第23話 美少女は勘がいい。

中庭のベンチに俺は三人の美少女と共に座っていた。あんのてい周りからの視線は強烈なもので、俺じゃなければすぐに逃げ出していくだろう。


「それで、白石と晴と晶は知り合いなのか?」


まず最初に聞きたかったことはこれだった。晴と晶は昨日ここに来たばかりなのだ。


いくらどちらともコミュニケーション能力が高いからといって、一日でこれほどまで仲良くなれるとは思えない。


聞かれた晴と晶は妙にニヤニヤしていて、白石の方を見ると意外なことにニヤニヤしていた。


えっ、何この団結力。俺ハブられてません?


「お隣さんだったんですよ」


「お隣?」


思わずオウム返しをしてしまった。マンションの部屋がお隣ということか?いや、でも昨日見てなかったけどな……。


って、昨日は白石俺の家に来てなかったか。


「部屋が隣だったのか?」


「そうそう!そうなんだよォ」


晶が謎のハイテンションで答えた。超笑顔じゃねぇーか三人とも。


……やっぱり俺ハブられてません?


「それで今日はそれで相談がありまして」


急に白石が真剣な面持ちになったと思うと、晴と晶も同じように真剣な面持ちになった。


「相談ってのは?」


思い当たることがひとつもない俺は直接聞くことしか出来ない。


白石が言いにくそうにしていると、晴が先に口を開いた。


「はーちゃーんが毎日ご飯を作りに言ってるんでしょ?だから私たちも手伝おうかとねー」


「俺としては作って貰えることは嬉しいが、めんどくさくないか?」


「それならいつも一人で作ってるはーちゃんなんてもっとめんどくさいよ」


晶が間を挟まずいってきた。おっしゃる通りで……。


「でも本当にいいのか?」


いくら昔なじみと言ってもご飯を作って貰うのは少し気が引ける。もう昼ごはんつくってもらっている時点で何言ってんだってことになってるけど。


「「全然いいんだよ〜」」


晴と晶は揃って承諾をした。そう言って貰うと、俺は断る理由なんてない。


「ならよろしく頼むよ」


外面的には平然と装っているが、内心はかなり緊張している。


だって俺の家に美少女が三人だよ?!!?普通の男子高校生だと理性崩壊なみでしょ!ねぇ?!


と内心で叫びながら外面は三人で作ったと言っていたサンドイッチを食べていた。



三人で昼食を食べ終えてベンチにもたれかかっていると晴が俺に聞いてきた。


「それで作りに行くのはいつからなの?なんか一週間どうのこうのってはーちゃんが言ってたけどー」


もうそこまで話していたのか。また嘘をつくなんて心が痛いなぁ。


「一週間後にしてもらえると助かる」


「はいよー」


深くは聞いては来ず、そのまま次の話題に変わった。これが晴と晶と小学生の時から一緒にいた理由の一つでもある。相手の言いにくそうなことは勘ぐりせず、すぐに話題を変えてくれる。


ほんとに何回も助けられている……だが逆に言うと、言いにくいと言うことはバレているということ。恐ろしいな……。


それからはちょっとした話題で美少女三人組は盛り上がっていた。俺は殺意で盛り上がっている視線をどうにか交わす激戦をして、昼休みを終えていた。


五時限目が終わり、今は六時限目。社会の担当教師である京姉が先生の時間だ。


だと言うのに……。


「頼む晴、晶起きてくれ……。このままじゃ俺が殺されかねない」


この六時限目も晴と晶がこれの肩にもたれながら、可愛らしい寝息で寝ている。


理性を削られながら京姉の殺意じみた視線もある。クラスの中でよく刺される視線ではなく、「授業中に寝ている二人をよく寝かせているな」みたいな感じの視線だ。


俺は目を逸らしながらも二人を起こそうと努力はしていた。しかしこれほどまで気持ちよさそうに寝られては起こそうにも起こせないのだ。


そんな事を考えていると右隣の晴が肩から身体を離した。俺は嬉しさに耐えきれず笑顔になったと思われる顔を隠そうともせず晴の方を向いた。


でもそんな俺の嬉しさは一瞬にしてクラスの男女全員の喧嘩を買うことになった。


「あーゆぅー」


寝ぼけたような晴は身体をもう一度俺の方に寄せて、手を晶の方まで伸ばして抱きついてきた。


「ばっ……!」


突き放そうとしたが手は塞がれており、俺は何も出来ず、クラスの連中は俺と晴の声に反応してか一人、二人とこっちを見ていく。


俺は一人に見られた瞬間終わったなと思った。思っただけならまだいい、これは現実になるのだから。


クラスの視線を無視して俺は唯一わかってくれるだろう、イケメンの恒星に目をやった。


恒星は笑顔を隠そうともせずクスクスと笑っている。


己、恒星覚えておけよ。


手を塞がれては何も出来ないと判断した俺は黙って京姉の話に耳だけ傾けて下を向いて授業を乗り切った。



帰り支度を終えて帰ろうとすると両腕を掴まれて俺はとどまった。


後ろを振り向くと二人の美少女に掴まれている。もうクラスの視線は気にしないからな……。


「どうした二人とも」


「一緒に帰ろ!はーちゃんも連れてくるから!」


そんな事をいって晶は晴を残して白石を呼びに行った。


「昇降口まで行くよー、そこで待ち合わせしてるからぁ〜」


気の抜けた声で晴は歩いて行く。まだ眠たいのか目を擦りながら歩いている。


先に出た晴に追いつき、その隣に並んだ。


「ねえあゆ?一つ気になることがあるんだけど聞いてもいい?」


顔を近づけて上目遣いで聞いてくるはーちゃんに少しビクッとしたが、平然を装って頷いた。


「私たちの担任の先生さ、なんか見覚えない?」


「え?」


思わず変な声が出てしまった。まさかそんな事を聞いてくるとは思わなかったから……。


「俺はここに入学して初めて知ったんだけどな」


「なんだろうね、なんか小学生の時から知ってる感じがしてさ昨日晶と話してたんだよ」


背中に妙に冷たい汗が流れる。どうやってここを抜けるのがいいのか、別に言っても問題じゃないんだろうか。など色んな事が俺の頭の中に過ぎる。


「ま、あゆも知らないって言うなら勘違いかもねぇ〜」


そう言って晴はこの話を切った。それからは他愛ない話をしながら合流場所まで行って四人で帰宅をした。


何かを喋っていたのは覚えている。しかし何を喋っていたのかは覚えていない。頭の中には謎にある京姉と俺が昔からの知り合いと言う事がバレたくないということ。


なんでこんなにもバレたくないんだろうな……。



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