第3話 隣の部屋の人
俺はベッドの上で目を覚ました。
時刻は20時40分だ。かなり眠っていたんだな。
そう思いながらも今あった出来事を思い出していく。
確か力が入らなくなって倒れそうになった所を白石に助けて貰ったって感じか。そう、思い出していると彼女顔を見せた。ずっと隣で椅子に座っていたようだ。
「体調はどうですか?」
「だいぶ良くなったよ」
「それは良かったです」
俺の頭の上には冷えピタが貼ってあった。きっと彼女が貼ってくれたのだろう。
「えーと。看病ありがとな。」
「いえ、これも借りなので。」
「そうか」
「では体温を計ってください」
そう言って体温計を渡してきた。
俺は素直に受け取って体温を計ろうとした。
すると彼女はすごい勢いで背中を向けた。綺麗な髪の毛が揺れているだけなのに、それも芸術的だ。
「何やってんだ」
「私がでてっからにしてくださいっ!」
白石は少し急ぎ足で玄関の方に行った。そんなに恥じらうことでもないと思うんだが。
「まあ計るか」
この体温計は少し古いやつだから体温が計り終わるまで少し時間がかかる。
ピピピピッ ピピピピッ
普通に早く終わった。体温を見ると37.2度と微熱になっていた。
「今度あったらまたお礼しておくか。」
そう思っているとまた彼女が入ってきた。
帰ったと思ったのに。
「熱はどうでしたか?」
さっきの慌てっぷりは全く見せずいつもの学校で見るクールに戻っていた。
「微熱だ」
「だいぶ引きましたね」
「ああ、あらためて看病ありがとな」
「お気になさらず」
学校ではもう少し愛想がいい気もするがまあいいか。
「お雑炊を作っておきましたので良かったら食べてください。」
いい匂いがすると思ったら雑炊の匂いだったのか。これはありがたい。
「ありがとう」
「いえいえ」
やはり警戒しているのだろう。警戒心を隠しているつもりかもしれないが普通にわかる。まあそれはそうだろう。警戒しないやつの方がおかしいのかもな。
それよりもこれは白石の手作りなのだろう。一体どのくらい上手いのだろうか。きっと完璧美少女はご飯も美味しいとは思うが、料理の事は噂でも聞いたことがない。
少し興味を持ちながら俺は手を合わせる。
「いただきます」
俺はスプーンを持って雑炊をすくう。雑炊の中身はネギにたまごと風邪の時に食べるやつだなと思いながら口に運ぶ。
パクッ
「うま…」
思わず口に出してしまった。でも口に出すくらい白石の雑炊は美味かったのだ。
この雑炊にはまった俺はスプーンが止まることなくすぐに食べきってしまった。
「ごちそうさまでした。ありがとう。ほんとに美味かった。」
「それは良かったです」
なぜだか少し白石のとげとげしさがなくなった気がした。学校の時とも違うなんか、わからんけど少し違う感じがした。
「それよりもです」
急にと音を提げて喋りかけてきた
「ん?」
「神崎さんは家で自炊していますか?」
「いや、だいたいコンビニかカップラーメンだけど」
「やっぱりですか」
なんでわかったんだ?
「一人暮らしをしているんですからそのぐらいはできるようにしといた方がいいですよ。」
「善処する」
言われっぱなしだな。まあしょうがないか。少しやってみるか。
それより、彼女は家に帰らなくてもいいのだろうか?もうこんな時間だし親も心配するんじゃないだろうか。
「家に帰らなくていいのか?親も心配するんじゃないのか?」
「いえ、私も一人暮らしをしているので心配はいりません。」
「えっ?」
一人暮らし?女子が?親は普通心配してさせないと思うんだが。
「なんですか。私が一人暮らしをしていてなにか不都合でもありますか。」
「いや、なんでもない」
と言ってももう時間は遅いしこのまま家にいられても困るからな。
「でもそろそろ帰った方がいいんじゃないか?いくら一人暮らしでも夜遅いのは危ない。近くまで送ってくから。」
さすがに家まで送るといえば警戒心の強い彼女は拒否するだろう。というか普通に全く知らない男に家も知られたくないだろう。
「いえ、大丈夫です。」
そんなに俺は他意があるように見えるのだろうか?
「でもなぁ、さすがにこれでなんかの犯罪なあんたぎ巻き込まれたら俺も罪悪感が……」
そう言いかけた時白石は言葉をさえぎって少し驚いた表情で聞いてきた。
「神崎さん、お隣の部屋は誰が住んでいるかご存知ですか?」
なんでいきなりそんなことを聞いてきたんだよ。
「いや全く知らんが」
「はぁ……」
え、なんでため息?俺なんか悪いことした?
「私ですよ」
「は?」
聞き間違えだろうか
「すまん、もう一回言ってくれないか?」
「隣の部屋の住人は私です。」
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