第8話 美少女は隠さない
翌日の朝
「おはようございます」
「こんな朝早くになんの用だ」
「朝ごはんを持ってきました」
まさかこんな事になるなんて公園であった時は思いもしなかった。
昨日で恩返しは終わりだと思っていたのだか…
「もう恩返しは十分だよ」
「これは恩返しではありません。こんな食生活がダメな人が近くにいるのに見捨てるなんてできませんから」
「食生活がダメって……」
「この前家に入ったので見てしまいましたが、カップ麺ばっかじゃなかったですか。学校の時もゼリー飲料てしたし」
痛い所をついてきやがるな…。確かにゼリー飲料やカップ麺ばっかだけどさ。
「ちなみに今日の朝ごはんはなににするつもりだったんですか?嘘はついても無駄ですからね」
「……ゼリー飲料」
「はぁ……」
「た、ため息までつかなくていいだろ!?」
すこしムッとした表情でこっちを見てきた。これ他の男子がやられたら勘違いするだろうな。俺はしないけど。
「ため息もつきたくなりますよ。昨日私が作っておいたごはんがなかったら夜ご飯はカップ麺だったでしょう?」
「うっ……」
やっぱりスーパーリア充共は相手の考えている事や考えてた事がわかる超能力を秘めてるだろ。
「やっぱりですか。まあ朝ごはんがゼリー飲料で良かったです。これを食べてください」
「え、うーん、いいのか?」
違う!違う!今回はしっかり断らないと。これ以上やられると俺がどんな恩返しすればいいのか分からなくなるからな!うん、断ろう!
「はい」
「なら遠慮なく」
何をやってるんだ俺は!?心の中で言ってる事とやってることが真逆じゃないか!
……なんか心の中の俺おかしいな
「もうひとつこれも渡しておきますね」
「ん?なんだこれ」
布にくるまれた四角いやつ、なんなんだこれ?
……まさか
「お昼ご飯の弁当です」
あんのてい弁当だった。なんで食生活が悪いやつが近くにいるだけでここまでしてくれるんだろ。学校の男子に教えたら学校中の男子が食生活悪くなるな。
「いや流石にこれ以上は悪いというか」
「作って来たのを食べない方が失礼だと私は思いますよ」
無表情で正論ぶちかまされるとどうもイラつくな。
「なら貰っとく。その、ありがとな」
「お気になさらず」
そう言って白石はマンションに戻っていった。
俺は家の中に入ってまずは朝ごはんの中身を見る。中身は4サンドイッチが4つ入っていてハムレタスサンドやたまごサンドが入っている。
「着替えは後でいっか。それじゃあいただきます」
順番に一つずつ食べてく。コンビニとかで売ってるものとは格が違うと思えるぐらい白石のサンドイッチは美味しい。
「美味いなぁ……」
またこんな美味しいご飯が食べれるなんて夢のようだ……。
「ごちそうさまでした」
いつの間にかサンドイッチの入った箱が空っぽになっていた。思わずお昼ご飯の中身を確認しようとしたが、それはお楽しみに取っておこう。
「今日の昼休憩が待ち遠しいなあ」
珍しくウキウキな気持ちで制服を来て外に出た。それとどうじに隣のマンションからもドアを開ける音がした。そっちの方を見ると予想通り白石がいた。
少し離れたところから見ても美少女は変わらんのだなと思いながらこっちから話しかけた。
「なあ」
驚いた表情何一つせずこっちに振り向いた。
「はい?」
「朝飯ほんとにありがとう。めっちゃ美味しかった。また昼にこんな美味しいもの食べれると思うとめっちゃ嬉しくてさ。とにかくほんとありがとな」
「…別にそんな大したものではないので」
顔が少し赤く見えたのはきっと太陽が当たってたからだろう。
今日の学校に向かう足取りは軽くすぐに学校についた。
「歩おっはー!」
「歩おはよぉ〜」
学校についてすぐに声をかけてきたのは美男美女カップルの恒星と佐藤だ。朝から2人とかどんだけ熱々なんだよ。
「おはよ」
「今日は随分と早いな!なんかいいことでもあったのか?」
出ましたスーパーリア充超能力、相手の心を読む。恐ろしいな。
「別にいつも通りだけど」
それでも俺は平然をよそうことに決めた。今日あったことを言うと色々聞かれるし面倒くさいことになるの確定演出だし。
「そっかー、まあ別にいいぜ!教室まで一緒に行こうぜ!」
「リア充の間に入るほど俺の肝は座ってない」
「ゆきの事なら大丈夫だぜ!もう白石さんの方に行ったからな!」
朝からこのテンションでよく疲れないよなこいつ
「わかった、それなら余裕で行ける」
「なんだそりゃ」
そう言いながら恒星が爆笑してる姿を見ると、こっちも笑えてくる。
それからちょっとした雑談を混じえながら教室に入った。俺はすぐに昼休みにならないかソワソワしていた。ソワソワしていたせいか珍しく授業中に寝なかった。
やっと4時間目が終わりすぐに俺は手を洗いに行く。そしてすぐに席について弁当を開ける。
「す、すげえ」
まだ食べてもないが思わず口に感想が出てしまった。でもこれは仕方がないことだと思う。
だって見るだけで美味しさを感じさせるんだから。
すると、隣からも驚きの声が聞こえた。恒星の声だ。
「朝あんなに上機嫌だったのはこれがあったからか」
「まあな」
「彼女ができてすぐに弁当を作って貰うなんて贅沢なヤツめ。どうせ白石さんだろ?」
「彼女なんていないし、白石でもない」
「ほんとぉ〜かなぁ〜?」
たまに出る恒星のウザイ顔だ。無視するしかない。
それから無言で食べて数分廊下から声がかけられた。
「こうせ〜い、あゆむ〜ちょっと来てー」
佐藤からだ。恒星だけならまだしもなんで俺まで?
「ほら行くぞ歩!」
「お、おう?」
妙に恒星の顔がニヤニヤしていて嫌な予感しかしない。
「ちゃんとハクちゃんも連れてきたよこうせい」
「さんきゅーゆき」
俺は珍しくこの先に何が起こるか読めた。白石の弁当と俺の食べてる弁当を見比べて同じか確かめて弄り倒してくるつもりだ。
どうにかして阻止しないと。
「白石さんちょっと弁当の中身を見せて貰ってもいいか?」
「すいません今教室に置いてあって」
よっしゃああああああああぁぁぁ!!!!!
俺が何もしなくても阻止できたぞ!神様ありがとう!
恒星の表情はしくったみたいな表情をしているし、佐藤はやってしまったみたいな二人ともひてる表情をして落ち込んでいる。いい気味だな。
そう思っていられるのもつかの間。白石の言葉で俺の喜びの表情が絶望の表情に変わる。
「一条さん、私の弁当を見たいなら神崎さんのを見ればいいと思いますよ。今日は私が神崎さんのも作ったので同じですから」
恒星と佐藤が一回、目を合わせて俺の方を同時に見てきた。
「歩くん?さっきは違うとか言ってなかったかなー?わざわざ隠すなんてやましいことでもあるのかなー?」
「あゆむ〜?一体いつからそんなに仲良くなったのかな〜?」
俺は目で白石に助けを求めてみたが白石はわけも分からない、とばかりにキョトンとした表情でこちらを見ていた。
「なんもないし、もしそんなやましい関係だったら白石がそんな簡単に言うわけないだろ」
「じゃあなんで歩は隠したんだー?」
「変な誤解でも招いたら白石に悪いだろ」
「それはそうかもな……」
ふぅ……
なんとか乗り切った。それよりも早く弁当が食べたいな。早く席に戻ろう。
「そんじゃ。白石昼ごはんもめっちゃ美味かったよ。ありがとな」
「そ、そうですか。それは良かったです」
なんか顔が赤いな、体調でも悪いのか?
「顔赤いぞ大丈夫か?」
「えっ?!だ、大丈夫ですっ!」
めっちゃ変だけど本人が大丈夫って言うならいいか。なんかさっきまで獲物を無くしたライオンみたいな顔してた恒星と佐藤がすんごいキモイ顔でニヤニヤしてる。早く教室戻ろ。
それから弁当は一人で食べてのんびりと昼休憩を過ごしている。
いつもと言ってもそんなに白石のごはんを食べている訳では無いが、食べる度に損失感が増してる気がする。また作ってくれないかなって期待もしてしまう自分が怖い。勘違いが一番怖いのに何を期待してるんだろう。
その期待を頭から放り出すために、5時間目と6時間目を睡眠タイムにして使うことにした。
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