高校からの青春は思ったよりも甘々だった

七山

第1話 お節介と美少女の出会い

突然だがみんなに質問だ。青春とはなんだろうか?


恋愛?


部活?


大切な人との時間?


もし本当にそれが青春だとするならば俺は青春を一度もしてきたことがない。というか、できないのかもしれない。


恋愛に関して言うと俺は一度も人に好意をもったことがないし、抱かれたことも無い。


部活には入っていないし、大切な人もいない。


俺が高校生になってから一番頑張ったことはアルバイトだけだ。


これが俺にとっての青春なのかもしれない。


いや、これが神崎歩かんざきあゆむの青春だ。



いつも通り学校が終わり直行でアルバイト先のレストランに自転車をこいで向かった。



今日の天気は曇りで今にも雨が降りそうだ。



「しまったなぁ。傘を持ってこれば良かった。」


自分のミスに痛感した。今日の朝、しっかり天気予報を確認しておけば良かったよ。



「バイト先に着くまで降らなきゃいいけど……」


そう言ったのが神様を怒らせてしまったのか、ポツポツと雨が降ってきた。


はぁ……


心の中でため息をはいておいた。運が逃げるかもしれないし。


「はぁ……」


やっぱりため息をはいてしまった。


いーや、今はそんなことはどうでもいい。早く雨宿りをしなければ。そう思い近くの公園によった。




雨は止む気配が全くない。それどころかどんどん勢いがましている。


今日はついてないなぁ……。


そう思いながら公園を見ていると一人の女の子が目に入った。


今はかなり雨も強くなってきた。なのにあの女の子は傘もささず公園の真ん中に突っ立っている。


「あの子、なにやってんだ……?」


疑問しか浮かばなかった。俺は雨が嫌いだ。だから余計に疑問しか浮かばない。俺と同じで傘を忘れた?いや、それなら雨宿りしてるか……


そんなことを色々と言っては否定しての繰り返しををしてその子を見ていると妙に見覚えのある顔だった。


「あれって…Aクラスの白石白しらいしはくか?」


クラスの人達すらまともに覚えていない俺が知っている人物だ。


Aクラスの白石白。俺と同じ高校に通っている女子生徒だ。文武両道の超絶美少女とすごい評判の生徒で俺とは全く別世界の人だ。


勉強面ではこの間の定期テストで1位。

スポーツでは体育などですごい活躍をしているそうだ。


それはもう、いつも輝きを放っているだろう。しかし今の彼女はその輝きを全く感じない。


本当に白石白なのか?と、思いつつどうするか考えていた。


かれこれ10分はしただろう。彼女は姿勢も位置も変えずに立っている。さすがにこれ以上は風邪をひく、と思った俺はなにか傘代わりになるものを鞄の中から探した。


「これも神様の命令なのか……」


俺は傘を忘れて雨宿りしていた。なのに…なのにだ。なぜ鞄の中から折り畳み傘が出てくるんだ?ほんとに今日はついてない。


そう思いながらも俺は彼女の元に傘を持っていった。



「なにをやってるんだ……?」


声をかけるまで気づかなかったのか、彼女の雨で濡れた茶色の綺麗な長い髪が揺れて驚いた表情でこっちを見てきた。


「確かあなたは…神崎さんですね。なにかご用でしょうか?」


俺の名前を知っているとは意外だ。俺の名前を覚えているのなんて精々学校でも先生か、たった一人の中学からの友人だけだと思っていた。もしかしたら学年全員の名前を覚えているのか?と思いながら感心していると同時に多分警戒されているんだろうなと思った。


彼女は学校で一番モテているだろう。男子から色々なアプローチや告白も受けてきたに違いない。だから余計にガードが強いのかもしれない。今の俺は多分そーいう男子と同じで下心のある人だと思われている。


だから俺は他意は全くないように素っ気なくしようと決めた。



「たいした事じゃない。ただ、さすがにこの雨の中ずっと雨に打たれていると風邪をひくと思っただけだ。だからこれを使ってくれ。」


俺は手に持っている傘を白石に見せるように差し出した。


「お気遣いありがとうございます。ですが私は自分の意思でここにいるので大丈夫です。」


丁寧に断られた。まあ普通はそうだろう。突然喋りかけられて傘を使ってくれなんて言われたら他意があるとしか思えない。それが白石ほどのモテる美少女だと尚更だろう。


でも俺は傘を差し出した手を引っ込めなかった。



「そうか。でも傘はさして帰ってくれ。言っておくが俺はこの恩であんたと仲良くなろうとかそんな他意はない。ただのお節介だ。このまま見過ごすのもなんか嫌だからとにかくさして帰ってくれ。あと、この傘はもう使わないやつだから帰ったら捨ててくれたら助かる。」


かなり早口になっている事に気づき、自分でも気持ち悪いなと思いながらも彼女に開いた傘を持たせて素早くその場を自転車と共にさった。


「あのっ……!」



最後に彼女がなんか言ったようにも聞こえたが多分空耳だと思いペダルを踏んだ。


彼女に傘を渡せたことでさっきよりも少し気が楽になった気がした。正確に言えば強引に渡した感じにはなるけど細かいことは気にしないでおこう。


これで白石白との関係は白紙に戻った。俺は自分にそう言い聞かせる。決して勘違いしてはいけないと。


この時はまだそんな風にしか考えていなかった。


そして帰宅後、俺はバイトの事に気がついた。




























































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