第19話 担任の訪問

「で、どうなんだよ歩」


「「どうなのあゆ?」」


……どうしよう。ここは京姉に助けを求めるか、いや絶対に見過ごされるか。んー……


「もちろん俺は運動も普通だし勉強はできないよ」


「小学校の時はできてたよ?」


「それはあき達が買いかぶってただけだって」


もうこれで突き通すしかないな。


「あー、でも一回中学の時歩が喧嘩した時めっちゃ強かったわ」


「そりゃーあゆは色々習ってたからねー」


そうだったこいつらは俺の家に来た時色々探ってたっけ。これ以上言われると恒星達に聞かれまくる。


ダメ押しで切り抜けるしかない!


「よし、わかったもういいだろ。昔は昔今は今ってことでいいってことで解散!」


「「はーい」」


「もう授業始まる時間か、そんじゃまた後で!歩むと鈴宮姉妹!」


よし後はもう一回京姉に頼んでどうにかしてもらうか。


って、結局両隣は晴と晶だから意味ないじゃん!


「ねー、あゆ?どうして中学からは自分の実力を隠したりしたの?」


「隠してない、晴たちが過大評価しすぎてただけ」


「さすがにそれはないよあゆー。で、なんで隠してたわけ?」


逃れられないのかこの二人からは……白石と同じ感じがするぞ。


「別に少しめんどくさくなっただけだよ」


「「なるほどねえ~」」


相変わらずのハモり力だな二人とも。


「私の予想言ってみていい?」


「めんどくさくなったからって言っただろ」


「うん、それ嘘じゃん?それで私の予想は両親となんかあった?」


「あー、あとうちが思うのは弟くんとも?」


「…………」


や、やべぇよこいつら。俺なんも言ってないよね?!てっゆーか顔にも出てないと思うんだけど?!白石達よりも心を読めるとかさすがだな?!


いや、驚く前にどうやってここから言い訳を作れと言うんだ。助けてくれぇー


やむを得ないな。京姉助けてくれ!


『助けて京姉。晴と晶にバレそうなんだけど』


俺はスマホを机の下で操作して京姉に助けを求めることにした。頼む早く打開策を教えてくれ!


おっもう来た、さすが京姉だ!尊敬だよ!


『私には分からない、今後とも頑張れ。あと今日アパート寄るからよろしく』


俺の尊敬返せやあああああああ!!!!!分からないと言ってそのついでに今日来ることを報告してくるとは度肝を抜かれるぞこれは。


それなら白石に連絡しとかないとな。授業終わったら連絡しておくか。


「おーいあゆー?聞いてますかー?」


「あ、ああ」


「まあ、うちらの予想は当たってると思うけど誰にも言わないから安心してね!」


「ありがとな」


小さい頃、俺は友達は多かったけど親友というものを作らなかった。でも、この二人にあって初めて親友と呼べるものを作った。いや、それ以上とも呼べると思っている。


その理由のひとつが今のこれだ。俺の事を探るときもあるけど、それでも言いふらしたり深く攻め込んだりもしてこない。それのおかげでどれだけ救われたことか、俺は数えきれない。


「おっ、笑ったねぇ」


「久しぶりのあゆの笑顔でうちらも最高だねぇ」


「うっせ」


おちょくりはもう少し控えて欲しいけどな。次は顔には出さず心の中で笑っておいた。



それからは二人とも真面目に授業を受けていた。しかし、二人とも真ん中の俺の席にある教科書を見るために引っ付いてくるから、俺は理性をら保つので今日は苦労の続きだった。しかもそれが六時間も続いたのだ、よく頑張ったと思うぞ俺。


学校が終わると同時に俺はある店に着いていた。


「たい焼きのカスタード味6匹とつぶあん6匹ください」


なぜこんなにもたい焼きを買っているかと言うと……京姉が家に来るからだ。京姉の好物はたい焼きだからメールで来た『よろしく』の意味は『いつものたい焼き買ってこないと生活費のサポートしてやらん』と言う意味でもあるのだ。恐ろしき大魔神だ。


たい焼きを買い終え、日が沈み始めると同時に俺は次の準備を始めた。


お風呂の温度は43度にして、温泉の素を入れておけとタオルを置いて完成だ。


この準備の意味は、京姉は帰ってきたと同時に風呂に入るからその準備をしないとダメなのだ。


「あとは帰ってくるのを待つだけか」


全ての準備を済ませた俺はソファに座りながら京姉の帰りを待っていた。


「歩、帰ったぞー?」


「ああ、おかえり京姉。風呂はもう入れるから」


「そうか、風呂入り終わったら少し話をするから待っていてくれ」


なんだ急に改まって。なんか俺やらかしたかな?


「ああ、わかった」


一応返事を返しておいて俺はまたソファに座った。


いつもならこの時間帯は眠たくないのだが、今日は色々とあって大変だったから急に眠気が襲ってきた。俺はあっという間に眠りについてしまった。


(なんだこの弾力は……気持ちいいな。あ、これは夢の中か……)


俺は夢だと眠っている時に気づいて目を覚ました。


「起きたか歩、どうだったかな?」


「…………」


「黙ってないで答えろー」


「……何この状況」


今の俺の状況は京姉の太ももの上に頭を載せた状態、いわゆる膝枕というものをやってろらっている状況だ。


「寝心地はどうだったかな?」


決して言ってはならない。夢の中で感じた気持ちよさなんて、今でも浸っていたいくらい気持ちいなんて口が裂けても言えない。


「……気持ちいい」


何を言っているんだ俺はアアアアアア?!口が裂けても言えないって心の中では考えてたのに!どうして言っちゃうんだああああ!!!!!!


「ちがっ……」


「そうかそうか、気持ちいいかぁー。やり甲斐があるってもんだなー」


京姉はいじりを含めていそうなニヤニヤな笑みを隠そうともせずに俺の顔を見ている。


「顔が赤いなぁ歩?どうしてそんなに赤いんだ?」


京姉めやはりいじってくるか。京姉は黒髪ロングの清楚系美人でスタイルも抜群、外見を見た人は性格も最高とか思うだろう。


しかし、性格は全くの裏腹だ。とにかく誰かをいじり倒したいというなんとも言い難い性格だ。この性格にどれだけ振り回されたことか……。


「……なんでもない。ってゆーかなんでこの状況になってるんだよ」


「それは私に聞かれても困る。歩が自分から寝転がって来たんだからな」


「え、まじ?」


俺の頭が急速に回転し始めた。


俺から京姉の太ももにダイブしたと言うのか。寝てる間になんてことをしてしまったんだ。


「その、ごめん京姉」


自分でもわかるほど顔が熱くなっていくのがわかる。それがバレないように俺は顔を横に向けた。


「いや別に謝らなくてもいいんだが、謝るなら膝枕から離れるんじゃないのかぁ?」


またもやニヤニヤの顔で俺の顔を覗き込んでくる。


でも言ってることはなんら普通の事だった。ただ京姉の膝枕には影響力が強すぎる、これから離れろと言うのは簡単ではない。


しかし、話をするのにずっと膝枕っていうのは変だし仕方なく俺は身体を起こした。


「それで急に話って?」


よくよく京姉を見てみると風呂に入ってから着替えたのかパジャマらしき姿で座っていた。


「あぁ、まあまず一つは鈴宮姉妹の回避の考えで」


さすが京姉、メールでは協力してこなさそうだったけど結局は協力してくれるなんてさいこうだね!


「一つ目って事は二つ目も?」


「そうだな、二つ目は今日から一週間ここに住むことにする」


今なんて??








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