第8話『僧侶、その後…』
ここはとある町、パープル。
別名『過疎化した町』。
かつては世界で1番活気が溢れていると言われていた町。目の前には広大な海。新鮮で豊富な食材が数多く取れることから漁港としての役割も担っていた。
しかし、災害『津波』で町は半壊。復興作業をするも災害癖をつけた海が毎年不定期に津波を起こすことにより町の人々の努力を無駄にし復興という気持ちを完全にへし折ったのだ。気持ちを折られた者達は安息な地を求め次々に町を出て行く結果となり気付けば町に残る8割以上が老人達になっていた。
問題はそれだけではない。
毎年変則的に起こる津波は大陸を少しずつ削っていき今では全盛期の約20%の土地しか残っていない状態だった。もはや次の津波でいつ町全体が飲み込まれてしまうかわからない危険な状態まで追い込まれていた。
婆「あんたも早くこの町から離れなさい」
「何言ってるのよ!私はこの町の町長よ!町長が町の人達を放っておくことなんてできないわよ!」
危険な状況にも関わらずまだこの町に残る元気な若者がいた。
自称パープル町長、マナミ。
勇者一行、元僧侶だ。
婆「ごめんなさいねぇ…私達はもう先がないからこの生まれ育った町を離れる気がなくてねぇ」
マナミ「全っ然気にしなくていいわ。私がこの町とあなた達をなんとしてでも守るわよ」
勇者一行、唯一の女性キャラ。性格はおしとやかではなく結構キツめ。気に入らないことがあれば勇者であろうがドロップキックをかますほどの女だ。天真爛漫で少しブッ飛んだ一面もあるが面倒見が良く、心優しい側面も持ち合わせている。
その側面と連動しているかはわからないが回復系の魔法に関しては勇者一行の中で1番の使い手と言われていた。
マナミ「それにしても参ったわね。次の津波をどう乗り切るかってとこね」
爺「さすがの元勇者一行の1人と言えど自然災害にゃかなわんじゃろぉ。悪いことは言わん。あんただけでもこの町を出るんじゃな」
マナミ「うっさいわね。今考えているんだからちょっと黙ってもらえるかしら?」
爺2「かっかっか!さすがじゃのぉ。肝が座っとるわい」
婆「昔からの言い伝えでねぇ…災害というのは自然ではなく起こしている者がおると言われておるんじゃよ」
爺「またその話か婆さんや。そんな話ただの被害妄想じゃよ。津波の被害が大き過ぎて皆精神が参ってしまっていただけじゃ」
そんな老人達の会話は聞き流しマナミは何かを考え黙り込む。
バンッ!!
マナミは思い切りテーブルに手をついた。
爺「急に大きな音を立てて…心臓が止まるじゃろぉがの」
マナミ「決めたわ!!」
マナミは何かを思いつく。いや、思いつくというよりすでに決定事項だった。
爺「?」
爺2「?」
婆「?」
マナミ「町の復興作業を復活させるわ!」
爺「な、なんじゃと!?」
爺2「正気か?」
婆「…!!」
老人達はマナミの発言に驚く。
入れ歯が飛び出しそうなほどに。
驚くのも無理はない。当時復興作業に携わり津波の脅威に心を折られた者達だったからだ。
爺2「津波をなめとんのかぁ!!」
普段穏やかな老人が大きな声をあげた。
その表情は津波の恐ろしさを物語る。
だが、マナミは1ミリも怯むことはなかった。当たり前だ。かつて無謀だと言われていた魔王を倒した勇者一行の一員なのだから。
マナミ「私を信じてちょうだい」
声をあげた老人は黙る。マナミの一言にはそれほどまでに説得力があった。これが世界を救った英雄の影響力なのか?
爺「じゃがどうする?復興といえどこの町はこの有り様じゃ。復興作業に取り組む以前の問題じゃと思うんじゃが」
パープルの現状は復興作業に取り組んでいた頃と比べ圧倒的に町の人手は足りない。そればかりか町にいるのは老人ばかり、復興どころの話ではなかった。
ドンッ!!
マナミ「大丈夫よ。お金ならあるわ」
マナミは財宝がパンパンに入った布袋をテーブルの上に叩きつける。
マナミ「これはまだほんの一部よ」
マナミは魔王討伐の褒美でもらった莫大な財宝を復興作業に注ぎ込むことを決めた。
マナミ「これから忙しくなるわよ。作業は私に任せてあなた達の知恵を貸してちょうだい!!」
爺「まさかこの歳になって復興作業の再開を目の当たりにするとはのぉ…」
老人は古びた手帳を取り出すとページをめくり説明を始めた。
爺「これはここ何十年の津波のデータじゃ。少しは役に立つかもしれん」
その手帳には津波が起きた日時や時間、津波の方角等が事細かに記載されていた。
爺2「おぬし、まだ諦めて…」
爺「これが最後の挑戦じゃ。町の者にはワシから説明しておく。この町を救ってくれ」
復興への気持ちの火はまだ完全に消え去っていたわけではなかった。マナミの存在と言葉でその気持ちの火は再過熱する。
マナミ「任せてちょうだい!」
魔王討伐を果たしたマナミの次の敵は自然災害。パープル住人と共に因縁の宿敵、津波との最後の戦いが始まる。
2年後……
爺「記録からみてこの年が要注意じゃ」
マナミ「ええ。その為の準備はしっかりしてきたわ」
マナミの莫大な投資により世界各地から職のスペシャリスト達が集められ津波対策が施された。津波を対処しながらの復興作業は困難を極めるも10%ほどの土地修復にも成功していた。
特に力を注いだのが堤防だ。この堤防こそが津波対策の要といって間違いない。
爺「しかしのぉ…」
それでもまだ老人の不安は拭えなかった。
ここでまた被害を受けるとこれまでの努力は水の泡。過去の恐怖が蘇る。復興を成功させるには被害の拡大を最小限に抑える必要があるからだ。
マナミ「対策は万全よ」
ガチャ。
「失礼します!」
突然扉が開き次々に非力そうな者達が入ってくる。
爺2「なんじゃこのひ弱そうな者達は?」
マナミ「彼らこそが津波対策の本当の要よ」
爺2「なんじゃと?」
新たな物語が始まる…!?
つづく。
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