第17話 興味があるんです
オンライン小説部は、新たに相坂
部活で集まって活動するのは月曜日と金曜日の週二回。
これは相坂さんの養成所と、俺のバイトの日を考慮した結果だ。
元々三樹は、そんなに部活として集まるつもりはなかったようだった。
そのときによって一人で執筆したほうがいいときもあるし、家のほうが落ち着いて作業できることが多いからと。
活動の内容としては、小説を投稿することになった。
それなりに実績を積めるなにかが必要であるため、俺たちは投稿した小説をコンテストに出すのが最低限のやるべきことになった。
そこでどのコンテストに出すかということになったのだが、短編小説部門があるコンテストに。
これは書き慣れていない俺たち三人を考えて決まったこと。
結構大々的なコンテストらしく、時期は来年の一月で締切は二月らしい。
来年は俺たちも三年生になる年で、大学受験の年でもある。
オンライン小説部として、しっかり活動できる期間は来年の夏くらいが限度というところだ。
執筆が初めてということを考えれば、あまり期間があるとはいえない。
そういう意味でも、コンテストに応募というハードルは悪くないように思えた。
「ところで、三人はパソコン持ってるかしら? できればノートパソコンとかがいいと思うけど」
「俺のパソコンはデスクトップだね」
「三樹先輩、私は家のノートパソコンしかないです」
「わ、私はお仕事であると便利だからって言われて、持ってます」
「俺と浅野だけないみたいだね」
「先輩、次のお休みで一緒に買いに行きましょう!」
「ん~、学校で活動することも考えると、ノートパソコンとかがいいよな」
「そうですよね! 私全然わからないから、一緒に見に行きましょう!」
「そ、それなら、私も一緒に行ってあげる」
こんな流れで日曜日、俺は三樹と浅野の三人でパソコンを見に来ることになった。
待ち合わせの一五分前に到着して二人を待っていると、五分程で二人が来た。
三樹は水色の膝丈まであるワンピースで、生地に少し硬さを感じるような印象。
女性らしい服だけど、生地の印象からなのか大人っぽい感じを受ける。
浅野もワンピースではあるけど、色はピンクベージュで柔らかいふわっとした印象。
丈が膝よりも少し上くらいで、女の子らしさを強調しているような感じ。
二人共春らしい色合いで、学校とは違った雰囲気を感じた。
「先輩チェックのパンツなんて履くんですね? 結構いいと思いますよ?」
「それはどうも」
「真辺君、待たせちゃった?」
「大丈夫だよ」
「先輩! 私たちのファッションには興味なしですか?」
浅野の非難を含んだような声色に、三樹もなにか言えというような視線を向けてくる。
「二人共春らしくて、可愛いと思います」
「ありがとうございます! 先輩も格好いいですよ?」
「――! 浅野さん、なにしてるの?」
浅野は俺を褒めながら腕を組んできて、三樹も俺と同じように意表を突かれたようだった。
「だってデートですよ? これくらいしたいですよ」
「いや、デートじゃなくて買い物だろ?」
「それをデートって言うんじゃないですか?」
「「…………」」
確かにそう言えなくもない気がするけど、なんか違くないか?
浅野の行動は、俺には理解できないことが多い。
最近ではいるのが当たり前になってきてるし、なんでこんなに寄ってくるのかもわからない。
三樹はなんかムスッと睨んでるし……。
三樹は結構堅いところがある。
まだ会って数日の浅野に、俺が腕を組まれていことに思うところがあるのかもしれない。
なんとなく三樹に後ろめたさみたいなものを感じるのは、俺が引け目を感じているということだろうか。
「先輩、行きましょ!」
そう言って浅野が俺を腕ごと引っ張ると、シャツの裾を三樹がちょっとだけ掴んできた。
結局俺たちはそのまま家電量販店が入っているモールへと行き、パソコンが置いてあるコーナーに足を向ける。
「やっぱりいろいろあって、どれがいいのかわからないですね」
「三樹さん、執筆にどんなのがいいとかってある?」
「意外とバカにできないのが重さとサイズね」
俺はデスクトップが部屋にあるので、手持ちの手軽さなどを重視してタブレットパソコンを選んだ。
浅野は俺と同じ物でサイズが一つ大きいものを選んだ。
俺は必要なかったけど、浅野は話を聞いてHDMIなどが付いている方がいいということになった。
パソコンを選び終えた頃にはちょっとした疲労感を覚えていたので、俺たちはモール内にあるカフェで休むことに。
そこで俺は、浅野に気になっていたことを訊いてみることにした。
「浅野は本当に俺たちの部に入っちゃってよかったのか?」
「もちろんです」
「前から気になっていたんだけど、なんで俺にかまってくる?
こう言ってはなんだけど、俺の境遇はニュースとかで知ってるんだろ?
俺と一緒にいることは、浅野にとってデメリットしかないと思うけど」
「乙女の秘密をそんな簡単に教えることはできないですよ?
強いて言えば、今は先輩に興味があるからです」
「悪いけど、人に興味を持たれるようなことなんかないと思う。
俺は友達もいないただのボッチだぞ?」
少し自虐が過ぎただろうか。三樹と浅野の瞳が少し揺れていた。
「そんな先輩だから、興味があるんです」
「よくわからないけど、変わった後輩だな」
「…………」
結局浅野には笑顔で流されてしまった。だけどただ流されてオンライン小説部に入ったわけではなく、自分の意志だったみたいなのでこれ以上の追求をすることは止めた。
たぶん今は話してもらえないような気がしたから。
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