第12話 美少女に隠し事はできない
俺と白石は恒星たちと別れた後近くのスーパーに来ていた。
「なあ白石、恒星たちとか学校の人の前では一緒にご飯食べてるって言うのやめないか?」
白石に爆弾を投げられてからは恒星と佐藤の質問攻めに今の俺はヘトヘトだ。白石も表情に出してはいないがかなり疲れただろう。
「確かにさっきの質問攻めは結構疲れましたね」
そう言いながら白石は今日のご飯をカゴに入れていく。
「そうだよな、しかもそれが学校の人に広まったら俺は殺意を向けられかねない」
「神崎くん、殺意はさすがにないと思いますけど」
「もう少し自分の魅力に気づいた方がいいぞ」
「そうでしょうか」
ある程度は白石もわかっていると思うが、白石が思っている以上に男子の大半は白石に好意を向けているだろう。彼女持ちと俺を覗いてだが。
「ああ、間違いなく殺意の目で睨まれるだろうな」
「それなら気をつけたいと思います」
「できる限りで大丈夫だから。俺は作ってもらってる方だからそんなに言えないし」
「私が作りたいからつくってるだけなので大丈夫ですよ」
そう微笑みながら言ってくる彼女の姿は女神、天使のように可愛くて美しいと思えた……
「ぐはぁ……」
俺と白石は一旦俺の家に食材を置くことにした。相変わらずこの荷物は重すぎる。
「お疲れ様です神崎くん」
「俺は料理手伝えないから身体を使うしかない」
「それもそうですね」
苦笑しながら言ってくる白石は見とれるほど綺麗だった。というかあっさり認めちゃうんですね!?
「神崎くん、今日は暑かったので汗をかいてしまいまして……」
「あぁー風呂な、それなら風呂入ってから集合でいいか?」
「そうして頂けると」
やっぱり汗とかは気にするんだな。まあ汗は誰でも嫌だか。
「わかった、それなら鍵渡しとくわ。準備できたらかってに入ってきてくれて構わないから」
「さすがに鍵は……」
「これからご飯作ってくれるなら鍵ないと不便だしな」
本当は少しめんどくさいからって言う意味もあるのは黙っておこう。
「そうかもしれませんね、ありがとうございます。それじゃあまた後で」
「ん」
俺も風呂入っとこっかな。別に白石になんて思われてもいいけど臭いって思われるのは少しだけ嫌だしな。
俺はシャワーを浴びて、湯船にゆっくり浸かってから風呂をでた。
「もう来てたか、少し長風呂しすぎたか」
「いえ、私も今来たと……」
料理をしようとしていた白石がこっちを見て固まっていた。
「どうしたんだ?」
「なんで上を来てないんですかっ」
顔を真っ赤にして慌てている白石を見ると笑いそうになる。笑ったら怒られそうだから笑わないけど。
「別にプールとかで見るから普通だろ」
「うちの学校はプールありませんっ」
え、初耳なんだけど全然知らんかった
「中学はあっただろ」
「男女別でしたっ」
そーゆー学校もあったのか。それも初耳だな。
「なるほどなるほど……。服きてくる。」
「はい…」
俺は脱衣場に置いてある服を着てリビングにでた。そこにはさっきの真っ赤に染めた顔の面影を一切見せず、いつものクール美少女で料理をしている。
俺は邪魔するのは悪いと思いこないだ勝った本を読むことにした。
「神崎くん運ぶの手伝って貰えますか?」
もうご飯ができたらしい
「わかった」
そう言ってキッチンまで行くと、また美味そうな夜ごはんが皿に並べられている。
「今日もすげーな」
「母に教えて貰っていたので」
「優しいんだな」
「はい、すごく優しい方です」
そう言ってテーブルにご飯を並べた
「白石今日もありがとな」
今日もまた作って貰えてほんとに感謝しかない。気を緩めると頬がゆるんでしまいそうになる。
「お気になさらず」
「「いただきます」」
今日の夜ごはんはオムライスだ。比較的にたまご料理が好きな俺は食べ始めると手が止まらなかった。
「ほんとに美味しいな」
「それは良かったです」
美味しい意外の言葉が出てこないぐらい白石が作ってくれたオムライスは美味しかった。レストランとかでしか食べた事がなかったけど、白石の作ってくれたやつが一番美味しい。
「神崎くんはなんで一人暮らしをしようと思ったんですか?」
「いや一人暮らししてみたかったってだけだよ」
本当は嘘だ。俺の家族は四人家族で父親、母親、俺に弟という家族構成だ。父親と母親は主に完璧主義者で、なんでも一位を取らなければ家族では無いと言い切るぐらいだ。それで俺は小さい頃から色々な事をやらされてきた。
スポーツだとサッカー、野球、バスケ
武道とかでは空手、柔道、剣道
勉強はもちろん書道などもやらされていた。もちろん後から生まれてきた弟も同じだ。
俺は習っていた事全て上位にはいただろう。スポーツでは全国クラスのチームのエース級。武道では県大会まで行っている。勉強も学年で五番目ぐらいには良かっただろう。
しかし弟の
歳は二つ下で俺が中一の時は一体一で勝負したら負けない自信があった。しかし結果はぼろ負け。弟には嘲笑われ、父親と母親には『弟に勝負を仕掛けたのもお前で負けたのもお前とは家族の恥だ』と言われその場で家族では無いとまで言われた。
それで俺は一人暮らしをすることになった。アパートのお金は払ってもらえるがそれ以外は何も無い。
「そうですか?」
「嘘をついて俺に何のメリットがあるんだよ」
これだけは白石にも心を見透かされては困る。だから俺はいつも通りの表情でいつも通りの口調で返した。
「白石こそなんで一人暮らしをしてるんだ?」
「両親が県外で仕事をしているので、ここで一人暮らしをしてるんですよ」
「そういう事か」
そう言って味噌汁を啜った。変に家族の事を思い出したせいでモヤモヤしていたのがこの美味しい味噌汁を飲んで少し晴れた気がする。
ご飯を食べ終わって俺は本の続きを読んでいた。白石は今日の復習と明日の予習をしているようで素直に感心した。
俺が勉強をしなくなったのは中一になって少し経ってからだからこれで三年目になる。
そうやっていると時間は二十二時を回っていた。
「白石もうそろそろ帰った方がいいんじゃないか?」
「もうそんな時間になっていましたか。そうですね、そろそろ帰った方いいですね」
勉強に集中して時間を忘れているなんてさすがとしか言いようがない。
「今日は前まで送ってくよ。時間も時間だしな」
「それじゃあお言葉に甘えさせていただきます」
俺と白石はマンションの前まで一言も言葉を交わさずに歩いていった。
「今日もありがとな」
「はい……」
白石は何か言いたそうな顔をして俺を見ている。
「どうかしたか?言いたいことがあるなら言えよ?」
「神崎くん、さっきの一人暮らしの話し嘘をついていませんか?」
「どうしてだ?」
普通にそんなわけないだろとか言えたかもしれないが、白石だと本当に心を読んでいるみたいに俺が思っていることを当てるから誤魔化すだけ無駄だと思った。
「あの話をしている時神崎くんの顔がいつもよりも曇っていた気がします」
なぜか分からないが白石の顔は少し心配そうな顔をしているようで泣きそうな顔をしているようにも見えた。
「こんな事を私が言ってもいいわけがないと思いますが、それでも…もし神崎くんが言ってくれるのであれば私は何かの助けをしたいです。」
白石の声は段々と小さくなっていき最後の言葉を言う時には地面を見ていた。
それでも俺にははっきり聞こえた。今気を緩めると涙が溢れてきそうなほど有難く感じた。今まで誰にも言わずに心の奥に封じ込めていた気持ちが押さえ込んでいないと全部出てしまいそうになる。
俺は声が裏返らないように白石に言った。
「その時がきたらよろしく頼むよ」
今できるだけの笑顔を作って白石に言った。
「任せてください」
白石も優しい微笑みを俺に見せながら言ってきた。これは反則だろ……こんなん勘違いしずにいるのがもっと難しくなるだろ。
「それじゃ、今日もありがとな」
「はい、それじゃあまた明日」
そう言って白石がマンションの中に入っていくのを見送る。こちらの視線に気づいたのか中に入る前にもう一度振り返ってお辞儀をして中に入っていった。つい頬が緩んでしまったけどバレてはないだろう。
「白石には隠し事はできないな」
一人でそう呟きながら俺も家に戻った。
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