第16話 創設メンバー

 カフェで話した翌週、オンライン小説部が創部した。

 お昼休みが終わって、クラスに戻ると三樹が報告してきたのだ。



「なぁ? 部員三人で認められたのか? それおかしくないか? ちょっと信じ難い」



 あまり詳しくはないけど、部として認められるのって最低人数があるものだと思う。

 それが三人? 四~五人のイメージがあったが、実際は違うのだろうか。



「そこは説得した」


「説得でどうにかなるものなの?」


「うちには真辺君がいるから」


「俺がいるとなにか変わるのか?」


「真辺君、今更部活なんてしようと思わないでしょ?」


「うん」


「学校側がもっと早い段階で問題を解決できていれば違ったかもしれない。

 せっかく真辺君が部活動をしようとしているんだから、アフターフォローをしてくださいって説得してきたわ」



 別に交渉材料に使われるのはかまわないんだけど、三樹も大胆な手札を切ったもんだ。

 まぁ俺が所属するのは本当だし、部として認められるのなら悪い話じゃない。



「そっか、よかったね」


「早速今日、活動の方針を決めたいと思うんだけど真辺君は平気?」


「わかった。大丈夫だよ」



 俺に報告が終わると、また三樹は女子たちと話し始めた。

 どうやら部活のことを話しているらしい。



「自分たちだけの部活っていうのも、なんかいいよねぇ」


「楽しそぉ~」



 確かに部活を作るというのは、ちょっと違う楽しみもあるかもしれない。

 三樹が言うには、他の部活動みたいに拘束されることも少ないようだし。

 あまり気乗りしないことではあったけど、そんなに悪い選択ではなかったかもと思った。


 一つ気になるのは三樹だ。

 三樹は公園で話して以来、特になにも変わらない。

 まぁ俺たちは喧嘩別れをしたわけじゃないから、気まずいというのは感じない。

 だけど……俺たちの過去がなくなるわけでもない。

 終わった切っ掛けは俺だから、俺が意識し過ぎているだけなのだろうか?



 午後の授業が終わり、荷物をまとめていると浅野がクラスへ来た。

 前回と違い、今日は他の生徒の目も気にせずに入ってくる。



「先輩、お昼振りですね」


「毎日俺のお昼を邪魔するつもりなのか?」


「邪魔なんて酷いですよ。お互いの仲を深めてるだけです」



 若干三樹の視線が鋭い気がするんだけど……。



「私が校長と話しているなか、そんなことをしていたのね?」


「なにもしてないよ」



 浅野が三樹の前の席に座って、打ち合わせが始まった。

 周囲では教室にまだ残っている生徒たちが、俺たちのことを話しているみたいだった。

 ここ数日でわかったことだが、浅野は一年生以外でも人気がある女子らしい。

 だから男子たちの一部が、浅野が来て反応していたということみたいだ。

 そんな女子が、どうして俺に付きまとっているのかは謎なんだけど。



「あの、三樹さん?」


「相阪さん? どうしたの?」


「あのね、ちょっと話が聞こえてね。私も、参加できるかな?」


「え? 部活?」


「……うん」


「でも、なんの部活かわかってる?」


「あんまり詳しくはわからないけど、小説を書くんだよね?」



 ザックリとではあるけど、相坂さんが言ったことはあっていた。



「でも人数少ないし、そういうことなら他の部のほうがいいかもしれないよ?」



 三樹は他の部のことを紹介している。まぁ三人だけの部で、なにも決まっていないような部よりもそっちのほうがよさそうだとは俺も思う。



「人数は、少ないほうがうれしいかな……」



 相坂は一年の頃から同じクラスの女子だ。

 性格は控えめな感じの女の子で、少し髪色が明るいショートボブ系。

 なんとなく、髪が短いほうが気が強い印象があるのは俺だけだろうか?

 だけど相坂さんは、俺のそんな印象とは逆の女の子だ。

 目がどうなのかはメガネをかけているのではっきりとはしないけど、少し猫目な印象を受ける。



「三樹先輩、相坂先輩って、実はすごい可愛くないですか?」



 浅野の言葉に、相坂さんはビクッとしていた。



「そ、そんなこと、ないから……」


「相坂さん、小説書きたいの?」



 三樹が訊ねると、少し予想外の答えが返ってきた。



「うん。内緒にしておいてほしいんだけど、あのね、私声優しているの。

 それで、勉強も兼ねて、書いてみたいなって思ってて……」



 俺たち三人は、考えもしなかったことが相坂さんから告げられて固まっていた。

 最初にその金縛りが解けたのは三樹だった。



「それって、もうお仕事してるってこと?」


「う、うん。でもね、まだたまにお仕事もらえるくらいで、全然だから。

 今は養成所に通ってて、その間にできる範囲で参加させてもらえたらうれしい。

 ダメ、かな?」



 するとなぜか浅野と三樹が俺に視線を向けてきた。

 そうすると自然に相坂さんまで俺に視線を向けてくる。


 いや、そこは俺じゃないでしょ。

 ここは三樹の出番だと思うのだけど、その三樹が俺を見てくる。

 仕方ないので、一意見を出すことにした。



「人数も少ないし、俺はいいと思うよ? 多少体裁も整うんじゃないかな?

 まぁこの部を作ったのは三樹だから、三樹次第だと思うけど」


「あ、ありがとう。ま……真辺君」


「わかったわ。じゃぁ、この四人でオンライン小説部始動よ」

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