第7話『格闘家、その後…』

 パリン!パリン!パリン!


 おまけにパリン!


コック「コラー!!新人!!何枚皿を割るつもりだ!!コラァ!!」


 ここは某有名レストラン。


 パーティ解散後、なかなか職が見つからず転々と日々を過ごす男がいた。


 パリンッ!!


コック「お前はクビだぁ〜!!」


 男の名前はマコト。元格闘家だ。


 鍛え抜かれたボディと天性の格闘センスで魔王討伐に貢献した熱い男である。が、闘うこと以外に関しては全く何もできない不器用な男だった。転職、クビをループすることこれで7回目。


マコト「はぁ〜、またクビかぁ」


 マコトは大きく息をついた。


マコト「平和ってこういうことなのか〜?俺にとっては平和じゃねぇぞ〜!!」


 そして、大空に向かって叫んだ。


 何もかも拳1つで解決してきたが今の世界線は違う。拳はただの暴力だ。勇者一行の中で唯一平和な世界に苦戦していた。


 強い風が吹く。


マコト「ウプッ」


 顔面に1枚のチラシが張り付いた。


マコト「クソッ、舐めやがって」


 マコトはチラシを手に取ると苛立ちで破こうとするが『募集』という文字が目に入りとっさに手を止めた。


マコト「募集…警備隊員募集か…」


 チラシに書かれている内容は町の警備隊員の募集だった。これなら自分の得意分野だと思ったマコトは募集をかけている町へと走り出した。



マコト「ここか…結構大きな町だな。ここでどうにかしないと…無職はダサすぎる」


 町に辿り着いたマコトは早速チラシ片手に情報収集を始めた。


 すると意外な答えが返ってくる。


町民「警備隊員?あ~やめときな。入った奴ら3日ももたず辞めてるぜ?」


マコト「え?そうなの?」


 普通ならこれから働こうとする人間が聞きたくない言葉だが今のマコトにとっては逆にチャンスな言葉だった。


町民「あんちゃんもやめとき…ん??」


 町民がセリフを発した時にはすでにマコトの姿は目の前になかった。


マコト「ここか…よし!!」


 面接場所に辿り着いたマコトは勢いよくその扉を開いた。


 ガチャン!!


マコト「たのもー!!!」


「なんだ?君も面接希望者かね?」


マコト「はい!」


男「じゃあまずこの簡単な筆記試験からやってくれ。これが大丈夫なら面接するから。まぁ試験と言っても簡単だから心配しないでくれ」


マコト「え?筆記試験?」


 マコトは焦った。この男は不器用だけでなく頭も相当悪い。本当に闘うこと以外何もできない男なのだ。


 席に着き鉛筆を手に取るもその手は走らない。一般常識といえどその問題はマコトにとっては難問だった。


 

 頭は真っ白、時間だけが進んでいく…



マコト「一般常識って何なんだよー!!」


 マコトは夕日に向かって叫んだ。


 そう、彼は筆記でつまずき面接すら到達できなかった。今回の募集で面接までいかなかった者は唯一マコトだけ。改めて闘うこと以外何も取り柄がないと証明したのだ。


 この町で新たな職に就くことを期待していた男は完全に気を落とし地面を見ながらひたすら歩いていく。


町民「おい!兄ちゃん!そっちは危ないぞ!行かないほうがいいぞ!」


 町民に声をかけられるもマコトの耳には届いていなかった。気付けば町の路地裏に入り行き止まりにブチ当たる。


マコト「なんだ?行き止まりか…ん?」


 ぞろぞろと危なそうな連中が現れる。


 いつの間にかマコトは囲まれていた。


男「なんだ〜?また新しい警備隊の奴が来たのか?懲りねぇ奴らだな」


男「ここは俺達の縄張りなんだよ!痛い目あいたくなかったら消えるんだな!まぁもう遅いけどな!」


 町の汚点。路地裏のワル共の存在。


 警備隊員がすぐ辞める理由がここに全て詰まっていたのだ。


 マコトはニヤリと笑みを見せた。


マコト「ちょうど俺もムシャクシャしてたところだったんだ。助かるよ」


ワル共「え?」



 2年後……


「マコトの旦那〜!」


マコト「旦那はやめろ!隊長と呼べ!」


「へへへ、すみません。隊長」


 路地裏突き当りの建物に書かれている看板の文字は『警備隊事務所』。


 マコトを入れて総勢17名。


 その内の16名が元路地裏のワル共。


 町の汚点を潰し問題を解決したことにより評価を受けたマコトは見事警備隊の隊長に抜擢され無事無職を回避していた。


隊員「隊長って何でそんな強いんです?元々何かやってたんですかい?」


マコト「あ、あぁ…昔ちょっと格闘経験があってな。そんなことより今日は町長の隣町までの護衛だからな。気合い入れろよ!」


隊員「もちろんわかってますぜ!」



???「いいか?町長が出てきたらすぐ攫えよ」


???「し、しかし警備隊の連中が黙っていないかと…」


???「警備隊ごときこの俺1人で片付けてやる。お前達は目的を遂行しろ」


???「ハッ!!」

???「ハッ!!」


 万全な警備態勢に怪しい者達が近づく…


 

 新たな物語が始まる…!?


 つづく。










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