第2話 お節介はすぐ返ってくる

ほんとに昨日はついていなかった。


帰宅後、すぶ濡れになった体をタオルで拭いて着替えていると1本の電話がなった。


「ん?俺に電話してくる人なんて誰だ……?」


俺に電話かけてくる人は限られている。


ん?なぜって?


それはもちろん友達がないにも等しいからだ。かけてくるとしたらバイト先の店長か中学からの友人…………



「…………」


プルルルルッ プルルルルッ プルルルルッ


やらかしてしまった。俺の青春と言っても過言ではないバイトを忘れていた…。


俺は急いでスマホを手に取り電話に出た。


『もしもし……。すいません店長いろいろな事情が重なりバイトの事をすっかり忘れていましたっ……!』



ほんとに今日はついてないなぁ。なんでこんなにも不幸なことが立て続けにくるんだ。そう落ち込んでいるとまさかの言葉が電話越しに聞こえた。


『ん?なにを言ってるんだ神崎くん?今日は君のシフトは入っていないよ?』



なにを言ってるんだ店長は。今日はバイトがない?ならなぜ俺は雨宿りをしていたんだ。バイトがないと分かっていればすぐ家に帰れた。雨にも濡れなかった。白石白にもお節介をかけずにも済んだ。ほんとに今日はついてない。



『今日連絡したのは君に少しバイトの時間を縮めて欲しいんだ。最近の君はオーバーワーク気味だからね。こっちとしてもいつもシフトに入って、来てくれるのはありがたいんだけどね。体を壊しちゃ元も子も無いからね。だから、こっちで少しバイトの時間を縮めたけどいいかな?』


『はい。ありがとうございます。』


『そうか。では明後日また伝えるよ。』


『お願いします。では失礼します。』


『ああ、また明後日ね。』


ピッ


電話を切った途端全身の力が抜けてそのままベットに転がり込む。


仰向けになって天井を見ていたら思ったことが口に出ていた。


「なんでこんなに今日は不幸なことが怒るんだろーな。」


それから意味もなく天井を見つめていると、いつの間にかベットの上で眠りについていた。




そして今日にいたったということになる。時刻は午前7時23分。


ピピピピッ ピピピピッ


「38.2度か……」


昨日の不幸がまだ続いていたのかもしれない。俺は見事に熱を出した。彼女が風邪を引くかもしれないとお節介という形で傘を渡した俺が熱を出してしまった。


「白石は風邪引いてないといいけどな」


そんなことを言って俺はスマホを手に取った。今日は熱があるから学校を休むことにした。そのため俺は数少ない連絡先の中から一人の男に電話をした。


プルル


『もっしもーし!おはよう歩!歩から電話なんて珍しいな!熱でも出したか??』


見事的中していた。朝っぱらから一条恒星いちじょうこうせいに電話をかけたのは間違えだと思ったが休みを伝えられる友人はこいつしかいない。というか出るのが早い。



『そうだ。俺は今熱があるんだ。だから悪いんだけど教師に伝えといてくれないかな』



『まじか?!歩が熱を出すとは珍しいな!

おっけーわかった!教師に伝えとくぜ!』


『ありがとう。それじゃあ俺は寝るよ。じゃあね』


『おう!お大事にな!』


恒星は良い奴だ。そして学校でも白石白に続く校内でかなりモテている。


顔は文句無しの超絶イケメン

性格も文句無しの超絶イケメン

スポーツ万能

もちろん彼女もいる

コミュ力の塊


世間ではみんな平等にと言っているが最初から不平等なんじゃないだろうか。と、色々考えていると段々体が重くなるのを感じた。


そろそろ寝るか…


そう思い俺はまたベッドに潜り込んだ。




ピンポーン


すやすや寝ているとインターホンがなる音がした。宅配便か何かと思い少し重い足を急ぎ足で玄関に向かいドアを開けた。


ガチャ


するとそこには思いもよらぬ人物が立っていた。


背は女子の平均的な高さで目はくりくりな二重。茶髪の黒髪ひとつも見えない髪の毛。肌は白くて人形のように可愛らしい。


そんな美少女俺の知ってる限りでは一人しかいない。


「白石白…。なんでここにいるんだ?」


「傘をお返ししに来ました。」


「捨ててくれと頼んだ気がしたんだが」


「借りたものは返さないといけないですから」


はぁ……


彼女は熱は出なかったようでピンとしていた。それに比べて俺は……。まあ熱が出てるとバレても恥ずいだけだしな。手短に済まして帰ってもらうか。


「そ、そうかありがとな。」


「はい。学校で渡そうと思ったのですが今日は学校にいないと恒星さんから聞いたもので」


「す、すまんな。今日はなんかサボりたい気分 だったんだ。手間をかけてごめんな」


「嘘ですね」


こいつ人の心が読めるとでも言うのか。それとも俺の嘘が下手だったのか。そんなはずは無い……。


「な、な、何が嘘なんだ……?」


「サボりたいから休んだのではなく、昨日私に傘を渡したせいで雨に濡れて熱を出したんじゃないんですか?」


こいつは人の心が読めるんだな。確信したぞ。

ならしょうがない。白状して早く帰ってもらうか。かなり立ってるのがきつくなってきたな。


「確かに熱はでた。でもそれは俺がただ単に雨に濡れたくて濡れてたらいつの間にか熱が出てただけだ。もう熱もないし大丈夫だから。傘はありがとう。そ、れ……じ」


あれ、言葉が出ない。てゆーかなんで目の前に床があるんだ……


ポスッ


なんかいい匂いなものにキャッチされたぞ。

これはなんだ……?


「何が熱がないですか。かなり熱いじゃないですか。」


やばい力が入らない。意識がぼんやりしてきた。


「ベットまで運びますので部屋に入るのは仕方ないと思ってください。」


それは迷惑だ。何とか引き返さないと…。


「だ、いじょ、、、うぶ、、だから」


「大丈夫じゃありません。借りは早めに返して越したことはありませんし。」


そう言われて俺はベッドまで彼女に連れていかれた。初めて女の人を家の中に入れたのがこんな形かと、かすかな気力の中から考えてそのまま眠りに着いてしまった。



























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