第18話 双子の美少女が乱入!
「なあなあ今日転入生がくるらしいぜ歩!」
木曜日の朝、いつものように恒星が話しかけてきた。今日の話題は転入生のようだ。
「そうか……。ってかはやすぎないか転入するの」
まだ入学して1ヶ月半ちょいしかたってないのになぜ転入生がくるんだ?
「いや、転入生っていうかなんか事情があって入学するのが遅れたらしいぜ!」
「先にそれ言えよ!」
「転入生って感じでいいじゃん!」
「わからんな」
そうか?と恒星が言っていつも通りの笑顔で笑っていた。
「おーしみんな席につけー」
「やっべもう先生来てんじゃん」
少し驚きながらもワクワクが収まりきらない恒星を見ると、そんなに転入生が気になるのかと思ってしまう。
そうは言っても少し俺もきになる。
「えー、今日は始めに新しいクラスメイトを紹介する。家庭の事情で入学が遅れたらしい」
この女教師、
相変わらずダルそうな口調のこの教師は、普通にタバコも生徒の前で吸うし教師としてどうなんだと思うが、教師としての成績が学校の教師で一番いいらしいので他の教師連中は何も言えないらしい。実力恐ろしい……。
「それじゃあー入ってくれー」
ガラガラ
銀髪の綺麗なショートカットの女の子が二人教室に入ってきた。身長は高すぎず低すぎず、胸もなかなかある。クラス中の男子も、女子も釘付けだ。って俺は何を解説しているんだ。
ん?銀髪のショートカットの二人?謎に見覚えが……。
「「おはようございますみなさん!私たちは双子です!」」
おぉなんて言うハモり力、これが双子のなせる技か。
「えっと、黒のヘアピンをつけてる私が
ふむふむ謎に聞き覚えのある名前だな……?
「そして青のヘアピンしてるうちが
ふむふむこっちも謎に聞き覚えが……。
「ってあき?あそこにいるのあゆじゃない?」
「廊下側の一番隅っこにいる子だよね?うちもそれ思ってたんだよね」
双子の銀髪美少女が教卓の前でこしょこしょばなししてるぞ、いきなり目立つことするなんてリア充だな。
「おーい!あゆー!」
「久しぶりー!あゆー!」
ふむふむその呼び方をするのって確か……。
はるとあき?って
「ぇぇえぇぇええええええええええ!!!!!!!!!!!」
教室にいる全員の視線が俺に向かって突き刺さってくる。しかし、いつもの殺意に満ち溢れた視線じゃなくて驚きの視線だな。当たり前か、こんなに大きな声を俺が出せばびっくりするか。
「え、なんで二人が日本にいるんだよ」
はるとあきは小学校一年生の時に知り合って、それから一番仲が良かったのだ。二人は日本人の父親とどこの国か忘れたけど母親が外国人のハーフだって言ってたっけ。
それで母親の事情で家族揃って海外に引っ越したのだ。
「それがねー、あっち飽きちゃったから日本に帰ってきたんだー」
「あっ、お母さん達はまだロシアにいるよー」
おかしいな、何かクラスメイトの視線がいつも以上に殺意が増してる気がするな。気のせいだよないや、気のせいでいてくれ。
「あー、喋るのはまた後にしてくれ。で、二人は神崎の知り合いなんだな?」
「「はい!そうでーす!」」
なんて言う元気だよ二人とも。小学校の時から変わっとらんなぁーあいつら。
「そんなら席は一番後ろの神崎のところにしてくれ」
「先生、ここが三人席になるんですが」
「気にするな神崎」
教師あるまじき説得の仕方だなおい。
ってゆーかもうみんな殺意隠す気ないでしょ!それと京姉はなんでニヤニヤしてんの?!殺意ぶつけられてる俺を笑うのやめて貰っていいかな?!
「机は廊下に置いてあるから取って来てくれ。それじゃあ今日のホームルームは終わりー」
起立、礼。
ホームルームが終わってすぐに教室から出ていく京姉を俺は追いかけた。
「おい、京姉なんの嫌がらせだよ?!」
「ん?なんの事だ歩」
無表情を取り繕ってるけど内心では笑ってるのは長年の付き合いで分かるからね?
「なんで俺の席の近くにしたんだよ。京姉もあいつらの事は知ってるでしょ?」
「ああ、歩と小学校の頃仲が良かった子達だろ?もちろん覚えてるよ」
「それなら分かるだろ、俺が小学校の時とは全くの別人になってるんだから隣の席だと余計に聞かれる事が増えるでしょーが」
「隣の席にしなくたって結局聞かれる羽目になるだろ。隣の席にしたのは知り合いの方が聞けることも多いだろうしな」
確かに普通の生徒だったらそうなるかもしれないが、あの二人に限っては普通じゃないから大丈夫だと思うんだけどな!
「まあ頑張ってくれ。それよりも次学校で京姉なんて言ったら生活費免除が無くなると思えよ歩」
「あ、ごめん。生活費だけは少し助けてくれ。バイト減らされたから色々ときついんだよ」
「そうか、なら以後気おつけるんだな」
苦笑しながら京姉は歩いていった。
「やっほーあゆ!驚いたかな?」
「どうどうあゆー?」
相変わらずのスキンシップだな二人とも。クラスの視線に気づいていないのかな二人とも。
「あ、ああ驚いたよ。よくお前らの父親は認めたな」
はるとあきの父親は娘大好き星人だから、よく二人だけが日本に戻る事を許可するとは思わなかった。
「お父さんにはお母さんが説得してもらったんだー」
「あゆは最近どう?」
「どうって言われてもな……」
早速その話題を降ってきたのかあき。どうやって切り替えそうか。
そこで救世主か迫害者か分からないやつが来た。
「歩は俺らと仲良くやってるバイト減らされてやる事無くなった捻くれ者でいつもやってるぜ!」
「ちょ、おい」
俺の小学校の時の事を知らない人達へに向けての言葉だったら褒めていたに違いない。でも今回は相手がはるとあきだ。今の話を聞いて疑問が浮かばないわけが無い……。
「え、それっていわゆる陰キャってこと?あゆが?」
「あゆに限ってそれはないでしょー!確かにあゆは捻くれてたけど優しかったし友達も多かったし運動も勉強もできてたもん!」
や、やばい。恒星は中学からの友人で小学校の時の俺の事は全く知らない。今度は恒星が疑問に思うかもしれない。いや、もう思ってるか。
「どーゆー事だよ歩。お前運動は普通の中の普通で勉強は中学の時からできてなかったじゃねぇーか!」
「え?」
「え?」
「え?」
完璧に詰んだ。
でもこれだけは言えない、言いたくない。自分の家庭事情は誰にも触れて欲しくない。恒星にも佐藤にも白石にもはるにもあきにも。
もう苦い思いもしたくないし目立ちたくもない。さあ、これからどうやって誤魔化していくか。
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