第11話 美少女は気にしない

翌日の日曜日は、白石がハンバーグを作ってくれた事以外は特別な事は全くなく休日もあっけなく終わった。




月曜日の朝、いつもは誰からの連絡もない俺のスマホがアラームよりも早い時間になっていた。スマホの画面を見ると白石白の名前が出ていた。


「ちょっとはやすぎるだろ」


そう文句を言いながら玄関を開けた。


「誰もいないんだけど……」


俺は一回部屋に戻ったのかと思いLINEで聞こうとした。


プルルルル


「もしもし」


「おはようございます神崎くん。ちゃんと起きられましたか?」


それで俺はようやくわかった。なんで電話が朝早くから鳴ったのか、玄関を開けても誰もいないのか。


朝に電話で女の子に起こしてもらうやつだ。そう、いわゆるモーニングコールってやつだ。


「俺は寝坊なんてしないぞ」


「この前は寝坊したって言ったじゃないですか」


そーいえばこの前はたまたま寝坊したっけ?


「この前はたまたまだよ」


「たまたまでしたか、でもいつまたたまたまが起こるかは分からないのでこれからも続けますね」


「お、おう?」


「それよりも起きてたならなんで最初の電話に出てくれなかったんですか?」


これだけは絶対に言えない。勘違いして玄関のドアを開けたなんて絶対に言えない。


「もしかして玄関まで出ていっちゃいましたか?」


電話の向こう側の白石の顔が嫌でも想像できてしまう。学校のクール美少女とは裏腹に見事な小悪魔っぷりだ。


「そんなわけあるか。出ようとしたら切れただけだよ」


「そうだったんですね、それじゃあそろそろそちらに向かいますね」


「了解」


電話を切って俺はもう一回布団の中に潜り込んだ。いつもよりも早い時間に起こされたからまだ眠いのだ。


白石が来たらインターホンを鳴らすだろうしその時に起きて出ればいいかと思い俺はもう一回布団の中と夢の中に潜り込んだ。



「神崎くん?神崎くん、起きてください」


ほっぺたをペチペチされて目を開けると、見覚えのある美少女がそこにいた。


「ん?あぁ白石か、おはよぉ…………ってなんでいんの?!!」


あまりの衝撃につい大きな声が出てしまった。


「朝ごはんを持ってきたんですよ。てゆうかさっきも電話で言ったじゃないですか」


少し呆れた口調で白石は言ってきた。人は睡眠欲には勝てないから仕方ない。


「そ、そうだったな。今日の朝ごはんはなんなんだ?」


この話をしてると追及されそうなのですぐに話題をすり替えた。


「今日は和食にしてみました。和食は食べれますか?」


「全然いけるぞ」


そう言うと良かったです、と言って机の上にいつの間にか並べてあった皿に和食を乗せていった。


手際いいなぁ……


「準備おっけーです」


「ありがと」


「それでは」


「「いただきます」」


俺と白石は食べる量は異なるが、速いペースで朝ごはんを食べ終わった。


「「ごちそうさまでした」」


今日のご飯もまた美味しくてこのまま昇天しそうなぐらいだ。


「今日のご飯もうまかった。ありがとな」


「お粗末さまです」


そう言って食器をキッチンまで持っていって洗い物をした。


「神崎くん早く学校の準備しないと遅刻しますよ」


「もうそんな時間か。そんじゃまた学校であったらな、昼ごはんもありがと」


「はい、また学校で」


学校に行くのは別にしようと言ったのは俺だ。白石と一緒に学校に行くのはハードルが高すぎるし、白石も変な誤解をされて迷惑になるだろう。


若干白石は不服そうな顔をしてなくも見えなかったがどうでもいいと思い頭から切り離した。


「今日はバイトがないから自転車はいいかな」


そうやって独り言をしながら学校に行った。



クラスに入っても大半の人が学友と笑い話やらなんやらで過ごしていた。そんな中、一人だけこっちにニヤニヤしながら歩いて来る男子生徒がいた。恒星だ。


「おっはー歩!今回の休日は楽しく過ごせたか?」


楽しいと言うより嬉しい出来事だったな。恒星には絶対に言わないけど。


「バイトが減って何も無い休日だったよ」


「ふぅーん?」


「な、なんだよ」


ニヤニヤしながら言ってきたから言葉に詰まってしまった。


「そーゆー恒星こそどうだったんだよ」


「俺はいつも通りゆきと一緒だったけど」


こうやっていつも通りって言えるのがもうバカップルなんだよな。


「歩今日バイト入ってるか?」


「なんだ急に、今日はないよけど。バイトなら週に一、二回しかもうないよ」


「また随分と減ったなー」


「店長に言われてな」


働きすぎとはいえ週五ぐらいでいい気がするのになんで一、二回だけなんだよ。


「まあバイトないなら久しぶりに近くの方で食べに行こうぜ」


「最近は行かなったしな、いいよ」


そう返事をするとすぐに恒星はスマホを出して文字を打っていた。リア充は文字を打つ速度が尋常じゃないほど速いな。



それから全授業を受け終わって恒星と近くのレストランまで歩いていた。


「ほんとに久しぶりだよな、歩と食べに行くのって」


「まあバイト入ってたからな」


「この前は店員としてしか一緒じゃなかったもんな」


そうだった、こいつも俺があそこでバイトしてることを知ってるのか。


「別にいいだろ」


「まあまあ。それよりもあの接客の時の顔してれば学校で歩モテると思うんだけどな」


「別に俺はモテたいとも思ってないし、笑顔だけでモテてたら世の中のモテたい人は苦労しないぞ」


特にこのイケメンに言われると嫌味にしか聞こえない。


「歩は髪の毛で顔そんな見えないけど髪上げると良物件だと思うぞ」


そう言って恒星は俺の前髪を上げた。


「ほらイケメンじゃん。えっ、てかほんとにちょっと前髪いじればくそイケメンになんじゃんか」


恒星はスマホを取り出して素早くカメラで俺を撮った。


「おい」


「別にいいじゃん減るもんでもないしー」


そんな話をして俺たちは店に入った。でもそこには今日の朝見た美少女と俺の友達の彼女らしき人が席で手を振っている。


「待ち合わせしています」


そう言って恒星は歩いて行った。待ち合わせ?だれと?


「ほら歩もはやくこいよ」


「ん」


恒星の歩いている後ろについていって着いた先はさっき手を振っていた人の場所だった。


「恒星、なんで白石と佐藤がいるんだ」


「そんなん一緒になんか食べるからに決まってんだろ」


「そうか」


もう俺は驚きもなんもしないからな。普通に喋って食べて帰れば、また美味いごはんが食えるからな。


そんな事を思っていると白石からのまさかのクリティカルヒットが俺に当たった。


「神崎くん」


「ん?どうした?」


「この後今日の夜ごはんの材料買いに行くので手伝って貰えますか?」


「そりゃあ食べさ…………」


白石はなんとも思ってなさそうだけどこちらとしてはクリティカルヒットなんだけど?!これじゃあ恒星と佐藤に絶対なんか言われるじゃん?!


「し、白石その話はあ、後でもいいか?」


あまりのダメージで何回も舌を噛んでしまった。


「いえ、店をでてすぐ行かないと学校の人も多くなりそうなので、出来れば今聞いておきたいです」


「……了解です」


クールなのにどこで天然が絡まっているんだか。


「歩?」


「はくちゃん?」


この後、俺と白石に恒星と佐藤が色々聞いてきたのは言わなくても分かるだろう。



























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