをしてもらう。これは選手を決めるための選抜だと思ってくれ」


京姉は朝礼台から飛び降りそのままグラウンドの真ん中へ行った。


「この選抜はクラス全員参加のやつではなく、クラスを代表してやるやつを決めるものだ。手抜きは許さないからしっかりやってくれ」


全員参加の者とは別に100m走、200m走、4×100m走、1.5km走、高跳び、走り幅跳びと六種目ある。4×100m走と1.5km走以外は男女合わせてクラスから二人までしか排出は出来ない。この六種目は何回も同じ人が出ていい事になっている。


「それではまず男子、女子に別れて1.5倍km走をやってもらう。学校を外周して私のところに速く帰ってきたもの先着二名が選手だ。まずは男子早く位置につけ」


京姉はキビキビと指示を飛ばし俺たち男子は位置に着いた。


「手を抜いたやつには罰があると思えよー」


それはもう完全に俺に向けて言ってるんだね?まあさっきやりますって言っちゃったしやるけどさ。間違いなくこの二時間が終わったらクラスの連中に驚いた目で見られんるんだろうな。


「あゆーがんばってー!」


「二位だったらジュース奢りだからねー!」


ふむふむ。レースは始まる前から始まってるとはこういうことかな?何やらさっきから俺の周りの人達の殺気がすごいんだけど?


そんな俺の心境なんてしったこっちゃないという表情で京姉は手を挙げだ。


「それでは始める。スタート!」


その合図でクラスの男子はいっせいに走り出した。走る時は前向いといた方がいいと思うよ!なんでみんな俺ばっかり見るのかな?


レースが始まっても一向に収まらない殺意に呆れながら、俺も走った。






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